■中長期の成長戦略
3. コーセーとの資本業務提携について
ミルボン (T:4919)は2017年1月25日、コーセーとの資本業務提携を発表した。
提携の大筋の内容は、同社とコーセーとで合弁会社を設立し、スキンケア及びメイク製品の販売を行うというものだ。
合弁企業はスキンケア、メイク製品の企画・開発・マーケティングを行う。
製造はコーセー側が、販売は同社が担う。
同社はヘアケア製品同様に、ミルボン・サロン(美容室)を通じてスキンケア製品の販売(カウンセリング販売)をしていくことになる。
合弁企業の設立予定日は2017年6月1日とされているが、社名を始め、資本金の額、両社の出資割合、代表者及び役員構成などの詳細はこれから詰めていくことになる。
また、スキンケア、メイク製品の取扱店舗数やその拡大ペース、スキンケア、メイク製品販売事業(当該合弁企業)の事業規模、将来の海外展開の見通しなどについても、まったく白紙とされている。
弊社ではこうしたスケジュールが遅れる可能性は十分あると考えている。
今期の同社の収益計画にはスキンケア事業は織り込まれていないため、多少の遅れが生じてもマイナス影響はないとみている。
むしろ、事業スキームをしっかり練り上げ、来期以降の実質スタートに向けての十分な準備をすることが重要だと考えている。
同社は2015~2019年中期事業構想において化粧品ビジネスへの進出を掲げており、その第1歩であるコーセーとの資本業務提携について、素直にポジティブと評価してよいというのが弊社の考えだ。
スキンケア・メイク製品事業の将来見通しについては、現時点では分かっていることの方が少ない状況ではあるが、弊社では今回の提携のポイントを以下のように整理して理解している。
(1) 美容室の経営力強化
同社の経営基盤強化と同義と言える。
その美容室経営においては技術売上と店販ビジネスが収益の2本柱となっているが、成長余地があるのは店販ビジネスだ。
ここを伸長させるために、同社の事業領域であるヘア化粧品に加え、スキンケア製品を導入して2つの製品分野をワンストップで提供しようというのはごく自然な流れと言える。
(2) 事業パートナーとしてコーセーを選択した点
同社では、コーセーがかつてはロレアルと組んでスキンケア製品のサロン店販ビジネスを行っていた(現在は提携を解消済み)経験や、過去の両社の人的交流等を挙げている。
また、同社が(OEM供給を活用して)自社ブランドで展開するよりも、技術や安全性の面でコーセーが有する知見を活用した方が時間的節約にもつながるとしている。
こうした説明には説得力があると弊社では考えている。
(3) 強みと弱み
美容室においてスキンケア製品について十分な知識を有し、消費者にきちんとしたアドバイスができるところは少ないというのが同社の認識だ。
同社は自社の強みを、フィールドパーソンの存在と、彼らによる美容師への充実したトレーニング体制にあると認識しており、それらを活用することで美容室のレベルアップと店販ビジネスの拡大へとつなげていくとしている。
この点、同社が人材(フィールドパーソン)の育成キャパシティを倍増させる施策(春・秋の2期制)を打ち出したことは非常に理にかなっていると弊社では考えている。
(4) 競合
同社自身は、同社が目指すような、十分なトレーニングを積んだ上でのヘア化粧品とスキンケア製品のワンストップ提供を実現できているところはないという認識で、競合ではなく新たな市場を創造するという認識だ。
弊社の認識では、美容室を通じたスキンケア製品の販売を行っているところも一部には存在するが、全国で20万軒を大きく超える美容室の中で、他者との競合関係に陥ることなく一定規模まで事業を拡大させることは十分可能だと弊社では考えている。
(5) スキンケア事業の事業規模
スキンケア事業の事業規模については明らかにされていない。
弊社では、同社のヘアケア製品の店販ビジネスの規模が年間10,000百万円近くに成長してきているとみられること、一般的にヘアケア製品に比べてスキンケア製品の方が高価格帯であること、などを勘案すると、スキンケア事業の売上規模も10,000百万円が1つの目指すべき水準となってくるものと考えている。
さらにスキンケア製品が高価格帯あることは、中長期的に同社が売上高営業利益率20%の水準を維持する点でも貢献すると期待される。
なお、現在の中期事業構想の最終業績目標の中には、今回のスキンケア事業を含めた「化粧品ビジネス」からの収益貢献はまったく織り込まれていない。
今回の資本業務提携及びスキンケア事業に関しては、今後の発表を待って、さらに詳細な評価分析を試みたいと考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
