[東京 28日 ロイター] - 日銀は28日公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で、2022年度の消費者物価指数(CPI)見通しを前年度比プラス2.9%とし、前回7月時点のプラス2.3%から引き上げた。輸入物価の上昇を起点に値上げが広がっていることを反映した。物価見通しに対するリスクバランスも「上振れリスクが大きい」と明確化した。
物価見通しについて、前回は「当面は上振れリスクの方が大きいが、その後はおおむね上下にバランスしている」としていた。
生鮮食品を除くコアCPIの前年度比上昇率の見通しは23年度と24年度がともに1.6%と、それぞれ前回予想から引き上げた。
生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIの見通しは22年度が1.8%、23年度1.6%、24年度が1.6%にそれぞれ引き上げた。
日銀はコアCPIの前年比について、今年末にかけてエネルギーや食料品、耐久材などの値上がりによって上昇率を高めた後、プラス幅を縮小していくと予想した。
<経済は下振れリスク>
一方、経済の見通しについては、下振れリスクが大きいとし、前回の「当面は下振れリスクの方が大きいが、その後はおおむね上下にバランスしている」から修正した。
経済・物価の見通しに対するリスク要因としては、海外の経済・物価動向、今後のウクライナ情勢、資源価格の動向などを挙げ、日本経済をめぐる不確実性は「きわめて高い」と指摘した。
特に、世界的にインフレ圧力が続く中、各国中銀が金融緩和の縮小、もしくは金融引き締めを実施する傾向が続くとみられ、インフレ抑制と経済成長の維持が両立できるか懸念されているという。海外経済の下振れリスクを念頭に置き「金融・為替市場の動向や、その我が国経済・物価への影響を十分注視する必要がある」と強調した。
<国内景気は「持ち直している」>
国内景気は、資源高の影響を受けつつも、新型コロナ感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで「持ち直している」とし、9月の見方を維持した。先行きは、見通し期間の中盤にかけて資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぎ、回復していくと予想した。
労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、22年度後半ごろにプラスに転じ、その後もプラス幅の緩やかな拡大が続くとみている。その中で、女性や高齢者による労働参加の増加ぺースの鈍化もあって労働需給の引き締まりが進み、「賃金の上昇圧力は次第に強まっていく」という。
(杉山健太郎 編集:石田仁志)