「経済最優先」を掲げた安倍内閣の本質が、「政治最優先」であることを表した2日間だった。
27日に閉幕した伊勢志摩サミットでは、経済政策において実質的に何の合意も得られなかったうえに、一部で失笑を買うなど安倍総理は経済音痴ぶりを如何なく発揮した。
しかし、政治面では、17分にも及ぶオバマ大統領による格調高い演説という予定外の強力なアシストもあり、安倍総理は国内向け政治的アピールの場として最大限に有効利用して見せた。
大統領就任直後の2009年4月の「プラハ演説」で同年のノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領を任期最終年に被爆地広島を訪問させるという政治的演出はなかなか考えたもの。
思うような政治的成果をあげられなかっただろうオバマ大統領にとって「記憶に残る大統領」になる機会を得られる今回の提案は貴重なものであり、それが格調高い「広島演説」を生んだ原動力になったともいえそうだ。
任期切れが迫るオバマ大統領と、「経済最優先」を掲げながら成果をあげられないにも拘らず長期政権を目論む安倍総理の思惑が一致したことが格調高い「広島演説」を生んだのだとしたら、まさに瓢箪から駒。
オバマ大統領の格調高い「広島演説」によって、経済的成果がなかった伊勢志摩サミットの記憶を消し去ることに成功した安倍総理は、「消費増税先送り」を表明する意向を固めたようだ。
アベノミクスの成否に関らず長期政権を目論む安倍総理が、早晩「消費増税先送り」を表明するであろうことは、3月12日に開催された「投資戦略フェアEXPO2016」で行ったセミナーでも指摘して来た通り想定内のこと。
これまで「リーマン・ショック級、大震災級の事態にならない限り予定通り引き上げていく」という発言を繰り返して来た安倍総理にとって重要なことは、「消費増税先送り」がアベノミクスの失敗によるものだという批判を封じ込めること。
そのために必要だったのは、世界経済が「リーマン・ショック級の危機」に陥りかねない状況にあるというG7の共通認識である。
そのため、安倍総理は「世界の商品価格」「新興国・途上国の経済指標の伸び率」「新興国への資金流入」「各国の成長率予測の推移」という4つのデータを「26日の主要国首脳会議で唐突に示した」(27日付日経電子版)と報じられている。
「世界の商品価格」の2014年後の下落率がリーマン・ショック後と同じ約55%に達したことや、2015年に入り「新興国への資金流入」がリーマン・ショック以来の流出になったことを示したようだが、「経済音痴安倍」の面目躍如といった内容。
それは、原因と結果を混同しているところ。「世界の商品価格の下落」も「新興国からの資金流出」も、リーマン・ショックの「結果」起きたもので、リーマン・ショックを引き起した「原因」ではない。
「景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」
「先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される」
伊勢志摩サミットが開幕する3日前の「月例経済報告」でこのように楽観的な見通しを示していた安倍総理が、26日の主要国首脳会議で唐突に4つのデータを示し「政策対応を誤ると通常の景気循環を超えて危機に陥るリスクがある」と警告を発する姿を目の当たりにすれば、G7首脳達が驚くのは当然のこと。
伊勢志摩サミットが、経済分野で実質的な成果を何一つあげられず、ドイツのウェルト紙に「誰も痛みを感じない合意」(28日付日本経済新聞)と評された一つの要因は、安倍総理がアベノミクスの失敗の原因を、世界経済が「リーマン・ショック級の危機」に陥りかねない状況に転嫁しようとしたところにあったといえる。
サミット開催中に発表された日本の消費者物価(コアCPI)は2か月連続で前年同月比マイナスとなったが、米国の4月コアCPIは前年比2.1%上昇と6カ月連続で2%を上回っており、EUの「エネルギーと食品、酒・たばこを除く指数」も前年同月比で0.8%上昇している。
単純に言えば、「リーマン・ショック級の危機」に陥りそうなのは日本だけであり、G7各国の共通認識にするのには無理がある。「白いものも黒だ」という詭弁は国内では通用しても、国際社会で通用する訳はない。
G7各国が議長国の顔を立てるという大人の対応をしたお陰で「誰も痛みを感じない合意」に至ることが出来、G7内の亀裂を露呈することはなかったが、「誰も痛みを感じない合意」しか得られなかった大きな要因は、安倍総理による「リーマン・ショック級の危機に陥りかねない状況にある」という「唐突な」主張だったことは想像に難くない。
世界経済の問題を議論することを目的としたサミットという場で、「世界経済」よりも「国内での己の政治的立場」を重視する姿勢を見せた議長国日本の総理大臣。
日本で成果を出せていない政策を、議長国という立場を利用して「G7版三本の矢」として押付けたが、それは「誰も痛みを感じない合意」であったからで、世界の目には「近隣窮乏政策」に映ったに違いない。
オバマ大統領による格調高い「広島宣言」によって一連の外交行事が成功裏に終わったような印象が残ったが、経済的には「誰も痛みを感じない合意」しか得られていないことを忘れてはならない。
