■業績動向
富士ソフト (T:9749)の2021年12月期の連結業績は、売上高が前期比7.0%増の257,891百万円、営業利益が同5.4%増の16,838百万円、経常利益が同10.0%増の17,976百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同6.5%増の9,130百万円と6期連続で増収かつすべての利益段階で増益を実現した。
この実績を、2021年2月公表の期初会社計画(売上高249,000百万円、営業利益16,300百万円、経常利益16,900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益8,900百万円)と比較すると、売上高が103.6%、営業利益が103.3%、経常利益が106.4%、親会社株主に帰属する当期純利益が102.6%となり、すべての項目で6期連続での超過達成となった。
同社は、リーマン・ショック前のピーク売上高(2006年3月期)を2017年12月期に更新、ピーク売上高更新まで実に10年余り要したわけだが、その間にフロー利益の回復だけでなく、財務体質強化と成長ポテンシャル増強を両立したことは高く評価できる。
そして、コロナ禍においても財務健全性と積極投資のバランスは柔軟にコントロールされているように見える。
具体的には、自己資本比率が2006年3月期末47.3%→2017年12月期末59.9%、流動比率が同96.4%→同184.9%、純有利子負債(有利子負債-現金及び預金)が同21,295百万円→同6,204百万円のキャッシュ超過など、代表的な財務指標の健全化を実現しつつ、2015年12月期以降は新卒中心の大量採用を継続することで成長ポテンシャルを積み上げている。
人材面を見ると、連結従業員数は2006年3月期末の9,415人から2021年12月期末現在14,956人と1.6倍弱にまで拡大、単体ベースの認定技術者比率(同社制度に基づく認定スペシャリストと認定プロジェクトマネージャーの合計数が全従業員数に占める比率)も2014年12月期末22.8%→2021年12月期末32.3%と上昇しており、人的リソースが質・量ともに拡充されていることは明らかである。
こうした結果、2021年12月期にかけて5期連続で増収かつ2ケタ経常増益を達成、2021年12月期末の財務指標は自己資本比率が54.6%(前期末比3.9ポイント上昇)、流動比率が163.4%(同10.1ポイント上昇)、純有利子負債は11,523百万円のキャッシュ超過(前期末比17,864百万円減少、キャッシュ超過に転換)となっており、健全な財務体質を維持している。
ここで、財務指標と経営戦略の関係を見ると、大量採用と先行投資の拡大に踏み切った2015年12月期は、自己資本比率が60%台乗せを達成、流動比率が200%目前まで改善、純有利子負債は2016年12月期と2017年12月期にキャッシュ超過水準まで削減と、強固な財務体質を実現したタイミングであったことが読み取れる。
創業者を含む強いリーダーシップによる迅速な経営判断・実行力が同社の強みと言えるだろうが、躊躇せず「攻めの経営(先行投資の積極化)」に転じられたのも、業績低迷局面において「守りの経営(財務体質の強化)」を推進したからこそであり、事業環境の変化を的確に捉えた同社の冷静沈着な経営判断を高く評価したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
富士ソフト (T:9749)の2021年12月期の連結業績は、売上高が前期比7.0%増の257,891百万円、営業利益が同5.4%増の16,838百万円、経常利益が同10.0%増の17,976百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同6.5%増の9,130百万円と6期連続で増収かつすべての利益段階で増益を実現した。
この実績を、2021年2月公表の期初会社計画(売上高249,000百万円、営業利益16,300百万円、経常利益16,900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益8,900百万円)と比較すると、売上高が103.6%、営業利益が103.3%、経常利益が106.4%、親会社株主に帰属する当期純利益が102.6%となり、すべての項目で6期連続での超過達成となった。
同社は、リーマン・ショック前のピーク売上高(2006年3月期)を2017年12月期に更新、ピーク売上高更新まで実に10年余り要したわけだが、その間にフロー利益の回復だけでなく、財務体質強化と成長ポテンシャル増強を両立したことは高く評価できる。
そして、コロナ禍においても財務健全性と積極投資のバランスは柔軟にコントロールされているように見える。
具体的には、自己資本比率が2006年3月期末47.3%→2017年12月期末59.9%、流動比率が同96.4%→同184.9%、純有利子負債(有利子負債-現金及び預金)が同21,295百万円→同6,204百万円のキャッシュ超過など、代表的な財務指標の健全化を実現しつつ、2015年12月期以降は新卒中心の大量採用を継続することで成長ポテンシャルを積み上げている。
人材面を見ると、連結従業員数は2006年3月期末の9,415人から2021年12月期末現在14,956人と1.6倍弱にまで拡大、単体ベースの認定技術者比率(同社制度に基づく認定スペシャリストと認定プロジェクトマネージャーの合計数が全従業員数に占める比率)も2014年12月期末22.8%→2021年12月期末32.3%と上昇しており、人的リソースが質・量ともに拡充されていることは明らかである。
こうした結果、2021年12月期にかけて5期連続で増収かつ2ケタ経常増益を達成、2021年12月期末の財務指標は自己資本比率が54.6%(前期末比3.9ポイント上昇)、流動比率が163.4%(同10.1ポイント上昇)、純有利子負債は11,523百万円のキャッシュ超過(前期末比17,864百万円減少、キャッシュ超過に転換)となっており、健全な財務体質を維持している。
ここで、財務指標と経営戦略の関係を見ると、大量採用と先行投資の拡大に踏み切った2015年12月期は、自己資本比率が60%台乗せを達成、流動比率が200%目前まで改善、純有利子負債は2016年12月期と2017年12月期にキャッシュ超過水準まで削減と、強固な財務体質を実現したタイミングであったことが読み取れる。
創業者を含む強いリーダーシップによる迅速な経営判断・実行力が同社の強みと言えるだろうが、躊躇せず「攻めの経営(先行投資の積極化)」に転じられたのも、業績低迷局面において「守りの経営(財務体質の強化)」を推進したからこそであり、事業環境の変化を的確に捉えた同社の冷静沈着な経営判断を高く評価したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)