■サイネックス (T:2376)の中長期の成長戦略
3. WEB・ソリューション事業の成長戦略
WEB・ソリューション事業においては、非常に多くのサービスメニューをラインアップしている。
スタートして日が浅く、収益貢献はこれからという事業も多く、またアプリやシステムの開発で先行投資が発生しているものもある。
そうしたなかで、収益貢献度や今後の成長可能性などを加味して、以下の各事業に特に注目している。
(1) 『わが街ふるさと納税』事業
『わが街ふるさと納税』事業はふるさと納税支援事業で、自治体がふるさと納税による収入(厳密には納税者からの「寄附金」)を獲得するためのプロモーション活動や、寄附金受付に関する事務業務の代行、寄附金に対する返礼品の管理・配送業務及び決済業務など、ふるさと納税に関する一連の業務を一括して請け負うものだ。
2014年7月に茨城県笠間市と契約したのを皮切りに、これまで99の自治体と支援契約を締結している(2018年3月末までの累計)。
同種のサービスを手掛ける企業は他にもあり、同社は市場シェア(契約自治体数ベース)では3位にあるとみられる。
収益モデルは完全成果型報酬制だ。
自治体側の初期費用はゼロ円で、ふるさと納税制度の税収実績に応じて一部が報酬として支払われることになるため、自治体の財布からの持ち出しは一切ない。
自治体との共存共栄という基本姿勢を明確にしている点で経営方針と軌を一にしていると言えるだろう。
他方で、総務省から過剰な返礼品の自粛を求める通知や、地場産品による返礼を求める通知が出されているという現状もある。
同社はあくまで地方創生の支援の取り組みという立場に立ち、節度あるプロモーションを続けて行く方針だ。
弊社では同社の『わが街ふるさと納税』事業はWEB・ソリューション事業セグメントの中の中核事業として、収益を支えているとみているが、今後の成長性の点でも高いポテンシャルを有していると考えている。
ポイントは収益モデルがふるさと納税の納税額に応じた成功報酬型である点にある。
仮に契約自治体数が現状維持であっても納税額が増加すれば同社の収入も増加することになる。
したがって、同社にとって最も重要なことは、契約する自治体に対してどのようなアドバイスを行って税収増を支援できるかであり、自治体数の市場シェアはさほど大きな意味を持たないと弊社では考えている。
そのため、同業他社の存在は、ふるさと納税制度の普及拡大につながり同社も間接的に恩恵を受け得るという意味で、競合関係ではなく協業関係と言えるだろう。
(2) 自治体クラウドサービス事業
自治体向けのクラウドサービスは、自治体のホームページ作成やアプリ作成を行うサービスだ。
ホームページ作成自体は従来から行っていたが、2017年4月に『わが街アプリ』を開始したのを機に、自治体クラウドサービス事業として再編成した。
『わが街アプリ』はスマートフォンでの利用を前提に、子育て、防災、観光、ゴミ出しなどの領域に関して地域住民の生活支援を図る、自治体公式アプリの作成・運営を支援するサービスだ。
保育園の空き情報の検索・通知や、電子母子手帳などが具体的な例として挙げられる。
『わが街アプリ』の収益モデルは『わが街事典』と同じく広告収入モデルだ。
“三方よし”を、IT技術を活用することで実現しながら収益につなげる構造だ。
現状は、事業の立ち上げ期ということもあって広告を掲載していない。
自治体数がある程度積み上がって事業が軌道に乗ったタイミングで、収益化に移行するものと弊社ではみている。
その契約自治体数は、2018年3月期に8増加し、累計では13自治体に達した。
同社は期中にもっと多い契約数を想定していたが、それには及ばなかった。
しかしながら、自治体にとっては費用をかけずに利用できることや、市民生活における利便性が高いことなどの理由から、今後契約自治体数は着実に積み上がっていくものと弊社ではみている。
弊社では『わが街アプリ』等の自治体クラウドサービスは成長ポテンシャルが高いと考えている。
特に『わが街アプリ』は、スマートフォンアプリであるためジャンルを問わずニーズや有用性の高いものを自由に制作できる。
いざ制作された場合には市民の活用度は高くなると想定される。
活用度が高いということは広告価値の上昇、ひいては同社の収益拡大にもつながっていくと弊社では期待している。
(3) 旅行事業の成長戦略
同社は連結子会社の(株)サイネックス・ネットワークを通じて旅行事業を展開している。
『わが街トラベル』のポータルサイトを通じて、地方の隠れた魅力を体験できる特色ある旅行商品を提供している。
そうしたなか、サイネックス・ネットワークはインバウンド需要のみならず、アウトバウンド需要も取り込むべく、2018年2月に第1種旅行業者登録を取得した。
第1種旅行業登録をすると、国内・海外の募集型企画旅行、受注型企画旅行、手配旅行、他社募集型企画旅行代売など、すべての旅行契約を取り扱うことが可能となる。
同社はインバウンド客の取り込みに当たっては、海外に支店を置くのではなく、インターネットを活用して集客を行う計画だ。
