世界の主要中銀による利下げ競争に一服感が広がっています。
米連邦準備理事会(FRB)は4会合ぶりに政策金利を据え置く公算。
ただ、これまでの成果を見極める狙いとみられ、2020年に向け緩和バイアスに変わりはなさそうです。
FRBは12月10-11日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)で、7月から3会合続いた政策金利の引き下げを見送る方針です。
実際、11月27日に発表された7-9月期国内総生産(GDP)は速報値から上方修正されたほか、感謝祭明けのブラックフライデーでのオンラインショッピングは過去最高の売上を記録。
前回10月会合に示された当面様子見の姿勢を、経済指標が後押ししています。
市場参加者の多くは、FRBが政策金利を2020年半ばまで据え置きとみているようです。
ただ、パウエル議長は「データ次第」と繰り返し強調しています。
議事要旨などでは当局者の見解の違いが鮮明ですが、2%を下回る水準でのインフレの伸び悩みを意識している点では一致しているように思えます。
緩和の方向性を残しながら、これまでの政策の成果を評価したうえで改めて検討するスタンスと理解できます。
NZ準備銀行もそれに追随した格好です。
同中銀は11月13日の定例会合で、市場の予想に反して政策金利の据え置きを決定。
6月と8月の利下げの効果を評価するとともに、必要に応じて状況をみながら対応を準備するとしています。
同じオセアニアの豪準備銀行は12月3日の会合後の声明で「必要であれば一段の金融緩和を行う用意がある」として、追加緩和に含みを残しています。
12月12日に予定される欧州中銀(ECB)理事会はラガルド総裁の就任後初の会合ですが、同総裁はそれに先立つ欧州議会での証言で、緩和姿勢に「変わりはない」と言明しました。
ECBでは9月17日の理事会でドラギ前総裁のもと、政策金利の引き下げと資産買入れ再開、フォワードガイダンス変更が打ち出されました。
12月は現状維持とみられるものの、ハト派メンバーの加入で緩和方針は続くでしょう。
ECB理事会と同じ日に総選挙が行われるイギリスでは、選挙後にカーニー英中央銀行総裁の後任人事に着手する構えです。
足元では製造業や建設業などの購買担当者景気指数(PMI)が経済活動の拡大、縮小の節目である50を下回り、減速傾向が鮮明です。
金融政策委員会(MPC)では利下げの意見が出始めました。
「合意なきEU離脱」の混迷脱却が期待されるなか、年明け以降、景気てこ入れの政策が求められそうです。
緩和の流れを止められるのは、やはり米中貿易協議における来年1月の部分合意でしょう。
ただ、香港やウイグルの人権をめぐるアメリカの中国への圧力が両国関係に微妙な影を落としており、トランプ米大統領はここへきて合意を急がない考えを示すなど先が読めなくなりました。
トランプ氏一流のブラフなのかどうか見方は分かれますが、主要中銀は政策評価とともに、政治情勢も見極めなければなりません。
(吉池 威)※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。