27日に閉幕した伊勢志摩サミットでは、経済政策において実質的に何の合意も得られなかったうえに、一部で失笑を買うなど安倍総理は経済音痴ぶりを如何なく発揮した。
しかし、政治面では、17分にも及ぶオバマ大統領による格調高い演説という予定外の強力なアシストもあり、安倍総理は国内向け政治的アピールの場として最大限に有効利用して見せた。
大統領就任直後の2009年4月の「プラハ演説」で同年のノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領を任期最終年に被爆地広島を訪問させるという政治的演出はなかなか考えたもの。
思うような政治的成果をあげられなかっただろうオバマ大統領にとって「記憶に残る大統領」になる機会を得られる今回の提案は貴重なものであり、それが格調高い「広島演説」を生んだ原動力になったともいえそうだ。
任期切れが迫るオバマ大統領と、「経済最優先」を掲げながら成果をあげられないにも拘らず長期政権を目論む安倍総理の思惑が一致したことが格調高い「広島演説」を生んだのだとしたら、まさに瓢箪から駒。
オバマ大統領の格調高い「広島演説」によって、経済的成果がなかった伊勢志摩サミットの記憶を消し去ることに成功した安倍総理は、「消費増税先送り」を表明する意向を固めたようだ。
アベノミクスの成否に関らず長期政権を目論む安倍総理が、早晩「消費増税先送り」を表明するであろうことは、3月12日に開催された「投資戦略フェアEXPO2016」で行ったセミナーでも指摘して来た通り想定内のこと。
これまで「リーマン・ショック級、大震災級の事態にならない限り予定通り引き上げていく」という発言を繰り返して来た安倍総理にとって重要なことは、「消費増税先送り」がアベノミクスの失敗によるものだという批判を封じ込めること。
そのために必要だったのは、世界経済が「リーマン・ショック級の危機」に陥りかねない状況にあるというG7の共通認識である。
そのため、安倍総理は「世界の商品価格」「新興国・途上国の経済指標の伸び率」「新興国への資金流入」「各国の成長率予測の推移」という4つのデータを「26日の主要国首脳会議で唐突に示した」(27日付日経電子版)と報じられている。
「世界の商品価格」の2014年後の下落率がリーマン・ショック後と同じ約55%に達したことや、2015年に入り「新興国への資金流入」がリーマン・ショック以来の流出になったことを示したようだが、「経済音痴安倍」の面目躍如といった内容。
それは、原因と結果を混同しているところ。「世界の商品価格の下落」も「新興国からの資金流出」も、リーマン・ショックの「結果」起きたもので、リーマン・ショックを引き起した「原因」ではない。
「景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」
「先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される」
伊勢志摩サミットが開幕する3日前の「月例経済報告」でこのように楽観的な見通しを示していた安倍総理が、26日の主要国首脳会議で唐突に4つのデータを示し「政策対応を誤ると通常の景気循環を超えて危機に陥るリスクがある」と警告を発する姿を目の当たりにすれば、G7首脳達が驚くのは当然のこと。
伊勢志摩サミットが、経済分野で実質的な成果を何一つあげられず、ドイツのウェルト紙に「誰も痛みを感じない合意」(28日付日本経済新聞)と評された一つの要因は、安倍総理がアベノミクスの失敗の原因を、世界経済が「リーマン・ショック級の危機」に陥りかねない状況に転嫁しようとしたところにあったといえる。
サミット開催中に発表された日本の消費者物価(コアCPI)は2か月連続で前年同月比マイナスとなったが、米国の4月コアCPIは前年比2.1%上昇と6カ月連続で2%を上回っており、EUの「エネルギーと食品、酒・たばこを除く指数」も前年同月比で0.8%上昇している。
単純に言えば、「リーマン・ショック級の危機」に陥りそうなのは日本だけであり、G7各国の共通認識にするのには無理がある。「白いものも黒だ」という詭弁は国内では通用しても、国際社会で通用する訳はない。
G7各国が議長国の顔を立てるという大人の対応をしたお陰で「誰も痛みを感じない合意」に至ることが出来、G7内の亀裂を露呈することはなかったが、「誰も痛みを感じない合意」しか得られなかった大きな要因は、安倍総理による「リーマン・ショック級の危機に陥りかねない状況にある」という「唐突な」主張だったことは想像に難くない。
世界経済の問題を議論することを目的としたサミットという場で、「世界経済」よりも「国内での己の政治的立場」を重視する姿勢を見せた議長国日本の総理大臣。
日本で成果を出せていない政策を、議長国という立場を利用して「G7版三本の矢」として押付けたが、それは「誰も痛みを感じない合意」であったからで、世界の目には「近隣窮乏政策」に映ったに違いない。
オバマ大統領による格調高い「広島宣言」によって一連の外交行事が成功裏に終わったような印象が残ったが、経済的には「誰も痛みを感じない合意」しか得られていないことを忘れてはならない。