また、インバウンド客の地方への送客や体験型旅行の企画を強化し、地方の観光振興や地域経済の活性化への貢献を狙っている。
同社はこれまでも全国47都道府県の旅行販売を行ってきた上、各地の特産品の取り扱いも行っている。
また、各営業所がそれぞれの地域の魅力を熟知している。
こうした既存の事業やインフラをフルに活用すれば魅力ある商品開発という形でシナジー効果を得て、収益貢献に寄与できるものと弊社では考えている。
また、収益拡大のタイミングの点でも、想像以上に早くなる可能性もあると弊社では考えている。
2020年の東京オリンピックは言うまでもないが、2019年にはラグビーのワールドカップが日本で開催されるためだ。
同社としてもこれを見逃すはずはなく、結果的にインバウンド関連事業が早期に収益化する可能性があると弊社ではみている。
地域経済の領域での取り組みとして『わが街集客アプリ』とスーパーホテル誘致事業をスタート
4. 新たな取り組み
(1) 『わが街集客アプリ』事業
同社が2018年3月期から開始した『わが街集客アプリ』事業は地域経済の領域における事業者向けのサービスだ。
地域の店舗の集客力向上に貢献すべく同社がオリジナルアプリを開発する。
顧客情報や来店情報をただ集めるのみならず、数値化、データ化して最新情報やクーポンなどの効率的な提供を行ったり、リピート率の向上策につなげたりできる点に特長がある。
事業としてのポイントは、このサービスが有料である点だ。
現在は初期費用5万円、月間利用料2万円という料金設定でサービスを提供している。
言うまでもなくストック型収入モデルの事業であり、顧客数の積み上がりに伴い、同社の収益のベースを形成する存在になると期待される。
(2)スーパーホテル誘致事業
同社は2018年5月にホテル運営を手掛けるスーパーホテルとの間で、ビジネスマッチング業務に関する契約を締結した。
契約の具体的内容は、同社がホテル誘致を希望する自治体や地元企業を募り、スーパーホテルに紹介するというもので、同社はスーパーホテルから仲介料を受領するという収益モデルだ。
合意に達すれば、スーパーホテルはホテルの建設を指導し、オーナーから当該建物を賃借してホテル運営を行うことになる。
同社は、案件によってはホテル建設に参画する可能性もあるとしている。
スーパーホテル誘致事業の収益は同社の不動産事業セグメントの属することになる。
2019年3月期の業績予想には織り込まれていないが、今後の推移を見守りたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
3. WEB・ソリューション事業の成長戦略
WEB・ソリューション事業においては、非常に多くのサービスメニューをラインアップしている。
スタートして日が浅く、収益貢献はこれからという事業も多く、またアプリやシステムの開発で先行投資が発生しているものもある。
そうしたなかで、収益貢献度や今後の成長可能性などを加味して、以下の各事業に特に注目している。
(1) 『わが街ふるさと納税』事業
『わが街ふるさと納税』事業はふるさと納税支援事業で、自治体がふるさと納税による収入(厳密には納税者からの「寄附金」)を獲得するためのプロモーション活動や、寄附金受付に関する事務業務の代行、寄附金に対する返礼品の管理・配送業務及び決済業務など、ふるさと納税に関する一連の業務を一括して請け負うものだ。
2014年7月に茨城県笠間市と契約したのを皮切りに、これまで99の自治体と支援契約を締結している(2018年3月末までの累計)。
同種のサービスを手掛ける企業は他にもあり、同社は市場シェア(契約自治体数ベース)では3位にあるとみられる。
収益モデルは完全成果型報酬制だ。
自治体側の初期費用はゼロ円で、ふるさと納税制度の税収実績に応じて一部が報酬として支払われることになるため、自治体の財布からの持ち出しは一切ない。
自治体との共存共栄という基本姿勢を明確にしている点で経営方針と軌を一にしていると言えるだろう。
他方で、総務省から過剰な返礼品の自粛を求める通知や、地場産品による返礼を求める通知が出されているという現状もある。
同社はあくまで地方創生の支援の取り組みという立場に立ち、節度あるプロモーションを続けて行く方針だ。
弊社では同社の『わが街ふるさと納税』事業はWEB・ソリューション事業セグメントの中の中核事業として、収益を支えているとみているが、今後の成長性の点でも高いポテンシャルを有していると考えている。
ポイントは収益モデルがふるさと納税の納税額に応じた成功報酬型である点にある。
仮に契約自治体数が現状維持であっても納税額が増加すれば同社の収入も増加することになる。
したがって、同社にとって最も重要なことは、契約する自治体に対してどのようなアドバイスを行って税収増を支援できるかであり、自治体数の市場シェアはさほど大きな意味を持たないと弊社では考えている。
そのため、同業他社の存在は、ふるさと納税制度の普及拡大につながり同社も間接的に恩恵を受け得るという意味で、競合関係ではなく協業関係と言えるだろう。
(2) 自治体クラウドサービス事業
