〇米利上げ前提の攻防へ〇
イベントの多い来週に、さらに二つ加わった。
14日予定のメルケル訪米。
緊急的に行われる米独首脳会談の主題は何か、が注目されよう。
さらに17-18日のティラーソン国務長官の来日。
この後、韓国、中国に向かい、北朝鮮問題協議と伝えられる。
緊迫感が高まっており、北朝鮮に「最後通牒」を行うような事態になるのかが焦点になる。
13日頃とされた米予算教書は、FOMC後の16日頃にずれ込む観測となっているようだが、FRBはトランプ政権の景気刺激的予算を見込んで「3月利上げ」に動くと見られている。
3日、シカゴの講演で、イエレン議長は「雇用を巡る指標とインフレが力強さを維持すれば、今月会合で利上げを行う」との踏み込んだ発言を行った。
文言の主な点は、2月中旬の議会証言時とほとんど変わらないように見えるが、メディアや市場の受け止める方は3月に入って劇的に変化し、「9割の確率」。
2月と変わった点は、「海外のリスクが低減している」点と「かなりの不確実性」としていた米財政政策が明らかになりつつある点。
あくまで国内経済情勢での判断としてきたが、去年まで米利上げがズレ込んできたのは、欧州情勢や中国情勢が原因と暗に認めた格好。
トランプ氏が大統領選に勝利した11月頃の10年債利回りは1.7-1.8%水準。
足元は2.3-2.5%水準で動いているので、0.25%2回分は後追い利上げの受け止め方(昨年12月と今回分)。
微妙に0.7%程度の上昇で止まっているので、3回目の「次」が早くも焦点となろう。
さらに、その背後に二つの攻防点がある。
一つはFRBのバランスシート圧縮問題。
今は借り換え、借り換えでバランスシートは維持されているが、圧縮に動けば金融引き締め観が一気に強まるリスクがある(4兆ドル規模→1.5兆ドル規模に圧縮する議論が出ている)。
もう一つは、イエレン議長が2月に言及した金融規制維持の問題。
トランプ政権が緩和姿勢を強めれば、イエレン議長と軋轢が増え、来年任期を迎える議長の交代観測に直結する可能性がある。
債券相場が荒れる下地になると考えられる。
なお、利上げ前提条件の10日の米雇用統計を睨む攻防になるが、2日に発表された2月25日時点の新規失業保険申請件数は前週比1.9万件減の22.3万件。
実に1973年以来、44年ぶりの低水準となった。
過去には、30万件を切ると労働市場は力強いとされてきた。
現在、104週連続で下回っており、労働市場の逼迫感が強まる可能性がある。
トランプ大統領の「雇用」政策、不法移民問題に影響を及ぼす可能性も考えられる(2週続けての失業保険受給者数は206.6万人、減少ピッチが強まれば、現在4.8%の失業率も低下する)。
3日の米10年債利回りは2.4816%、ドル円は113-114円ゾーン。
利上げ観測が強まってもボックス圏内にとどまる。
この面から見れば、米利上げの影響は当面、限定的。
トランプ相場で膨らんだドル買いポジションの調整が上値を抑えてきたと考えられるが、イベント通過で4月(日本では新年度)以降のポジション再構築に動くかどうかが注目点になる。
欧州情勢もあるが、絞り込めばアジア情勢が中心。
北朝鮮攻防と全人代開催中の中国の動向となろう。
北朝鮮は米中ロによる信託統治案など、金正恩排除の思惑が交錯するが、事態は流動的で見極め材料。
余談だが、中国がTHAAD問題で対韓国に厳しい姿勢を連発しているのも、韓国が隙に乗じて勝手に動く(李承晩ラインが思い起こされる)ことを封じ込めようとしているのではないか、とも見られている。
中国情勢は、3日米国が輸入鉄鋼製品に制裁課税を発表したことで、まずは鉄鋼が焦点となる。
グリーンピースも米USTRも中国の鉄鋼生産能力は工場閉鎖でも16年は純増しているとの見方。
全人代で新たに5000万トンの能力削減を打ち出したが、実行力が問われる状況が続こう。
合わせて、3日に一ヵ月半ぶりに一時1ドル=6.90元を割り込んだ人民元相場を注視することになろう。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/3/6号)
