「中国人民銀行(中央銀行)は11日、人民元売買の基準となる対ドルの為替レートである『基準値』の算出方法を変更すると発表した。これに伴い人民銀は11日の基準値を前日から約2%切り下げた。市場では人民元が一時約3年ぶりの安値水準に急落した。事実上の人民元切り下げにより、中国は低迷する輸出競争力の回復を目指す」(11日付日経電子版 「人民元2%切り下げ」)
ドル高の副産物といえるのかもしれません。中国人民銀行は11日、人民元を2%切り下げると発表しました。
この1年間、米ドルはFRBのテーパリング、利上げ観測を背景にドル指数ベースで約17%上昇して来ました。人民元レートは基本世界で最も強い通貨米ドルに連動するよう為替介入によってコントロールされて来ましたので、この1年間で対円では約16.5%、対ユーロでは約15.6%上昇する結果となりました。
こうした人民元レートの動きを反映して、中国の1~7月の貿易額は対米国は2.8%増であったのに対して、対日本では11.0%減、対EUでも7.5%減となり、中国経済の足を引っ張る結果になりました。
今回人民銀行が人民元の切り下げに踏み切ったのは、こうした国内要因があったことは間違いないところです。
しかし、中国の国内要因として人民元切り下げはあり得る政策的選択肢だと言えますが、世界第2位の経済大国であり、世界第2位の経常黒字国である中国(2014年、第1位はドイツ)が国内要因だけで元切り下げに踏み切るというのは、国際秩序を乱す行為だと見做されても仕方がありません。
詳細は「近藤駿介の実践資産運用サロン」に譲りますが、中国が国内要因を優先する身勝手な政策を打ち出したことで、国際金融市場は不安定な状況に陥る可能性が出て来ていることには注意が必要です。
米国の2015年1-6月期の貿易赤字は前年同期比0.6%の拡大でしたが、中国に対する赤字は前年同期比で9.8%拡大しており、6月単月の貿易赤字438億ドルのうち対中の貿易赤字は315億ドルと72%を占めています。
米財務省は4月に公表した半期為替報告書で、中国の為替政策は米国をはじめとする貿易相手国への打撃になると批判したうえで、中国は過去10年にわたり人民元を切り上げてきたが、人民元は依然として「著しく過小評価」されていると指摘していました。
こうした状況下で人民銀行が人民元の切り下げに踏み切ったということは、世界最大の経済大国と、世界第2位の経済大国の間のすきま風が強くなることを意味することです。これまで国際経済は、世界最大の経済大国米国と、世界第2位の経済大国であった西ドイツ、そして日本が協調してその秩序を保ってきました。
しかし、政治体制の異なる中国が世界第2位の経済大国になったことで、世界最大の経済大国と第2位の経済大国が強調して国際秩序を保つということは期待できなくなりました。
同時に、中国が目指していた「人民元の国際化」と「人民元経済圏」構想も、今回の国内要因に基づいた人民元切り上げによって自ら摘み取ってしまう結果になりました。
僅か2%の通貨切り下げですが、その衝撃は「強い人民元」「人民元の国際化」「人民元経済圏」といった世界の金融市場の前提を崩壊させかねない大きなものになるかもしれません。
ドル高の副産物といえるのかもしれません。中国人民銀行は11日、人民元を2%切り下げると発表しました。
この1年間、米ドルはFRBのテーパリング、利上げ観測を背景にドル指数ベースで約17%上昇して来ました。人民元レートは基本世界で最も強い通貨米ドルに連動するよう為替介入によってコントロールされて来ましたので、この1年間で対円では約16.5%、対ユーロでは約15.6%上昇する結果となりました。
こうした人民元レートの動きを反映して、中国の1~7月の貿易額は対米国は2.8%増であったのに対して、対日本では11.0%減、対EUでも7.5%減となり、中国経済の足を引っ張る結果になりました。
今回人民銀行が人民元の切り下げに踏み切ったのは、こうした国内要因があったことは間違いないところです。
しかし、中国の国内要因として人民元切り下げはあり得る政策的選択肢だと言えますが、世界第2位の経済大国であり、世界第2位の経常黒字国である中国(2014年、第1位はドイツ)が国内要因だけで元切り下げに踏み切るというのは、国際秩序を乱す行為だと見做されても仕方がありません。
詳細は「近藤駿介の実践資産運用サロン」に譲りますが、中国が国内要因を優先する身勝手な政策を打ち出したことで、国際金融市場は不安定な状況に陥る可能性が出て来ていることには注意が必要です。
米国の2015年1-6月期の貿易赤字は前年同期比0.6%の拡大でしたが、中国に対する赤字は前年同期比で9.8%拡大しており、6月単月の貿易赤字438億ドルのうち対中の貿易赤字は315億ドルと72%を占めています。
米財務省は4月に公表した半期為替報告書で、中国の為替政策は米国をはじめとする貿易相手国への打撃になると批判したうえで、中国は過去10年にわたり人民元を切り上げてきたが、人民元は依然として「著しく過小評価」されていると指摘していました。
こうした状況下で人民銀行が人民元の切り下げに踏み切ったということは、世界最大の経済大国と、世界第2位の経済大国の間のすきま風が強くなることを意味することです。これまで国際経済は、世界最大の経済大国米国と、世界第2位の経済大国であった西ドイツ、そして日本が協調してその秩序を保ってきました。
しかし、政治体制の異なる中国が世界第2位の経済大国になったことで、世界最大の経済大国と第2位の経済大国が強調して国際秩序を保つということは期待できなくなりました。
同時に、中国が目指していた「人民元の国際化」と「人民元経済圏」構想も、今回の国内要因に基づいた人民元切り上げによって自ら摘み取ってしまう結果になりました。
僅か2%の通貨切り下げですが、その衝撃は「強い人民元」「人民元の国際化」「人民元経済圏」といった世界の金融市場の前提を崩壊させかねない大きなものになるかもしれません。