今年3月からECBが量的緩和をしており、開始以来すでに5ヶ月近くが経った。ECBは量的緩和の「成果」を強調していることもあるが、数字を見ると効果など大して出ていない。
量的緩和を行っている目的は、デフレ対策と景気対策だった。ではインフレ率はどうなっているか見ると、今日発表されたユーロ圏の7月消費者物価指数は、前年同月比で0.2%上昇だった。緩和開始前の3月は-0.1%、1月は-0.6%だったので、それに比べれば回復している。しかし、ほぼゼロ水準では満足できる値ではない。
また生鮮食料品などを除いたコアインフレ率は、7月が事前予想の0.8%上昇に対して発表は1.0%上昇とまずまずだった。ただECBの場合、コアよりも通常のインフレ率を重視する傾向がある。
去年後半から世界的にデフレ傾向が強まっており、その理由として「原油価格の下落」が挙げられることが多い。ただ原油価格は今年5~6月に一旦上昇して60ドル付近になったので、インフレ率もそれにつられて多少は上がってもおかしくなかった。
ところが7月になって原油がまた下がっていて、そのためインフレ率にまた下押し圧力がかかる。ユーロ圏のコアインフレ率は1%を最後に超えたのが2013年9月で、もう2年近く1%未満、またはマイナスが続いている。
原油価格が上がる見通しがない以上、今年後半になってもインフレ率が大きく上昇するとは考えにくい。そしてECBは量的緩和を、来年の9月まで1年半続けると発表していた。ところが実際には、来年9月になってもインフレ率や経済は好転している可能性が低い。そうなると、ECBは量的緩和を延長、あるいはしばらく停止してから第2弾をやるしかなくなる。