イベントの多い来週に、さらに二つ加わった。
14日予定のメルケル訪米。
緊急的に行われる米独首脳会談の主題は何か、が注目されよう。
さらに17-18日のティラーソン国務長官の来日。
この後、韓国、中国に向かい、北朝鮮問題協議と伝えられる。
緊迫感が高まっており、北朝鮮に「最後通牒」を行うような事態になるのかが焦点になる。
13日頃とされた米予算教書は、FOMC後の16日頃にずれ込む観測となっているようだが、FRBはトランプ政権の景気刺激的予算を見込んで「3月利上げ」に動くと見られている。
3日、シカゴの講演で、イエレン議長は「雇用を巡る指標とインフレが力強さを維持すれば、今月会合で利上げを行う」との踏み込んだ発言を行った。
文言の主な点は、2月中旬の議会証言時とほとんど変わらないように見えるが、メディアや市場の受け止める方は3月に入って劇的に変化し、「9割の確率」。
2月と変わった点は、「海外のリスクが低減している」点と「かなりの不確実性」としていた米財政政策が明らかになりつつある点。
あくまで国内経済情勢での判断としてきたが、去年まで米利上げがズレ込んできたのは、欧州情勢や中国情勢が原因と暗に認めた格好。
トランプ氏が大統領選に勝利した11月頃の10年債利回りは1.7-1.8%水準。
足元は2.3-2.5%水準で動いているので、0.25%2回分は後追い利上げの受け止め方(昨年12月と今回分)。
微妙に0.7%程度の上昇で止まっているので、3回目の「次」が早くも焦点となろう。
さらに、その背後に二つの攻防点がある。
一つはFRBのバランスシート圧縮問題。
今は借り換え、借り換えでバランスシートは維持されているが、圧縮に動けば金融引き締め観が一気に強まるリスクがある(4兆ドル規模→1.5兆ドル規模に圧縮する議論が出ている)。
もう一つは、イエレン議長が2月に言及した金融規制維持の問題。
トランプ政権が緩和姿勢を強めれば、イエレン議長と軋轢が増え、来年任期を迎える議長の交代観測に直結する可能性がある。
債券相場が荒れる下地になると考えられる。
なお、利上げ前提条件の10日の米雇用統計を睨む攻防になるが、2日に発表された2月25日時点の新規失業保険申請件数は前週比1.9万件減の22.3万件。
実に1973年以来、44年ぶりの低水準となった。
過去には、30万件を切ると労働市場は力強いとされてきた。
現在、104週連続で下回っており、労働市場の逼迫感が強まる可能性がある。
トランプ大統領の「雇用」政策、不法移民問題に影響を及ぼす可能性も考えられる(2週続けての失業保険受給者数は206.6万人、減少ピッチが強まれば、現在4.8%の失業率も低下する)。
3日の米10年債利回りは2.4816%、ドル円は113-114円ゾーン。
利上げ観測が強まってもボックス圏内にとどまる。
この面から見れば、米利上げの影響は当面、限定的。
トランプ相場で膨らんだドル買いポジションの調整が上値を抑えてきたと考えられるが、イベント通過で4月(日本では新年度)以降のポジション再構築に動くかどうかが注目点になる。
欧州情勢もあるが、絞り込めばアジア情勢が中心。
北朝鮮攻防と全人代開催中の中国の動向となろう。
北朝鮮は米中ロによる信託統治案など、金正恩排除の思惑が交錯するが、事態は流動的で見極め材料。
余談だが、中国がTHAAD問題で対韓国に厳しい姿勢を連発しているのも、韓国が隙に乗じて勝手に動く(李承晩ラインが思い起こされる)ことを封じ込めようとしているのではないか、とも見られている。
中国情勢は、3日米国が輸入鉄鋼製品に制裁課税を発表したことで、まずは鉄鋼が焦点となる。
グリーンピースも米USTRも中国の鉄鋼生産能力は工場閉鎖でも16年は純増しているとの見方。
全人代で新たに5000万トンの能力削減を打ち出したが、実行力が問われる状況が続こう。
合わせて、3日に一ヵ月半ぶりに一時1ドル=6.90元を割り込んだ人民元相場を注視することになろう。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/3/6号)