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わが国の経済・物価情勢と金融政策 講演者:片岡 剛士

執筆: 日本銀行2020年09月03日 16:43
 

1.はじめに

日本銀行の片岡でございます。この度は、大変厳しい情勢の中で、沖縄県の行政、財界、金融界を代表する皆様とオンライン形式で懇談させていただく貴重な機会を賜り、誠にありがとうございます。また、皆様には、日頃から日本銀行那覇支店の業務運営に対し、ご支援、ご協力を頂いておりますことを、この場をお借りして改めて厚く御礼申し上げます。

本日は、わが国の経済・物価情勢と日本銀行の金融政策運営につきまして、私の考えを交えつつお話しします。その後、皆様から、沖縄県経済の動向や日本銀行の業務・金融政策に対する率直なご意見をお聞かせいただければと存じます。

本来、沖縄県を訪問し、皆様と対面で懇談させていただくことを考えておりましたが、最近の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今回、やむなくオンライン形式により開催させていただくこととなりました。訪問が叶わず大変残念ですが、皆様との懇談を通じて、沖縄県の現状や課題に対する理解を深めるとともに、頂いたご意見を日本銀行の業務や政策判断に活かしてまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

2.経済・物価情勢

(1)海外経済の動向

初めに、海外経済の動向についてお話ししたいと存じます。本年初の時点では、世界経済の成長ペースは徐々に回復していくことが期待されていましたが、昨年末に中国で初めて確認された新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大したことにより、経済動向は一変しました。図表1で新型コロナウイルスの新規感染者数の推移をみますと、感染者数は、1月から2月にかけて中国で増加した後、3月から4月にかけて欧州、そして米国で爆発的な広がりをみせました。さらに、南米や南アジアなどの新興国・発展途上国に波及しており、約100年前のスペイン風邪以来とも言われるパンデミックとなっています。現在も、いまだに感染拡大に歯止めがかかることを展望するのが難しい情勢です。

感染が広がった多くの国・地域において厳格な公衆衛生上の措置がとられたことなどを受けて、経済活動は世界的に大きく制約され、経済指標は各地で深刻な落ち込みを示しました。米欧の4~6月期実質GDPの前期からの成長率は年率で米国がマイナス30%程度、EUがマイナス40%程度と、記録的な下落となりました。

世界経済の先行きについては、底は打ったものの、回復の足取りは当面緩やかなものになると見込まれます。図表2には、IMFによる世界経済見通しを示しています。左にある標準シナリオでは、各地域の実質GDPは、感染拡大の時期や深刻度、公衆衛生上の措置が経済活動に与える影響の強弱に応じて、回復時期に差が生じる予想となっています。早期に感染症の拡大に歯止めがかかった中国では、実質GDPは本年1~3月期に大きく落ち込んだものの、4~6月期には、見通し通り感染症拡大前の水準に復しています。一方で先進国では、実質GDPは、感染拡大により4~6月期にかけて中国を超える大幅な落ち込みとなった後、回復経路をたどるものの、感染拡大前の水準に戻るのは再来年の2022年以降と予想されています。そして中国を除く新興国・発展途上国の実質GDPは、先進国より落ち込みが小さく回復力も強いものの、それでも中国と比較すると感染拡大前の水準に戻る時期が1年ほど遅れる見通しとなっています。

こうした標準シナリオの前提として、今年後半にも感染症の影響が和らいでいくことが想定されています。しかし、既にいくつかの国で感染が再拡大したり、その兆候が現れたりしており、前提が満たされない可能性も相応にあります。図表2の右図は、IMFが示した、今年下期に想定より迅速な回復が始まるとする上振れシナリオと、来年に大規模な感染第2波が生じるとする下振れシナリオのもとでの、標準シナリオからの乖離率をそれぞれ示しています。上振れシナリオでは、世界実質GDPが標準シナリオ対比3%程度上振れますが、下振れシナリオでは5%程度下振れる見通しとなっています。特に下振れシナリオが顕現化した場合には、世界経済の落ち込みが深刻化・長期化することになるため、企業・家計のマインドや国際資本市場・金融システムに及ぶ影響と合わせ、より一層の注意が必要となります。

