[ワシントン 2日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は2日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、新型コロナウイルス感染が急速に拡大していることや、一部の企業や家計に打撃となっている景気後退(リセッション)に伴い、12地区中4地区で経済成長が「ほとんど、もしくは全く見られなかった」との認識を示した。
このうち、フィラデルフィア地区や中西部の大半の地域では「経済活動が11月初旬に減速を開始」。製造業など一部の業種は底堅さを示す一方、その他の業種は緊張が増している兆しがある。銀行の融資ポートフォリオが悪化しているほか、一部の企業は人材を見つけることに苦戦している。新たに解雇を発表した企業もある。
ジェフリーズのエコノミスト、トーマス・サイモン氏は「ベージュブックとしては久しぶりに見る非常に厄介な内容だ」と述べた。
これまでのところ融資の債務不履行は比較的少なく、今回のリセッションは新たな金融危機には発展していない。
しかし、ベージュブックでは「多数の地区における銀行の調査先が、小売・レジャー・接客業の商業用融資を中心に、融資ポートフォリオの悪化を報告した」と指摘。「2021年にはローン延滞率の上昇が幅広く予想される」とした。
また、大方の地区でオフィスや小売り店舗などの商業用不動産が不振となっている。ボストン地区連銀は「日中のオフィス占有率が約20%となっており、オフィス従業員に依存する店舗やレストランにとって厳しい状況」との報告があるとした。
同地区ではオフィスのテナントがリース更新期間を短期に限定しているほか、サブリースのスペースの空きも増えているという。
今回の報告は11月20日までに全12地区で入手された情報に基づいている。打撃が大きいレストランや接客業は引き続き、新型コロナの影響で対面サービスの需要低迷に直面する一方、製造業の管理担当は、モノの売り上げ増に伴う人材確保に苦戦している。
FRBは「これまで人を雇っていた企業は引き続き、人材の確保・維持に苦戦している」とした。新型コロナ感染の拡大により学校が再び閉鎖され、就業の可否に影響していると述べた。
例えばボストン地区では「域内の多くのホテル従業員の間で一時帰休の状態が続いた」ものの、その一方で「大半の製造業の調査先は人を雇っており、一部は人材確保に苦戦していると報告した」。ただ、産業によって回答はまちまちで、「民間航空産業のある供給業者は夏の間に大規模な解雇を発表し、その後もそうした計画を上方・下方改定する理由が見つかっていない」とした。
地区や業種によって好不調が分かれていることが今回の景気後退の特徴であり、FRBは12月15─16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加支援策を導入するかどうかの難しい判断を迫られる。
経済は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が始まった当初、大打撃を受け、現在も回復の途上だ。新型コロナワクチンが実用化される見込みから、来年は景気回復が加速する可能性がある。
こうした中、米国の雇用者数は2月と比べ1000万人も減少している。ここ数カ月は雇用創出のペースが鈍化しており、回復までの道のりは長い。
4日に発表される11月の雇用統計は、休暇シーズンを控え雇用者数の伸びが鈍化すると見込まれている。一部のアナリストは雇用者数が減ったと予想する。
新型コロナは今秋、再び拡大しており、週当たりの新規感染者は100万人を超えている。1日当たりの死者数は約1500人。一部の州や都市の当局は事業や集会に関して新たな制限措置を導入した。規制がない地域でも、感染から身を守るために個人が活動を抑えている。
フィラデルフィア地区では11月に、新型コロナ感染の急増によって経済活動の「下方傾向」がみられた。ミネアポリス地区は「軟調な」兆しがあると報告した。
セントルイス地区では調査期間の終盤にかけて景気が「悪化」。カンザスシティー地区では11月に小売りとレストラン、自動車、観光業の消費支出が低迷した。クリーブランド地区では約3分の1の調査先が、1年後の従業員数はパンデミック前の水準を下回るとの見方を示した。多くの企業は新型コロナを巡る先行き不透明感から新規採用に慎重であるという。
*内容を追加しました。