■事業概要
3. 極めてユニークな同社のビジネスモデル
ヨシムラ・フード・ホールディングス (T:2884)のビジネスモデルは、M&Aと子会社の成長の両輪で構成されている。
同社は、様々な課題を抱える全国の中小食品企業を子会社化してグループを形成・拡大する。
一方、持株会社としてグループ全体の戦略の立案・実行と経営管理を行うことで子会社各社の収益改善を図り、子会社のリソースをグループ全体で活用することで各社の成長を促進する。
このような、中小食品企業のM&Aとその後の支援が両輪になったビジネスモデルは、他に類を見ない極めてユニークなものと言える。
M&Aの具体的プロセスは、案件の紹介・初期検討→初期情報の開示・検討→条件提示→合意→基本合意書の締結→デューデリジェンス→最終交渉→子会社化という流れになる。
案件はM&A仲介会社や地方銀行などから紹介されることが多い。
最近では、複数案件をまとめた紹介や海外からの紹介が増えているもようである。
案件紹介から子会社化まで通常6ヶ月程度かかる。
日本の場合、中小の食品企業だと買い手が少なく割安に放置されることが多いため、買収価格が経営改善後ベースでEV/EBITDA倍率2~3倍になることもある。
一方、海外ではEV/EBITDA倍率で8~10倍と比較的リーズナブルな価格になることが多い。
いずれにしろ、同社の場合、事業内容や改善策、強み、優秀な人材の有無などを独自の方法で厳しく査定することで、割高な価格では買わないという姿勢を堅持している。
M&Aで重要なのがデューデリジェンスである。
もちろん財務や法務のデューデリジェンスが重要なのは言うまでもないが、同社を特徴付けているのが「事業のデューデリジェンス」である。
同社の事業統括担当が、同社と同社子会社にとってシナジーがあるかないかなど、シャープな「目利き」として厳しく査定する。
また、M&A後で重要なのが子会社従業員などステークホルダーとの信頼関係の構築である。
この際、同社の「長期的に支援・活性化を図る」という考え方自体が信頼構築の礎となるが、支援・活性化を進めるのも当の事業統括担当であり、彼らが各子会社に直接向き合うことでより強い信頼が得られ、種々の課題解決が進めやすくなる(課題解決の結果が評価されれば子会社従業員のモチベーションは上がり、信頼関係はさらに深まる)。
同じ担当者がM&Aの前後で事業に関与するケースは非常に少ないと思われ、この点でも同社のユニークさが表れていると言える。
同社は、持株会社としてグループ全社の経営戦略の立案・実行及び経営管理を行うとともに、子会社に対しては営業、製造、仕入物流、商品開発、品質管理、経営管理といった横串機能を提供することで、統括・支援をスムーズに進めることができる(事業統括担当の本質的な役割である)。
この際、会社単位では欠落するヒト・モノ・カネといった経営資源をグループ内で融通し合い、各子会社相互の強みを生かし弱みを補完している。
こうした仕組みを同社は「中小企業支援プラットフォーム」と呼んでいる。
「中小企業支援プラットフォーム」は、同社が食品の製造・販売に特化して長く支援に取り組んできたノウハウの蓄積により構築された仕組みである。
こうした考え方は共感されやすく、かつて産業革新機構や日本たばこ産業、ベンチャーキャピタルなどから同社が出資を受けてこられたのも、子会社の従業員や元オーナー、取引先などからの信頼が厚いのも、「中小企業支援プラットフォーム」の背景にある考え方への共感によるものと考えられる。
強みは長期的視点のM&Aと中小企業支援プラットフォーム
4. 強みは唯一無二のビジネスモデルそのもの
同社の強みはまさにビジネスモデルそのもの、事業承継の受け皿として長期的視点に立ったM&Aと「中小企業支援プラットフォーム」にある。
同社は、M&Aで子会社化した企業の売却を目的としていないため、事業規模が小さく成長に時間がかかる企業や、成長のための経営資源が不足しているような企業を含め、幅広く中小企業の受け皿になることができる。
短期的な収益を目的に出来上がった企業や部門を単に売り買いするだけの一般的なM&Aにはない、同社のみの強みである。
長らく食品に特化して中小企業を支援・活性化してきたため、同社は、食品業界の市場環境や商習慣、中小食品企業特有のリスクなどを熟知することになった。
