[2日 ロイター] - 中国を訪問中の林芳正外相は2日、秦剛外相と会談し、アステラス製薬の社員が拘束されたことに抗議し、早期解放を強く求めたことを明らかにした。秦外相は、法律に基づき処理すると応じた。一方で両外相は、首脳レベルをはじめ韓国を含めた3カ国の協議の枠組みを再開することで一致した。
両外相が対面で向かい合うのは初。林氏は会談後、記者団に対し「邦人拘束について抗議し、早期の開放を含む日本の厳正な立場を強く申し入れた」とした上で、「中国において当面予見可能な公平なビジネス環境が確保されること、安全面とともに正当な経済活動が保証されることを強く求める」と伝えたことを明らかにした。
中国側の発表によると、秦外相は法律に基づいて対処すると強調した。
中国当局は先月、日本人男性をスパイ活動に関与した疑いがあるとして拘束。アステラス製薬の広報は、同社の社員だと明らかにしている。共同通信によると、中国では2015年以降、これ以外に少なくとも16人の日本人がスパイ活動の疑いで拘束されている。
日本の外相が訪中するのは3年3カ月ぶり。このあと中国共産党の最高指導部の1人、李強首相や、外交を統括する王毅政治局委員とも会談する。
林氏は外相会談の成果として、「地域の協力という観点から日中韓プロセスの重要性で一致」したことを挙げ、「首脳、外相レベルを含む日中韓プロセスを再稼働させていくことで一致した」と述べた。その上で林氏は「建設的かつ安定的な日中関係を構築するため、中国側との意思疎通に努めていく」と語った。
このほか林外相は、両国が領有権を主張する尖閣諸島(中国名:釣魚島)を含む東シナ海情勢、さらに中国がロシアと連携して日本周辺で軍事活動を活発化させていること、香港や新疆ウイグル自治区の人権問題に懸念を表明したことを明らかにした。
林外相は台湾海峡の平和と安定が重要との認識も改めて伝えたが、中国側の発表によると、秦外相は同国の「核心的利益の核心」だとして台湾問題に干渉しないよう警告した。
また、東京電力福島第1原発の処理水放出計画を巡り、「中国側による科学的根拠に基づいていない対外発信に強く抗議した」こと、半導体製造装置の輸出規制は「特定の国を対象にしたものでなく、国際ルールと整合的な形で厳格な輸出管理を行っている」と説明したことを明らかにした。
(竹本能文 編集:久保信博)
*中国政府の発表を追加しました。