[北京 26日 ロイター] - 中国政府は26日、欧州連合(EU)が導入計画を発表した世界初の国境炭素税(炭素国境調整メカニズム=CBAM)について、気候変動問題を貿易に絡めるのは、世界貿易機関(WTO)の原則に反しており、経済成長に悪影響を及ぼすとの認識を示した。
EUの欧州委員会は今月、鉄鋼など温室効果ガス排出量の多い輸入品に課税する国境炭素税を2026年から導入する計画を明らかにした。
中国生態環境省の報道官は会見で「CBAMは本質的に、気候変動問題を貿易セクターに拡張する一方的な措置だ。WTOの原理に反しており、国際社会の相互信頼と経済成長の見通しに深刻な悪影響を及ぼす」と述べた。
報道官は、各国の気候変動対策では経済発展の水準を考慮に入れる必要があると改めて表明。国境炭素税は、気候変動問題に対応する国家の意欲と能力に深刻な悪影響を及ぼすと指摘した。
清華大学の産業発展・環境ガバナンス研究センターは5月に公表した論文で、中国は鉄鋼やセメントなどの工業原材料の主要生産国であり、国境炭素税の導入で最も悪影響を受ける可能性があると分析。
ただ、長期的には悪影響が低下するとみられ、国境炭素税が中国の発展に長期的な悪影響を及ぼす証拠はないとの見解も示した。
中国では16日から温暖化ガスの排出量取引制度(ETS)の取引が始まったが、国泰君安期貨は、国境炭素税が導入されれば、EUの指標価格を基に取引価格が決まる可能性があると指摘した。
中国の平均価格は平均で1トン=51.7元(6.8ユーロ)と、EUの平均取引価格の約50ユーロを大きく下回っている。