デューデリジェンスや交渉のノウハウも蓄積してきた。
M&A前後で同じ事業統括担当が関与するため支援・活性化の「目利き」でもある。
このため、M&A仲介会社や、地方銀行・信用金庫・証券会社といった地域の金融機関、税理士やコンサル事務所、弁護士、再生コンサルタントなどからの信頼も厚く、同社が中小食品企業のM&A情報を容易に得ることができる背景にもなっている。
同社子会社の14社は、5社が親会社による選択と集中、2社が事業再生、7社が後継者難であり、製商品はチルド・冷凍総菜から酒、酒の肴、ゼリー、ピーナッツバター、食品素材まで多岐にわたり、小規模ながら日本各地で地域に密着して活動してきた企業である。
さらに海外でも1社増えた。
こうした種々様々な子会社がなべて数字を伸ばしているため、「中小企業支援プラットフォーム」を利用すれば比較的容易に業績が上向くということの、既に実証になっていると言うことができる。
「中小企業支援プラットフォーム」の効果は多大
5. 仕組みが実効を上げている
例えば、楽陽食品(株)は、子会社化当初のリストラ一巡後は、「中小企業支援プラットフォーム」を背景に、新規工場や既存工場への投資や新規取引先へのアプローチなど経営を積極化させた。
一方、各種事情で廃業や製造中止をする同業が増えた結果、低価格チルドシウマイの業界シェアが2017年には8割に達したもようである。
また、昨今の原材料価格値上げのなか、中小企業にはなかなか認めてもらえない価格の引き上げが、同社は数10年ぶりで認められた。
同業間のみならず取引上でも強みが実効を上げていると言える。
ちなみに、価格引き上げ後も販売数量は落ちておらず、消費者からのロイヤリティも勝ち得ていると言うことができる。
また、最後発と言っていい餃子も売上げを伸ばしているもようで、経営資源の制約から積極経営できない中小企業が多いなか、楽陽食品の様変わりはまさに「中小企業支援プラットフォーム」の強みを示していると言えるだろう。
2016年7月に子会社化した純和食品(株)は、ボイルやレトルトの高い技術がありながら、イオン (T:8267)向けにゼリーのPB(プライベートブランド)を製造販売するだけであった。
これではイオンの販売戦略に振り回されるリスクが高く、年度によっては大変苦戦することもある。
そこで子会社化後、NB(ナショナルブランド)商品を開発しグループの営業網を利用して販売した結果、取引先のスーパーが短期間で60チェーンを上回るまでになった。
また、2017年10月に子会社化したヤマニ野口水産は、全国に販路がなく北海道の留萌で酒の肴を細々と作り続けるだけの企業だったが、グループの販売網を使うようになった途端、生協への北海たこやわらか煮の納入が決まった。
「中小企業支援プラットフォーム」は食品分野であれば高い汎用性のある仕組みである、という同社の自負も頷ける。
2017年12月にM&Aしたシンガポールに拠点を持つJSTT SINGAPORE PTE. LTD.(JSTT)と2018年3月にM&Aしたおむすびころりん本舗も、今後「中小企業支援プラットフォーム」によるシナジーが期待される。
ちなみに、両社とも後継者不在により株式を譲り受けたものである。
JSTTは、日本から仕入れた新鮮で美味しい魚介類などをシンガポールの自社工場で寿司やのり巻きなどに加工して販売しており、品質管理能力の高さに定評がある。
主にシンガポールのスーパーマーケット大手であるCold StorageやGiant Hypermarketの店舗(2018年4月現在36店)で販売している。
ほかに、シンガポール国内の日本食レストラン向け食品卸売や、日本食レストラン(1店舗)の運営も行っている。
収益は、2016年12月期の売上高1,305百万円(前期比9.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益75百万円(同30.7%減)と一定の規模感がある。
今後、JSTT自身の成長戦略のほか、JSTTの持つシンガポールにおける販路を活用して、グループ商品を販売するなど、成長が見込まれるアジア市場で、JSTTを起点としてビジネスを拡大することが可能となる。