(2)わが国の経済情勢

続いて日本経済についてみていきます。まず、実質GDP成長率から日本経済の動向を確認します。図表3は、実質GDP成長率を折れ線で、需要項目の寄与度を棒グラフで示しています。2020年4~6月期の成長率は、前期比マイナス7.8%、年率ではマイナス27.8%となりました。マイナス成長は2019年10~12月期以降3四半期連続で、4~6月期のマイナス幅はリーマン・ショック直後の2009年1~3月期を大きく上回るものでした。感染症の世界的な流行を受けた内外の経済活動の停滞を映じて、民間消費を中心とした内需と輸出の双方が大きく減少しました。

日本経済の先行きですが、7月に公表した日本銀行の展望レポートでは、政策委員の実質GDP成長率見通しの中央値として、2020年度-4.7%、2021年度+3.3%、2022年度+1.5%を見込んでいます(図表4)。経済は2020年後半から徐々に改善する見通しですが、世界的に感染症の影響が残る中で、そのペースは、緩やかなものにとどまると考えられます。その後、グローバルに感染症の影響が収束すれば、海外経済が着実な成長経路に復していくもとで、日本経済はさらに改善を続けると予想されます。

ただ、展望レポートで示していますように、こうした見通しに対するリスク・バランスは下振れ方向に大きく、私自身も、先行き、政策委員の見通しの中央値を下回る成長率を予想しています。この点に関して、消費、設備投資、輸出といったGDPの主要構成項目について確認したいと存じます。

まず、図表5で消費について確認します。実質消費は、昨年10月の消費税率引き上げで大きく落ち込んだ後、本年初にかけて耐久財消費やサービス消費を中心に緩やかに持ち直す動きが進んでいました。しかし、感染症が拡大した3月以降、一部の財消費だけでなく、観光・飲食・移動といったサービスに対する消費も顕著に減少しました。これには、緊急事態宣言に伴い外出や営業の自粛が要請されたことの直接的な影響に加え、感染症が拡大する中で消費者が人との接触や密な環境が前提となるような消費に慎重になった、というマインド面の影響も大きかったと考えられます。先行きについても、消費全体に占めるサービス消費の割合が5割を超える中、感染症の収束が依然として展望できないことを踏まえると、当面の間、消費動向は厳しいと予想せざるをえません。また、耐久財消費と異なり、一旦取りやめたサービス消費のうち、感染症が落ち着いた後に挽回して行われるものは一部にとどまると考えられることも、消費回復の重石となりえます。

ここで、民間消費を支える雇用環境について確認します。図表6左図にあるように、景気ウォッチャー調査における雇用関連の現状判断DIは今年に入り大幅に悪化し、ほぼ同じタイミングで実質総雇用者所得も減少しました。右図をみますと、7月の完全失業率は2.9%と、悪化に一旦歯止めがかかったものの、勤め先等の都合による非自発的失業者は38万人に上り、前年から19万人増加しました。図表7左図で就業者数をみても、宿泊・飲食サービス業、卸売・小売業、生活関連サービス・娯楽業などで減少が目立っており、サービス消費減少の影響を受けたものと推測されます。さらに右図で未活用労働指標をみますと1、2020年4~6月期には、失業者だけでなく、より長時間働くことを希望する追加就労希望就業者や、統計では非労働力とされているものの就業を希望する潜在労働力人口のいずれも増加しました。このように雇用環境は感染症拡大の影響を受けて悪化しており、消費回復の重石になるとみられます。

次に、企業の設備投資ですが、図表8にあるとおり、設備投資額は、増勢が続いた状況から足もと小幅ながら減少方向へと転化しています。これには、消費税率引き上げ後の反動減に加え、感染症の拡大をきっかけとした消費の減少等を背景に、設備の過不足感が製造業・非製造業ともに急速に過剰方向へ変化していることがあります。図表9で6月短観の設備投資計画をみますと、製造業は前年比プラスを維持しているものの、近年の修正パターンと比べると勢いが弱いことがわかります。また、非製造業は既にマイナスであり、近年の修正パターンと明確に異なる動きとなっています。感染症の影響が長期化し、企業の中長期的な成長期待が低下することになれば、多くの産業では将来需要の下方修正を余儀なくされ、設備投資の調整が進む可能性があります。

