12日の深夜に、中国・天津で大規模な爆発事故が起こった。この事故ではこれまで、死者55名、負傷者700名あまりと報道されているが、実態はこんなものよりもっと悪い可能性が高い。中国政府が報道規制を敷いているので、実際の犠牲者数はわからない。
事故にしては死者・負傷者数が多いとはいえ、人口10億以上の大国である中国経済全体を揺るがすほどのものではないと考えるかもしれない。しかしこの事故は、単なる数字以上のインパクトがある。
ここ1~2年になって中国経済は行き詰まり感が急激に高まっている。これまで20年間高成長を続けてきたが、それが急減速している。リーマンショック後の不況に対処するために、中国は地方政府・企業が大規模な不動産投資を行い、「ゴーストタウン」が中国各地に建てられた。しかし不動産バブルはもう弾けていて、これ以上の無謀な投資ができない状態になっている。
厳しい状態の中立て続けに金融緩和を行ったことで去年後半から上海株式市場が急騰。一時株バブルになったが、今年6月後半から上海バブルも弾けた。これがまた中国経済全体を追いこんでいるため、今週になって3回も続けて人民元切り下げを行った。
そして今回の天津爆発事故だ。天津市は人口700万人を抱える大都市なので、普通の事故1つではビクともしない。しかし今回の事故はインパクトの大きさが違いすぎる。事故現場には有毒物質を保管していた倉庫が多くあり、その流出による2次災害も懸念されている。
この事故によって、天津市のイメージ低下は計り知れない。外資系企業や外国人ビジネスマンの流出は必至であり、今後の長期的衰退にもつながる。中国有数の港湾都市・天津がこのような状態になると、中国経済全体へのダメージにもなっていくだろう。