おむすびころりん本舗は、日本アルプス山麓の豊富な地下水と低湿度の気候を活かし、乾燥食品の製造を行っている。
製品は、自社開発したフリーズドライ装置による即席めん具材や製菓原料、サプリメント素材などの業務用フリーズドライ製品、信州名産の野沢菜を用いた家庭用「おむすびころりん野沢菜茶漬け」、宇宙飛行士の毛利衛さんが米スペースシャトル「エンデバー」に携行した「水もどり餅」などの非常用食品である。
主に食品商社や地元長野県の土産物店、官公庁に向けて販売を行っている。
収益的には、2017年5月期の売上高793百万円(前期比16.3%増)、営業利益75百万円(同1.3%減)という規模感である。
「中小企業支援プラットフォーム」を活用して製造の合理化や経営管理体制の強化も行う予定だが、技術力が高いので営業支援による売上増加は特に期待できそうである。
ちなみに、「中小企業支援プラットフォーム」を実際に動かす事業統括担当は、グループの中で最も食品に精通した人材でなければならない。
しかし、もともと持株会社の同社にはそのような人材がいるわけではない。
ということは、事業統括担当は子会社から同社に引き上げられたということを示している。
実際、6つの横串事業のうちで営業と製造、それに仕入物流の事業統括担当は子会社の出身である(商品開発と品質管理が外部、経営管理が同社)。
これは非常に効率的な考え方である上、次は自分と子会社従業員のモチベーションも上がるというものだろう。
なかでも事業全体を統括しているのがCOOの北堀孝男(きたほりたかお)氏で、吉村CEOと共同代表を務めるキーマンである。
(株)ミズホ(現(株)ヨシムラ・フード)出身で、食品業界50年以上、経営者歴30年以上という経験の大ベテランである。
北堀COOが事業を統括することで、吉村CEOは増えるM&Aの交渉や経営全般に専念できる。
名コンビかもしれない。
こうした人的資産の蓄積もあり、今や国内20営業所、17工場、海外1拠点を誇る、アグレッシブな中小食品企業の集合体として、食品業界でプレゼンスが高まりつつある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
3. 極めてユニークな同社のビジネスモデル
ヨシムラ・フード・ホールディングス (T:2884)のビジネスモデルは、M&Aと子会社の成長の両輪で構成されている。
同社は、様々な課題を抱える全国の中小食品企業を子会社化してグループを形成・拡大する。
一方、持株会社としてグループ全体の戦略の立案・実行と経営管理を行うことで子会社各社の収益改善を図り、子会社のリソースをグループ全体で活用することで各社の成長を促進する。
このような、中小食品企業のM&Aとその後の支援が両輪になったビジネスモデルは、他に類を見ない極めてユニークなものと言える。
M&Aの具体的プロセスは、案件の紹介・初期検討→初期情報の開示・検討→条件提示→合意→基本合意書の締結→デューデリジェンス→最終交渉→子会社化という流れになる。
案件はM&A仲介会社や地方銀行などから紹介されることが多い。
最近では、複数案件をまとめた紹介や海外からの紹介が増えているもようである。
案件紹介から子会社化まで通常6ヶ月程度かかる。
日本の場合、中小の食品企業だと買い手が少なく割安に放置されることが多いため、買収価格が経営改善後ベースでEV/EBITDA倍率2~3倍になることもある。
一方、海外ではEV/EBITDA倍率で8~10倍と比較的リーズナブルな価格になることが多い。
いずれにしろ、同社の場合、事業内容や改善策、強み、優秀な人材の有無などを独自の方法で厳しく査定することで、割高な価格では買わないという姿勢を堅持している。
M&Aで重要なのがデューデリジェンスである。
もちろん財務や法務のデューデリジェンスが重要なのは言うまでもないが、同社を特徴付けているのが「事業のデューデリジェンス」である。
同社の事業統括担当が、同社と同社子会社にとってシナジーがあるかないかなど、シャープな「目利き」として厳しく査定する。
また、M&A後で重要なのが子会社従業員などステークホルダーとの信頼関係の構築である。
