■今後の見通し3. CMの成長性について国内の2018年度における建設総需要は約70兆円で、このうち、CMの対象となるマーケットは民間、公共の新規建設投資及びリニューアル投資(住宅除く)にかかる部分で、合計約22.6兆円(重複するデータ分除く)となる。
このうち、CMの普及率がどの程度か正確な統計がないため不明だが、明豊ファシリティワークス (T:1717)の試算によれば約3兆円程度で全体に占める比率は約13%程度となり、2019年度はさらに上昇したものと推定される。
2016年度の水準が約10%だったので徐々に普及が進んでいることになる。
今後もCMの認知度向上により普及率は上昇傾向が続くものと予想され、全体の建設投資が後退局面に入ったとしても、普及率の上昇によりCM市場は安定成長が続く可能性が高いと弊社では見ている。
特に公共分野では、地方自治体が財政難と建設分野の技術者不足に苦しむなかで、コストの最適化とプロジェクト管理を行うCM事業者の活用がさらに増加していくものと予想される。
国交省の調べによるとCM方式を活用している地方自治体は、2017年時点で43自治体にしかすぎなかった。
2018年以降増加しているとはいえ、全国には1,700を超える自治体があり、普及率上昇による潜在需要は大きいと弊社では考えている。
同社でも公共分野を注力市場の1つと位置付けており、社内で管理する受注粗利益の構成比は2017年3月期の6%から2020年3月期は27%まで急上昇し、2021年3月期は30%を超える見通しとなっている。
CM業界における同社のシェアは約20%※1だが、公共分野では5割前後と高シェアを占めているものと推計される※2。
これは同社がCM業界のパイオニアとして、国交省が2014年度から取り組んでいる多様な入札方式のモデル事業に当初から参画し、多くの実績を積み重ねてきたことが大きい。
前述したように庁舎建替えのCM業務についてプロポーザル方式の案件については多くを受注しており、また、公共施設の老朽化対策にかかるCM業務についても受注が増え始めており、今後の成長が期待できる状況となってきている。
※1 日本コンストラクション・マネジメント協会が販売しているCM保険のシェアよる同社推計値。
※2 公共分野の建設投資は2.1兆円で、CMの普及率が全体と同水準の13%だったと仮定すれば、CMを利用したプロジェクトは約2,700億円となる。
同社の公共分野の総工費は1,000億円以上となっていること、公共分野のCM普及率は民間よりもまだ低い水準であることから、同社のシェアは5割前後と推計される。
なお、公共分野では現在、東北から九州まで幅広い自治体から受注し、2020年6月には沖縄県の琉球大学からのCM業務も受注した。
同社の事業拠点は東京と大阪しかなく、出張ベースでの対応となり生産性が低下する懸念があったが、2018年以降は、パソコンを使ったテレビ会議システムを同社が顧客へ提供し始めたことで、担当者が直接現地に赴く回数が減少するなど、距離というハードルが従来よりも大きく下がり、受注活動を行いやすい環境となってきたのも追い風となる。
無論、近距離の自治体から受注するほうが効率的ではあるが、今後も地方を含めて積極的に受注活動を展開していくことで、受注拡大が見込まれる。
リスク要因として、新規CM事業者の参入により、受注競争が激化するリスクがある。
実際、公共分野のプロポーザル方式の案件で落札できなかったケースは、評価項目の中で価格を重要視する案件であると言う。
ただ、CM業務で最も重要となる「サービス品質」や「顧客からの信頼」は一朝一夕で構築できるものではなく、今後もサービス品質の維持向上が続く限り、同社の優位性は揺るがないものと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)