自治体向けのクラウドサービスは、自治体のホームページ作成やアプリ作成を行うサービスだ。
ホームページ作成自体は従来から行っていたが、2017年4月に『わが街アプリ』を開始したのを機に、自治体クラウドサービス事業として再編成した。
『わが街アプリ』はスマートフォンでの利用を前提に、子育て、防災、観光、ゴミ出しなどの領域に関して地域住民の生活支援を図る、自治体公式アプリの作成・運営を支援するサービスだ。
保育園の空き情報の検索・通知や、電子母子手帳などが具体的な例として挙げられる。
『わが街アプリ』の収益モデルは『わが街事典』と同じく広告収入モデルだ。
“三方よし”を、IT技術を活用することで実現しながら収益につなげる構造だ。
現状は、事業の立ち上げ期ということもあって広告を掲載していない。
自治体数がある程度積み上がって事業が軌道に乗ったタイミングで、収益化に移行するものと弊社ではみている。
その契約自治体数は、2018年3月期に8増加し、累計では13自治体に達した。
同社は期中にもっと多い契約数を想定していたが、それには及ばなかった。
しかしながら、自治体にとっては費用をかけずに利用できることや、市民生活における利便性が高いことなどの理由から、今後契約自治体数は着実に積み上がっていくものと弊社ではみている。
弊社では『わが街アプリ』等の自治体クラウドサービスは成長ポテンシャルが高いと考えている。
特に『わが街アプリ』は、スマートフォンアプリであるためジャンルを問わずニーズや有用性の高いものを自由に制作できる。
いざ制作された場合には市民の活用度は高くなると想定される。
活用度が高いということは広告価値の上昇、ひいては同社の収益拡大にもつながっていくと弊社では期待している。
(3) 旅行事業の成長戦略
同社は連結子会社の(株)サイネックス・ネットワークを通じて旅行事業を展開している。
『わが街トラベル』のポータルサイトを通じて、地方の隠れた魅力を体験できる特色ある旅行商品を提供している。
そうしたなか、サイネックス・ネットワークはインバウンド需要のみならず、アウトバウンド需要も取り込むべく、2018年2月に第1種旅行業者登録を取得した。
第1種旅行業登録をすると、国内・海外の募集型企画旅行、受注型企画旅行、手配旅行、他社募集型企画旅行代売など、すべての旅行契約を取り扱うことが可能となる。
同社はインバウンド客の取り込みに当たっては、海外に支店を置くのではなく、インターネットを活用して集客を行う計画だ。
また、インバウンド客の地方への送客や体験型旅行の企画を強化し、地方の観光振興や地域経済の活性化への貢献を狙っている。
同社はこれまでも全国47都道府県の旅行販売を行ってきた上、各地の特産品の取り扱いも行っている。
また、各営業所がそれぞれの地域の魅力を熟知している。
こうした既存の事業やインフラをフルに活用すれば魅力ある商品開発という形でシナジー効果を得て、収益貢献に寄与できるものと弊社では考えている。
また、収益拡大のタイミングの点でも、想像以上に早くなる可能性もあると弊社では考えている。
2020年の東京オリンピックは言うまでもないが、2019年にはラグビーのワールドカップが日本で開催されるためだ。
同社としてもこれを見逃すはずはなく、結果的にインバウンド関連事業が早期に収益化する可能性があると弊社ではみている。
地域経済の領域での取り組みとして『わが街集客アプリ』とスーパーホテル誘致事業をスタート
4. 新たな取り組み
(1) 『わが街集客アプリ』事業
同社が2018年3月期から開始した『わが街集客アプリ』事業は地域経済の領域における事業者向けのサービスだ。
地域の店舗の集客力向上に貢献すべく同社がオリジナルアプリを開発する。
顧客情報や来店情報をただ集めるのみならず、数値化、データ化して最新情報やクーポンなどの効率的な提供を行ったり、リピート率の向上策につなげたりできる点に特長がある。
事業としてのポイントは、このサービスが有料である点だ。
現在は初期費用5万円、月間利用料2万円という料金設定でサービスを提供している。
言うまでもなくストック型収入モデルの事業であり、顧客数の積み上がりに伴い、同社の収益のベースを形成する存在になると期待される。
(2)スーパーホテル誘致事業
同社は2018年5月にホテル運営を手掛けるスーパーホテルとの間で、ビジネスマッチング業務に関する契約を締結した。
契約の具体的内容は、同社がホテル誘致を希望する自治体や地元企業を募り、スーパーホテルに紹介するというもので、同社はスーパーホテルから仲介料を受領するという収益モデルだ。
合意に達すれば、スーパーホテルはホテルの建設を指導し、オーナーから当該建物を賃借してホテル運営を行うことになる。
同社は、案件によってはホテル建設に参画する可能性もあるとしている。
スーパーホテル誘致事業の収益は同社の不動産事業セグメントの属することになる。
2019年3月期の業績予想には織り込まれていないが、今後の推移を見守りたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)