この際、同社の「長期的に支援・活性化を図る」という考え方自体が信頼構築の礎となるが、支援・活性化を進めるのも当の事業統括担当であり、彼らが各子会社に直接向き合うことでより強い信頼が得られ、種々の課題解決が進めやすくなる(課題解決の結果が評価されれば子会社従業員のモチベーションは上がり、信頼関係はさらに深まる)。
同じ担当者がM&Aの前後で事業に関与するケースは非常に少ないと思われ、この点でも同社のユニークさが表れていると言える。
同社は、持株会社としてグループ全社の経営戦略の立案・実行及び経営管理を行うとともに、子会社に対しては営業、製造、仕入物流、商品開発、品質管理、経営管理といった横串機能を提供することで、統括・支援をスムーズに進めることができる(事業統括担当の本質的な役割である)。
この際、会社単位では欠落するヒト・モノ・カネといった経営資源をグループ内で融通し合い、各子会社相互の強みを生かし弱みを補完している。
こうした仕組みを同社は「中小企業支援プラットフォーム」と呼んでいる。
「中小企業支援プラットフォーム」は、同社が食品の製造・販売に特化して長く支援に取り組んできたノウハウの蓄積により構築された仕組みである。
こうした考え方は共感されやすく、かつて産業革新機構や日本たばこ産業、ベンチャーキャピタルなどから同社が出資を受けてこられたのも、子会社の従業員や元オーナー、取引先などからの信頼が厚いのも、「中小企業支援プラットフォーム」の背景にある考え方への共感によるものと考えられる。
強みは長期的視点のM&Aと中小企業支援プラットフォーム
4. 強みは唯一無二のビジネスモデルそのもの
同社の強みはまさにビジネスモデルそのもの、事業承継の受け皿として長期的視点に立ったM&Aと「中小企業支援プラットフォーム」にある。
同社は、M&Aで子会社化した企業の売却を目的としていないため、事業規模が小さく成長に時間がかかる企業や、成長のための経営資源が不足しているような企業を含め、幅広く中小企業の受け皿になることができる。
短期的な収益を目的に出来上がった企業や部門を単に売り買いするだけの一般的なM&Aにはない、同社のみの強みである。
長らく食品に特化して中小企業を支援・活性化してきたため、同社は、食品業界の市場環境や商習慣、中小食品企業特有のリスクなどを熟知することになった。
デューデリジェンスや交渉のノウハウも蓄積してきた。
M&A前後で同じ事業統括担当が関与するため支援・活性化の「目利き」でもある。
このため、M&A仲介会社や、地方銀行・信用金庫・証券会社といった地域の金融機関、税理士やコンサル事務所、弁護士、再生コンサルタントなどからの信頼も厚く、同社が中小食品企業のM&A情報を容易に得ることができる背景にもなっている。
同社子会社の14社は、5社が親会社による選択と集中、2社が事業再生、7社が後継者難であり、製商品はチルド・冷凍総菜から酒、酒の肴、ゼリー、ピーナッツバター、食品素材まで多岐にわたり、小規模ながら日本各地で地域に密着して活動してきた企業である。
さらに海外でも1社増えた。
こうした種々様々な子会社がなべて数字を伸ばしているため、「中小企業支援プラットフォーム」を利用すれば比較的容易に業績が上向くということの、既に実証になっていると言うことができる。
「中小企業支援プラットフォーム」の効果は多大
5. 仕組みが実効を上げている
例えば、楽陽食品(株)は、子会社化当初のリストラ一巡後は、「中小企業支援プラットフォーム」を背景に、新規工場や既存工場への投資や新規取引先へのアプローチなど経営を積極化させた。
一方、各種事情で廃業や製造中止をする同業が増えた結果、低価格チルドシウマイの業界シェアが2017年には8割に達したもようである。
また、昨今の原材料価格値上げのなか、中小企業にはなかなか認めてもらえない価格の引き上げが、同社は数10年ぶりで認められた。
同業間のみならず取引上でも強みが実効を上げていると言える。
ちなみに、価格引き上げ後も販売数量は落ちておらず、消費者からのロイヤリティも勝ち得ていると言うことができる。
また、最後発と言っていい餃子も売上げを伸ばしているもようで、経営資源の制約から積極経営できない中小企業が多いなか、楽陽食品の様変わりはまさに「中小企業支援プラットフォーム」の強みを示していると言えるだろう。
2016年7月に子会社化した純和食品(株)は、ボイルやレトルトの高い技術がありながら、イオン (T:8267)向けにゼリーのPB(プライベートブランド)を製造販売するだけであった。