さらに輸出についても、図表10のとおり、昨年から低調な動きを続けていましたが、感染症の影響が深刻化した4~6月には、地域別では欧米向け、財別では自動車関連、情報関連、資本財を中心に減少幅が大きく拡大しました。多くの国で公衆衛生上の措置が一頃と比べると緩和されていることから、外需の悪化は底を打ったとみられますが、各国が感染症の影響から脱するのに相応の時間を要することを念頭におくと、しばらく外需の回復力は弱く、持ち直しに多くを期待できない状態が続くとみています。

  • 1未活用労働指標の動向を含む、わが国労働市場の変化については、次を参照。片岡剛士(2019)「わが国の経済・物価情勢と金融政策-函館市金融経済懇談会における挨拶要旨-」、https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko190904b.htm

(3)物価の現状と先行き

続いて物価情勢をみてまいります。本年7月の消費者物価指数の実績は、生鮮食品を除く総合で前年比0.0%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合で前年比+0.4%となりました。図表11左図に示した消費税率引き上げや幼児教育・保育無償化の影響を除く消費者物価指数の前年比は、それぞれ-0.3%、+0.2%となりました。消費税率の引き上げや、感染症の拡大を背景とした需要の減少とエネルギー価格の低下を受けて、インフレ率が一頃より低い状況が続いています。右図にある消費者物価の基調的な変動を示す指標も弱めの動きが続いています。

物価の先行きですが、本年7月の展望レポートにおける政策委員の見通しの中央値では、前掲図表4のとおり2020年度-0.5%、2021年度+0.3%、2022年度+0.7%と、徐々に上昇率が高まっていく予想となっています。もっとも、図表12で、物価の基調的な変動に影響するマクロ的な需給ギャップと中長期的な予想インフレ率をみますと、左図の需給ギャップは、2018年10~12月期をピークに需要超過幅が縮小し、2020年1~3月期には需給均衡を示すゼロ近傍となっています。また、予想インフレ率は、右図のとおり、昨年末以降やや低下しています。感染症の収束が見通せない中で、経済の回復ペースが緩慢である可能性を念頭におくと、需給ギャップや予想インフレ率が改善し、物価が勢いをもって2%の「物価安定の目標」に近づいていく状況を見通すことは難しい情勢です。この点については、次に政策運営と併せて、さらにご説明したいと存じます。

3.金融政策運営

以上の経済・物価見通しを踏まえつつ、現在の金融政策の概要についてご説明します。そのうえで、金融政策運営に対する私の考えを述べたいと存じます。

(1)金融政策の概要

日本銀行は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という枠組みのもとで2%の「物価安定の目標」の実現を目指して金融政策を運営しています。この枠組みは、「長短金利操作」、「リスク資産の買入れ」、および、先行きの政策運営についての対外的な約束である「コミットメント」の3つから主に構成されます。これらに加えて、今年3月以降、新型コロナウイルス感染症拡大への対応として、金融緩和を強化してきました。その内容は図表13で整理しているように、大きく3点に分けられます。

1点目は、企業等の資金繰り支援策である「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」の導入です。当該プログラムは、金融機関の企業等への貸出を促進する「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ」と、CP・社債等の買入れ増額の2つからなります。このうち、特別オペは、民間金融機関の行う新型コロナ対応融資や、政府の経済対策として行われる実質無利子・無担保融資について、日本銀行が金利ゼロ%でバックファイナンスすることで、政府と連携して企業や家計の資金繰りを支援するものです。日本銀行は、利用残高に相当する当座預金に+0.1%を付利し、金融機関に対して当該オペの利用を促しています。もう1つのCP・社債等の買入れ増額では、従来の約4倍となる約20兆円、市場規模の4分の1に相当する金額を上限に買入れることで、市場金利や市場調達環境の安定を図っています。これら2つを合わせた特別プログラムの総枠は約120兆円となります。

