6月25日のOPEC総会まで2週間を切り、ロシアはサウジアラビアが必要性を主張する協調減産に対して支持を表明していない。一方で、サウジアラビアは今年後半で原油価格を支えるために減産が必要だと主張している。
対メキシコ関税は見送られたものの、原油価格は上昇は限定的
トランプ米大統領は対メキシコ関税の見送りを決定したものの、ロシアが協調減産に対して支持を表明しない中で原油価格は値を下げて取引された。
10日のWTI原油は1.3%安、ブレント原油は1.6%安となった。それに対して、ニューヨーク株式市場では約1%高となっていた。
OPECはロシアの動向を見守る
サウジのファリハ・エネルギー相は「(減産延長のために)現在必要な国はロシアだけである」と述べ、ロシアに対する原油市場の懸念を念押した。
ファリハ氏はイタルタス通信の取材に対して「私はロシアの動きを見守る」と述べた。また、「ロシアが下半期の減産で必要な量についてはロシア国内で明らかに議論がある」と発言した。
ロシア国営の原油企業であるロスネフチ(OTC:OJSCY)のイーゴリ・セーチンCEOはロシア政府に対してOPECとの協調減産を行わないように説得しており、原油市場における米国に対するロシアのシェアを失うことになると警鐘を鳴らしている。同氏の主張には先月の米国における産油量が、日量1240万バレルに達したことが背景にある。一方、米国の原油輸出量は日量340万バレルに達しており、以前の最高である日量360万バレルに近づいている。
OPECプラスは1月から最低でも月量120万バレルの減産を行ってきた。これを受け、1月から4月の原油価格は40%以上の上昇を見せた。しかし現在、対メキシコ関税への懸念に始まり、米原油生産量、原油在庫量、米中貿易摩擦などの要因から、下落に転じている。また、OPECにおいてロシアが非常に重要な国であるため、減産への合意が得られていないという要因も大きいだろう。
ロシアの動向は原油価格を下落に導く
ロシアは原油価格を下支えするどころか下落を招いているといえる。
10日、ロシアのノバク・エネルギー相は、協調減産が行われない場合、原油価格が1バレルあたり30ドルまで下落する可能性を示唆した。
この主張が正しかろうが、OPECや非加盟産油国からそのようなことが発言されることは稀なことだろう。
しかし、ノバク氏のロジックは米国のドライビングシーズンからの需要を前にして妥当性があるかは疑問が残る。
ノバク氏は「7月に整合性のとれた決定をするために原油市場を監視する必要がある」と述べている。
トランプ大統領に対して、ロシアとOPECはどのように応じるのか
ノバク氏が「7月」と述べたことは、ヘッジファンドなどの原油トレーダーにとって危険信号となっている。ロシアはOPECプラスとの協議を狡猾に長引かせてきた一方、サウジは6月にOPEC総会を開催することに固執している。OPECの主要メンバーであるイランも7月の開催に反対している。
ロシアとOPECは、夏のドライブシーズンを前に5月の原油市場における2桁下落を埋め合わせにどう動くのだろうか?
また、原油高騰を阻止するトランプ大統領の発言も焦点になるだろう。