■今後の見通し2. 中期経営計画(1) 中期経営計画の概要エー・ディー・ワークス (T:3250)は2019年6月4日付で、第6次中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)を発表した。
「不動産ビジネスから富裕層ビジネスへ、そしてプレミアムビジネスへ」をテーマに、この3年間を「プレミアムバリューの醸成期」と位置付け、さらなる成長を目指して行く。
基本方針は、以下の3点となる。
a) 変化する環境下でも安定的に収益を生み出せる強靭な事業基盤への進化b) 新事業分野の開発・開拓と、既存事業との相乗効果の発揮c) 顧客体験価値の最大化を前提とする永続的な顧客基盤の構築また、最終年度となる2022年3月期の経営数値目標は、2019年3月期実績に対して売上高で20.7%増の30,000百万円、EBITDAで同5.3%減の2,200百万円、経常利益で同16.8%減の1,500百万円、税引前利益で同43.8%増の1,500百万円を計画している。
EBITDAと経常利益が減益となるが、前述したように2019年3月期は特別損失を計上したため、高収益物件の販売を行い利益水準が嵩上げされた格好となっているためで、特別損失の影響も含めた税引前利益が実質の成長率となる。
収益不動産残高については2019年3月期末比71.9%増の36,500百万円まで積み上げていく方針だ。
内訳を見ると、米国販売用については4,200百万円と前期末から7.2%減となっており、米国における収益不動産販売事業については横ばい水準を維持する計画になっていることがうかがえる。
一方、国内は短期/中期販売用で同65.4%増の24,300百万円、長期保有用で同297.4%増の8,000百万円とそれぞれ大幅な上積みを計画している。
前述したように、事業エリアの拡大と商品ポートフォリオの拡充を進めることで計画達成を目指す。
また、フィービジネス売上高は2019年3月期末比36.6%増の4,250百万円とし、うち賃料収入や管理収入等のストック型売上は同30.2%増の4,000百万円、売買サポート等のフロー型売上は同541.0%増の250百万円を計画している。
そのほか、事業基盤の安定化を図るため、ニュー・コアビジネスを育成していく方針で、同事業で2022年3月期に800百万円の売上総利益を目指している。
現在、見えているニュー・コアビジネスとしては米国での住宅取得資金貸付事業が挙げられる。
(2) 中期経営計画の事業方針a) 中期経営計画の目標同社は第2次から第5次に至る中期経営計画の遂行を通じて、事業環境の変化を先取りしながら、「価格相応以上の価値をもたらす唯一無二のプレミアム感」の提供という独創的な価値を生み出し、また、それによってプロダクト・アウト視点の不動産ビジネスから、マーケット・イン視点の富裕層ビジネスへと進化していくことで、業績面でも各期において着実に計画を達成してきた。
第6次中期経営計画では富裕層ビジネスから、さらにプレミアムビジネスへと発展させ、個人富裕層だけでなく機関投資家も含めて様々なプレミアムバリューを提供する、高次元のビジネスモデルの実現を目指している。
従来からの主要顧客である個人富裕層に対しては、収益不動産を起点とした一連のバリューチェーンの提供価値をさらに高めるだけでなく、不動以外の投資商品の開発や資産関連サービスの提供を進めていく。
また、機関投資家等の大口顧客向けには、大型物件も含めたオフィスビルや商業施設など多様な商品ラインナップにより販売機会を拡大していく。
また、これら商品については商品企画力次第で居住用不動産以上のポテンシャルが期待できると考えており、物件販売だけで完結しない活用価値の創造なども視野に入れ、独自のプレミアムバリューの構築に取り組んでいく考えだ。
b) 持株会社体制への移行同社は2020年4月1日付で持株会社体制に移行する準備を進めていく予定となっている。
プレミアムビジネスへの展開に当たっては不動産事業を主力としつつも、不動産周辺ビジネスや富裕層ビジネスを強化していく観点から、他の業種・業界も視野に入れて業務提携や資本提携、M&A等を行っていく必要があると考えており、機動的な意思決定を行える持株会社体制への移行が最適と判断した。
なお、今回新たに発行するノンコミットメント型ライツ・オファリングの実施により十分な資金が確保できなかった場合には、持株会社体制への移行時期や可否等について見直す可能性もあるとしている。
(3) 資金調達について中期経営計画の実現に向けた必要資金の調達を目的に、ノンコミットメント型ライツ・オファリング(行使価額ノンディスカウント型)による第22回新株予約権を7月11日に発行する。
新株予約権は7月10日付の株主に対して普通株式当たり1個の新株予約権が無償で割り当てられることになる。
行使価額は33円(7月1日の株価終値が33円未満の場合は当該株価に修正)で、行使期間は7月11日から8月23日までとなる。
全て行使された場合は約115億円を調達できることになるが、2017年に同様のスキームで実施したライツ・オファリングでは最終行使率44.7%だったため、今回も4割程度の行使率を想定している。
資金使途は、優良収益不動産の取得及びバリューアップ資金として38億円、フィジビリティスタディも兼ねた米国での住宅債権投資事業で2億円、事業ポートフォリオの戦略的重層化を図るための外部エンティティとの関係強化(業務提携、資本提携、M&A等)のための資金として5億円を充当する予定にしている。
収益不動産の取得に関しては、2019年10月から2020年3月までに米国販売用収益不動産で20.5億円、国内長期保有用不動産で60.0億円の取得を予定しているが、このうち38.0億円を今回のファイナンスで調達する資金で充当し、残りは銀行からの借入で調達する計画となっている。
また、米国での住宅債権投資事業は前述した通りエリアをロサンゼルス圏に限定しないことから、フィジビリティスタディが順調に進めば、さらに規模を拡大していくことが可能と見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)