2点目は、円貨および外貨の無制限の供給です。円貨については、国債買入れ策における従来の「年間80兆円」という金額のめどを撤廃し、上限を設けずに必要な額の国債を買入れることを明確にしました。国債のイールドカーブ全体を低位で安定させる観点から実施していますが、長短金利操作における目標金利自体は変えていません。外貨については、米ドルの資金供給について、世界主要6中央銀行の協調に基づき、金利を0.25%ポイント引き下げるとともに、期間が長めの資金供給手段を導入し、ドル資金を十分に供給しています。

3点目は、資産市場におけるリスクプレミアムの抑制を企図したETFとJ-REITの積極的な買入れです。買入残高の増加ペースの上限を、当面は、従来の残高増加ペースの2倍とすることで、資産市場の不安定な動きが企業や家計のマインド悪化につながるのを抑止することを狙っています。

これら3つからなる新型コロナ感染症対応策は、これまでのところ、金融資本市場の動揺を抑え、企業等の資金繰りに対して一定の効果があったと考えています。

(2)金融政策運営に対する私自身の考え

私は、以上ご説明した新型コロナ感染症への対応策については賛成しましたが、長短金利操作とコミットメントの2つには反対しました。資金繰り支援や流動性供給だけでなく、今後の物価下落圧力を可能な限り抑制することが現時点で必要であると考えるためです。

まず、今回の感染症の拡大というショックによって物価下落圧力が強まったと想定する根拠をご説明します。今回のショックは、自然災害を受けた経済ショックや、金融仲介機能に問題が生じる金融危機とは性質が異なります2。特に今回は、生産や貿易が停滞するという供給ショックと、サービス消費が急減するという需要ショックの両方が生じています。物価に対しては、負の需要ショックはマイナスに作用しますが、負の供給ショックは、単体では理論上プラスに作用します。このため、物価に与える影響を考えるうえでは、需給ショックの正負や優劣を調査する必要があります3。図表14は、米国の研究を参考にしつつ、日銀短観のデータを用いて、業種別に需給ショックをそれぞれ推計し、それらを販売価格に与える影響に換算したものです。製造業では、自動車を中心に供給ショックの影響が強めに出た一方、非製造業では、対個人サービスや宿泊・飲食サービスを中心に、需要ショックの影響が非常に大きかったと試算されました。また、全業種を通してみると、需要ショックの方が優勢で、価格が下押しされる方向であったと推計されました。様々な仮定のもとで推計した1つの結果であるため、幅を持って解釈する必要がありますが、前段で述べた需給ギャップや予想インフレ率の低下、外部性による負の影響やショックの相互作用もあわせて考慮すると4、感染症の拡大という今回のショックは、やはり物価に対して下押し圧力として作用すると推察されます。

このように物価下落圧力が強まったと推察されることを踏まえ、私自身が適当と考える政策についてご説明します。まず、長短金利操作に関しては、政策金利の維持ではなく低下を明示したうえで、積極的な国債買入れを行うことが適当であると考えています。今年に入り、名目金利が横ばい圏内で推移する一方、予想インフレ率は低下していることから、それらの差である実質金利は上昇し、金融環境の緩和度合いが低下している可能性があることを示唆しています。これに対しては、政策金利の引き下げによって、企業・家計の金利負担を軽減し、今後のデフレ圧力を可能な限り抑えることが必要です。

また、コミットメントについても、中央銀行としてデフレの定着を容認せず、かつ具体的な条件下で行動することが約束されている強力な内容に修正することが適当であると考えています。一案としては、政策金利を物価目標と具体的に関連付け、物価が目標と乖離した場合に追加緩和を約束することが有効であると思います。金融市場は、通常、中央銀行の先々の行動を織り込んで価格調整するため、物価の実績と目標が一定以上に乖離した際に追加緩和が約束されていることで、金融・経済環境が自律的に改善すると期待できます。また、中央銀行が物価の低下を容認しないスタンスを行動によって示すことで、物価目標に対する信認が改善する可能性もあります。さらに、物価下落に対して追加緩和しない場合と比べて目標達成が早まり、累積的な性質がある副作用5を結果として小さくとどめうるとも考えています。

