日本時間19日、フェイスブック(NASDAQ:FB)は仮想通貨「リブラ(Libra)」を発表した。
ホワイトペーパーでは以下のように述べられている。
「多くの人びとに力を与える、シンプルで国境のないグローバルな通貨と金融インフラになる」
以下で詳細を確認していきたい。
1. リブラとは結局何なのか?
簡単に言うとリブラはビットコインと同様、通貨とブロックチェーンの名称である。リブラのブロックチェーンはコインの送金を全て記録し、安価な送金手数料により個人間決済を促進する。
リブラのミッションは多岐に渡る。国際送金の低価格化から、銀行口座を持たない個人のデジタルエコノミーへの参加などありとあらゆる事を含む。
ただしリブラの匿名性は低い。参加者の身元はブロックチェーン上に記録されないものの、セットアップには政府が発行するIDが必須だ。よって管理元のリブラ・アソシエーションは必要に応じてユーザーを追跡できる。
2. フェイスブックの狙いは?
フェイスブックは同日、リブラ向けのデジタルウォレット「カリブラ」も発表した。カリブラはFacebook、Messenger、WhatsApp等のアプリ上で利用可能だ。ウォレットを同時に提供することで、リブラへのアクセシビリティーを高める戦略だ。
またこの事業によって新たな金融サービスの展開することや、より多くのユーザー情報を入手することも可能になる。データ収集は、フェイスブックにとって核となるものだ。
ただし同社は「プライバシー保護ルールを明確にする。何を目的にどのようなデータを収集、使用、共有するのかを公開する」と宣言している。また、第三者機関のウォレットも公式に使用可能で、リブラへのアクセスを独占しないとしている。
3. 第二のビットコインとなる?
リブラもビットコインもブロックチェーンのセキュリティを確保するための仮想通貨の原則に則っている。
ただしビットコインは分権的で検閲に強く、許可も不要だ。一方リブラは初期段階においてはリブラ・アソシエーションにより管理される。
4. リブラ・アソシエーションとは?
リブラ・アソシエーションは今年2月にスイス・ジュネーブで設立された非営利団体である。またリブラ・ブロックチェーンは同メンバーのみが閲覧可能なコンソーシアムチェーンである。
同コンソーシアムのメンバー(上図)にはマスターカード(NYSE:MA)やビザ(NYSE:V)、 ウーバー(NYSE:UBER)やリフト(NASDAQ:LYFT)、コインベース等、米大手企業が名を連ねている。
リブラに関する決定はこの組織の投票に委ねられ、各メンバーが1票ずつ投票権限を所持している。
よってフェイスブックがプロジェクトの顔となっているものの、同社の一存でリブラをコントロール出来るわけではない。
5. リブラは従来型金融サービスの脅威となる?
リブラの登場によって銀行、ウェスタン・ユニオン(NYSE:WU)など送金サービスに業者が脅かされうるだろう。ブロックチェーン技術は、信頼性は高いがコストのかかる従来の仲介業者を代替しうるからだ。リブラは XRPでさえ脅かす存在になる可能性がある。
リブラは信頼性を保ちつつコストを削減して市場シェア獲得を目指す。
6. リブラはトレードできる?
ホワイトペーパーによると、現地通貨とリブラをトレードできる取引所が2020年に設立予定。
またリブラで重要なポイントは「安定性と信頼性のある法定通貨での銀行預金や短期国債など、価格変動率の低い資産の集合体により裏付け」られているステーブルコインだ。
7. リブラは仮想通貨全体にどう影響する?
リブラは史上最大級の安全性を持ち合わせる仮想通貨だ。ビットコインの掲げるイデオロギーと自由からは程遠いが、数十億人の潜在顧客をブロックチェーン取引に引き込む可能性を持っている。
これはビットコインにも恩恵をもたらすだろうが、見通しは不透明だ。
リブラは現状、仮想通貨というよりもブロックチェーンを基にしたペイパル(NASDAQ:PYPL)の代替手段のようなものだ。
8. リブラ・インベストメント・トークンとは?
フェイスブックはリブラそれ自体に加え、リブラ・インベストメント・トークンと呼ばれるセキュリティトークンを発行する予定だ。
同トークンで調達される資金は、運営やインセンティブなどに充当される見通し。なおメンバーは同トークンに1000万ドル投資する必要がある。
トークンメンバーには多額のインセンティブが支払われる見通し。報道によると、このトークンへの参加は適格投資家のみに認められる予定。ただし発行日などの情報はまだ明らかになっていない。
総括
技術・金融的観点から、リブラは非常に面白いイノベーションであると言える。
フェイスブックはリブラを新たなグローバル通貨に育て、オンライン決済システムを統合することを目指している。ただし政府機関に反発する意図はない。
それでもなお、政府機関権力を脅かしている印象は拭えない。リブラはまだ発表されたばかりで先行きは不透明だ。
一方で、米国政府はリブラに対し待ったをかけている。米下院金融サービス委員会は日本時間19日、「議会と規制当局が本件を精査し行動を起こせるようになる」までリブラの開発を中断するようフェイスブックに要請している。
仮想通貨の実需拡大において、今後のリブラの進展に目が離せない。