これではイオンの販売戦略に振り回されるリスクが高く、年度によっては大変苦戦することもある。
そこで子会社化後、NB(ナショナルブランド)商品を開発しグループの営業網を利用して販売した結果、取引先のスーパーが短期間で60チェーンを上回るまでになった。
また、2017年10月に子会社化したヤマニ野口水産は、全国に販路がなく北海道の留萌で酒の肴を細々と作り続けるだけの企業だったが、グループの販売網を使うようになった途端、生協への北海たこやわらか煮の納入が決まった。
「中小企業支援プラットフォーム」は食品分野であれば高い汎用性のある仕組みである、という同社の自負も頷ける。
2017年12月にM&Aしたシンガポールに拠点を持つJSTT SINGAPORE PTE. LTD.(JSTT)と2018年3月にM&Aしたおむすびころりん本舗も、今後「中小企業支援プラットフォーム」によるシナジーが期待される。
ちなみに、両社とも後継者不在により株式を譲り受けたものである。
JSTTは、日本から仕入れた新鮮で美味しい魚介類などをシンガポールの自社工場で寿司やのり巻きなどに加工して販売しており、品質管理能力の高さに定評がある。
主にシンガポールのスーパーマーケット大手であるCold StorageやGiant Hypermarketの店舗(2018年4月現在36店)で販売している。
ほかに、シンガポール国内の日本食レストラン向け食品卸売や、日本食レストラン(1店舗)の運営も行っている。
収益は、2016年12月期の売上高1,305百万円(前期比9.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益75百万円(同30.7%減)と一定の規模感がある。
今後、JSTT自身の成長戦略のほか、JSTTの持つシンガポールにおける販路を活用して、グループ商品を販売するなど、成長が見込まれるアジア市場で、JSTTを起点としてビジネスを拡大することが可能となる。
おむすびころりん本舗は、日本アルプス山麓の豊富な地下水と低湿度の気候を活かし、乾燥食品の製造を行っている。
製品は、自社開発したフリーズドライ装置による即席めん具材や製菓原料、サプリメント素材などの業務用フリーズドライ製品、信州名産の野沢菜を用いた家庭用「おむすびころりん野沢菜茶漬け」、宇宙飛行士の毛利衛さんが米スペースシャトル「エンデバー」に携行した「水もどり餅」などの非常用食品である。
主に食品商社や地元長野県の土産物店、官公庁に向けて販売を行っている。
収益的には、2017年5月期の売上高793百万円(前期比16.3%増)、営業利益75百万円(同1.3%減)という規模感である。
「中小企業支援プラットフォーム」を活用して製造の合理化や経営管理体制の強化も行う予定だが、技術力が高いので営業支援による売上増加は特に期待できそうである。
ちなみに、「中小企業支援プラットフォーム」を実際に動かす事業統括担当は、グループの中で最も食品に精通した人材でなければならない。
しかし、もともと持株会社の同社にはそのような人材がいるわけではない。
ということは、事業統括担当は子会社から同社に引き上げられたということを示している。
実際、6つの横串事業のうちで営業と製造、それに仕入物流の事業統括担当は子会社の出身である(商品開発と品質管理が外部、経営管理が同社)。
これは非常に効率的な考え方である上、次は自分と子会社従業員のモチベーションも上がるというものだろう。
なかでも事業全体を統括しているのがCOOの北堀孝男(きたほりたかお)氏で、吉村CEOと共同代表を務めるキーマンである。
(株)ミズホ(現(株)ヨシムラ・フード)出身で、食品業界50年以上、経営者歴30年以上という経験の大ベテランである。
北堀COOが事業を統括することで、吉村CEOは増えるM&Aの交渉や経営全般に専念できる。
名コンビかもしれない。
こうした人的資産の蓄積もあり、今や国内20営業所、17工場、海外1拠点を誇る、アグレッシブな中小食品企業の集合体として、食品業界でプレゼンスが高まりつつある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)