3. コーセーとの資本業務提携について
ミルボン (T:4919)は2017年1月25日、コーセーとの資本業務提携を発表した。
提携の大筋の内容は、同社とコーセーとで合弁会社を設立し、スキンケア及びメイク製品の販売を行うというものだ。
合弁企業はスキンケア、メイク製品の企画・開発・マーケティングを行う。
製造はコーセー側が、販売は同社が担う。
同社はヘアケア製品同様に、ミルボン・サロン(美容室)を通じてスキンケア製品の販売(カウンセリング販売)をしていくことになる。
合弁企業の設立予定日は2017年6月1日とされているが、社名を始め、資本金の額、両社の出資割合、代表者及び役員構成などの詳細はこれから詰めていくことになる。
また、スキンケア、メイク製品の取扱店舗数やその拡大ペース、スキンケア、メイク製品販売事業(当該合弁企業)の事業規模、将来の海外展開の見通しなどについても、まったく白紙とされている。
弊社ではこうしたスケジュールが遅れる可能性は十分あると考えている。
今期の同社の収益計画にはスキンケア事業は織り込まれていないため、多少の遅れが生じてもマイナス影響はないとみている。
むしろ、事業スキームをしっかり練り上げ、来期以降の実質スタートに向けての十分な準備をすることが重要だと考えている。
同社は2015~2019年中期事業構想において化粧品ビジネスへの進出を掲げており、その第1歩であるコーセーとの資本業務提携について、素直にポジティブと評価してよいというのが弊社の考えだ。
スキンケア・メイク製品事業の将来見通しについては、現時点では分かっていることの方が少ない状況ではあるが、弊社では今回の提携のポイントを以下のように整理して理解している。
(1) 美容室の経営力強化
同社の経営基盤強化と同義と言える。
その美容室経営においては技術売上と店販ビジネスが収益の2本柱となっているが、成長余地があるのは店販ビジネスだ。
ここを伸長させるために、同社の事業領域であるヘア化粧品に加え、スキンケア製品を導入して2つの製品分野をワンストップで提供しようというのはごく自然な流れと言える。
(2) 事業パートナーとしてコーセーを選択した点
同社では、コーセーがかつてはロレアルと組んでスキンケア製品のサロン店販ビジネスを行っていた(現在は提携を解消済み)経験や、過去の両社の人的交流等を挙げている。
また、同社が(OEM供給を活用して)自社ブランドで展開するよりも、技術や安全性の面でコーセーが有する知見を活用した方が時間的節約にもつながるとしている。
こうした説明には説得力があると弊社では考えている。
(3) 強みと弱み
美容室においてスキンケア製品について十分な知識を有し、消費者にきちんとしたアドバイスができるところは少ないというのが同社の認識だ。
同社は自社の強みを、フィールドパーソンの存在と、彼らによる美容師への充実したトレーニング体制にあると認識しており、それらを活用することで美容室のレベルアップと店販ビジネスの拡大へとつなげていくとしている。
この点、同社が人材(フィールドパーソン)の育成キャパシティを倍増させる施策(春・秋の2期制)を打ち出したことは非常に理にかなっていると弊社では考えている。
(4) 競合
同社自身は、同社が目指すような、十分なトレーニングを積んだ上でのヘア化粧品とスキンケア製品のワンストップ提供を実現できているところはないという認識で、競合ではなく新たな市場を創造するという認識だ。
弊社の認識では、美容室を通じたスキンケア製品の販売を行っているところも一部には存在するが、全国で20万軒を大きく超える美容室の中で、他者との競合関係に陥ることなく一定規模まで事業を拡大させることは十分可能だと弊社では考えている。
(5) スキンケア事業の事業規模
スキンケア事業の事業規模については明らかにされていない。
弊社では、同社のヘアケア製品の店販ビジネスの規模が年間10,000百万円近くに成長してきているとみられること、一般的にヘアケア製品に比べてスキンケア製品の方が高価格帯であること、などを勘案すると、スキンケア事業の売上規模も10,000百万円が1つの目指すべき水準となってくるものと考えている。
さらにスキンケア製品が高価格帯あることは、中長期的に同社が売上高営業利益率20%の水準を維持する点でも貢献すると期待される。
なお、現在の中期事業構想の最終業績目標の中には、今回のスキンケア事業を含めた「化粧品ビジネス」からの収益貢献はまったく織り込まれていない。
今回の資本業務提携及びスキンケア事業に関しては、今後の発表を待って、さらに詳細な評価分析を試みたいと考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)