  • 2新型コロナ感染症の経済的影響については、例えば次を参照。経済産業省(2020)「通商白書2020(第I部)」、https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2020/whitepaper_2020.html
  • 3渡辺努(2020)「新型コロナウイルスが消費と物価に及ぼす影響」、『月刊資本市場』2020.4(No.416)では、今回のコロナショックは世界的に見てもGDPの減少と物価の下落が同時に進行しており、需要ショックが支配的であると論じています。
  • 4これについては、(1)感染症が収束するまでの間は、個人が厳格な対策を取らざるをえないため、経済の落ち込みが深刻化しうること、(2)需要の減少が他の家計の支出を抑制する外部性の影響が生じうること、(3)需要の代替効果によって、失われた需要を完全に埋め合わせることが短期的には難しいこと、さらに、(4)供給ショックが需要ショックにつながりうること、などが考えられます。
  • 5金融緩和の副作用には、低金利環境が長期化することに伴う金融仲介機能や市場機能への影響といったものがあります。

4.沖縄県経済について

最後に、沖縄県経済について、日本銀行那覇支店の調査を参考にお話しいたします。

沖縄県は、東アジアのほぼ中心に位置する地理的特徴から、古くよりアジアの架け橋としての役割を果たす中で、中継貿易で栄えるとともに、各地域の文化を取り込みつつ独自の歴史・文化を育んできました。近年は、こうした歴史・文化に加え、恵まれた自然環境を活かして、観光業が大きく発展しました。

また、沖縄県は、国内で人口増加が続く数少ない地域です。2019年における人口の自然増減率は全国で唯一のプラスとなったほか、15~64歳の生産年齢人口の比率も全国平均より高く、若い力にあふれた地域と言えます。将来人口推計では、2030年まで人口増加が続くと見通されています。

こうした歴史的・社会的背景もあり、沖縄県の産業構造は、第2次産業の比率が2割弱にとどまる一方、第3次産業が8割強を占めています。こうしたもとで、県経済は、観光インフラの整備など関係者のご尽力によって、全国的な観光・インバウンド需要拡大の好影響を大きく取り込んできました。また、人口増加を背景に、個人消費を中心とする県内需要が増加し、観光需要の増加と合わせ、昨年まで好況が続いてきました。

もっとも、新型コロナウイルス感染症が拡大し始めて以降、状況は一変しました。観光客数が急減し、県内移動も減少したことから、沖縄県の景気は大きく落ち込みました。例えば、ピーク時には月間100万人を超えていた沖縄県への観光客数は、本年5月には約4万人にまで急減し、県内主要ホテルの客室稼働率は約3%と過去最低となりました。短観の業況判断DIを見ても、昨年12月調査まで沖縄県は全国トップの高水準でしたが、最新の本年6月調査では、調査開始以来の最低水準まで大幅に低下しました。

感染症の収束を見通すことが依然として困難である中、官・民とも対応にご尽力を続けておられます。沖縄県経済は、先行きも不透明感の強い状況が続くとみられる中、当面は、大幅に落ち込んだ景気の立て直しが喫緊の課題です。また、アフターコロナを見据え、中長期的な課題に取り組んでいくことも重要です。例えば、沖縄県経済をけん引してきた観光業では、従来からの課題である、量から質への転換──観光客1人当たりの滞在日数や消費額の引き上げ──に取り組んでおられます。また、情報通信技術やビッグデータ等を活用しつつ、新しい観光業のあり方も検討しておられます。地域の皆さまが協力し、官・民が連携して、アフターコロナにおける地域経済活性化の成功例を作り上げていかれることを願っております。

日本銀行としても、那覇支店を中心に、県内経済の回復や諸課題の解決に向けた取り組みに、少しでも貢献できるよう努めてまいります。

ご清聴ありがとうございました。

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