[フランクフルト 8日 ロイター] - 新型コロナウイルスワクチンの開発競争が加速し安全性への懸念が台頭する中、欧米の製薬会社9社は8日、開発中のワクチンの免疫効果を巡る科学的な基準を守るとする共同声明を発表した。
共同声明を発表したのは 米ファイザー (N:PFE)、英グラクソ・スミスクライン(GSK) (L:GSK)、英アストラゼネカ (L:AZN)、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J) (N:JNJ)、米メルク (N:MRK)、米モデルナ (O:MRNA)、米ノババックス (O:NVAX)、仏サノフィ (PA:SASY)、独ビオンテック (O:BNTX)。中国の企業や機関による共同声明の署名はなかった。
9社は声明で「新型ウイルスワクチンの世界的な承認に向け開発を進める中、われわれは科学的なプロセスの完全性を守る」と表明。規制当局のガイダンスに従う姿勢を示した。
米食品医薬品局(FDA)は8月、開発中の新型ウイルスワクチンについて、当局が恩恵がリスクを上回ると判断した場合、臨床試験(治験)の最終段階である第3相治験を必ずしも実施する必要はないとの見解を表明。これに対し世界保健機関(WHO)は警戒を呼び掛けている。
ワクチン開発に携わっている製薬会社は現時点では大規模治験の結果はまだ公表していない。ただ、ロシアが8月にワクチンを承認したほか、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック) (O:SVA)の尹衛東最高経営責任者(CEO)は今月、政府のワクチン緊急使用計画に基づき、同社が開発したワクチンを従業員とその家族に接種したと明らかにした。
ファイザーと提携してワクチンを開発するビオンテックのウグル・サヒン共同創業者兼最高経営責任者(CEO)は、「ワクチンが可能な限り早期に接種可能になることに向けた圧力と期待が存在しているが、開発に向けた手順が一部省略されるのではないかとの不安も出ている」とし、「われわれは安全性と効果を犠牲にしないと表明したかった」と述べた。
トランプ大統領は11月3日の米大統領選挙前にワクチン接種が可能になる可能性があると表明。これに対し民主党の副大統領候補、カマラ・ハリス上院議員は、トランプ氏の発言だけをあてにすることはしないと述べるなど、米国ではワクチン開発が政治化している。
今回の共同声明に参加しなかったドイツのワクチン開発Leukocareのマイケル・ショール最高経営責任者(CEO)は、「ロシアによるワクチン承認や、米国で見られている承認を急ぐ傾向は、著しいリスクをはらんでいる」と指摘。「充分に安全でないワクチンが承認され、ワクチン接種全般にマイナスの影響が及ぶことを最も恐れている」と述べた。