■業績動向1. 成長の軌跡平和不動産リート投資法人 (T:8966)の決算期は5月と11月の年2回である。
2011年5月期までのステージ1「成長基盤の再構築」、2011年11月期−2013年5月期までのステージ2「再成長軌道への回帰」を経て、2013年11月期からはステージ3「安定成長軌道」の段階にあると定義付ける。
すなわち、現在は安定した資金調達による本格的な成長フェーズであり、着実な外部成長及び内部成長によって分配金向上を目指して、優良なオフィスとレジデンスの双方に厳選投資している。
この結果、2009年11月期の物件数46件、資産規模921億円、分配金734円/口から、2018年11月期には物件数101件、資産規模1,681億円、分配金2,350円/口へと大きな成長を遂げている。
2. 2018年11月期の業績概要2018年11月期(第34期)決算は、営業収益6,215百万円(前期比29.4%減)、営業利益2,942百万円(同44.5%減)、経常利益2,487百万円(同48.3%減)、当期純利益2,487百万円(同48.3%減)であった。
大幅な減収減益は、前期は広小路アクアプレイス(名古屋市中区)を、鑑定評価額を大幅に上回る価格で譲渡した結果、売却益が収益、利益を大きく押し上げたことの反動減である。
決算は、おおむね2018年11月27日発表の修正予想に沿った着地であった。
ただ、三田平和ビル(底地)の譲渡益の計上に加え、稼働率の上昇、賃料単価の増加、資金調達コストの低下など、同投資法人にとっての好環境が続いたことで、期初予想に比べると、営業収益は5.7%、また各段階の利益は15%前後の上振れとなった。
また、売却益等を除く実力ベースでは、1口当たり当期純利益は前期比63円増と好調であったことから、分配金を2,350円/口と同50円増とし、6期連続でスポンサー変更後の最高値を更新した。
なお、三田平和ビルの譲渡益は、一部を分配金に充当するが、残額は内部留保することで将来の分配金支払い等の原資として活用する方針である。
期中平均稼働率は97.89%と、過去最高水準に達した。
特にオフィスの稼働率は99.42%と高いが、テナント構成が比較的分散していることは、今後も安定稼働に寄与すると考えられる。
レジデンスの稼働率も96.99%で高水準を維持し、6月−11月の非繁忙期としては最高水準を記録した。
また、オフィス、レジデンスともに賃料の増額改定が進展し、NOI利回り(実質利回りとも言う、(年間賃料収入−諸経費)/(物件価格+諸費用)×100で計算)は5.34%と、5期連続でスポンサー変更後の最高値を更新した。
3. 財政状態2018年5月期の財政状態は、総資産183,199百万円(前期末比1.0%増)、純資産95,357百万円(同0.2%増)、有利子負債80,767百万円(同2.7%増)であった。
主要金融機関との良好な関係のもと、平均調達金利は16期連続して低下し0.861%になった。
今後も、比較的高い過去の借入金が満期を迎えることで、緩やかな調達コストの低下が予想される。
また、有利子負債の平均調達年数は6.84年であった。
長期借入金固定化比率を83.4%(2019年1月22日現在では95.7%)として、将来の金利上昇リスクに備えている。
さらに、鑑定LTV比率(期末の鑑定評価額(帳簿価額+含み損益)に対する有利子負債の割合)は42.0%と良好な水準を維持している。
同REITでは、同比率40~50%を標準水準として維持し、上限を65%に設定しているが、鑑定評価額の増加に伴って同比率の低下が続いており、借入余力が拡大したことで、より機動的な物件取得が可能になっている。
4. 活動実績(1) 外部成長平和不動産のパイプラインサポート等を活用し、「イトーピア日本橋SAビル」と「サザンスカイタワー八王子」を取得した。
一方、資産入替に伴って「三田平和ビル」(底地)を鑑定評価額より上回る価格で譲渡し、譲渡益を内部留保し、将来の分配金支払い等に活用する方針である。
こうした取り組みにより内部留保額及び含み益が拡大し、2018年11月期末には含み益303億円、含み益率18.7%となり、スポンサー変更後の最高水準を9期連続で更新している。
(2) 内部成長レジデンスの稼働率が、非繁忙期にもかかわらず6月−11月期としては過去最高水準を更新し、オフィスの稼働率も99%台半ばを記録するなど積極的なリーシング活動が実を結び、ポートフォリオ全体の期中平均稼働率は97.89%と過去最高水準を更新した。
また、稼働率の上昇に加えて、オフィス・レジデンスともに賃料の増額改定が進展したことで収益力が向上し、NOI利回りは5.34%とスポンサー変更後の最高値を更新した。
(3) 財務戦略内部留保の期末残高は44.9億円となり、前期末の43.9億円から拡大し、将来の分配金支払い原資等に活用する方針である。
良好な金融環境を背景に、平均調達金利は前期の0.863%から0.861%へと、過去最低水準を更新した。
また、平均調達年数は6.84年であった。
鑑定LTV比率は前期と同様42.0%であり、306億円の借入余力を維持している。
持続的な調達コストの低下や鑑定LTVの低位安定で、物件取得余力が増大している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)