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アングル:途上国の社会不安、背景にコロナ禍の格差拡大

発行済 2021-08-02 19:42
更新済 2021-08-02 19:45
© Reuters. チュニジアから南アフリカ、コロンビアに至るまで、開発途上諸国で社会不安が広がっている。そこに反映されているのは、新型コロナウイルス禍の中で拡大した所得格差だ。写真はコロン

[ロンドン 28日 ロイター] - チュニジアから南アフリカ、コロンビアに至るまで、開発途上諸国で社会不安が広がっている。そこに反映されているのは、新型コロナウイルス禍の中で拡大した所得格差だ。

昨年初めにパンデミック(世界的な感染拡大)が始まって以来、先進諸国は大規模な財政・金融面での刺激策を打つことで自国経済と国民を守ってきたが、それほど富裕でない諸国にはそこまでの余力はなかった。

ここでは、開発途上諸国における社会不安の原因と結果の一部を詳しく見ていくことにしよう。

(1)増大する社会不安

2021年の世界平和度指数によれば、世界における暴動、ゼネスト、反政府抗議行動は、過去10年間で244%増加した。

シンクタンク「経済平和研究所」が作成する同指数は、各国が「どれくらい平和か」を基準として160以上の国・地域をランク付けしている。

それによると、世界の社会不安は増加しているだけでなく、その性質にも変化が見られる。対立の原因がパンデミックによる経済的打撃である事例が増えているのだ。

平和度指数を伝える最新のレポートの執筆者らは、「2020年には、ロックダウンと経済的な不確実性の増大が市民の不安増大をもたらした」と書いている。

「多くの国において経済条件が変化し、その結果、政治の動揺と暴力的なデモが発生する確率が上昇した」と研究者らは指摘。さらに、2020年1月から2021年4月にかけて、パンデミックに関連した暴力事件が5000件以上記録されていると述べている。

レポートは、この増加傾向は短期的にはほぼ変化しないと予想している。

(2)パンデミックの影響

中世の腺ペストから1918年のスペイン風邪パンデミックに至るまで、感染症の爆発的拡大は政治に影響を与え、社会秩序を破壊し、多くの場合は社会不安をもたらしてきた。

国際通貨基金(IMF)に所属する研究者らによれば、疫病は、すでに存在していた断絶を露わにし、悪化させる。深刻な疫病に頻繁に襲われてきた国では、平均的に見て大きな社会不安を経験してきているという。

IMFのエコノミストであるフィリップ・バレット氏によれば、社会不安が広がり始めても、初期段階ではパンデミックがそれを抑え込む可能性もあるという。そうした状況は、レバノンと米国という顕著な例外はあったが、昨年にも確認された。

だが、その後は社会不安のリスクが急上昇する。たとえば、政権を脅かす大きな危機は深刻な疫病の発生から2年以内に顕在化するというのが典型的なパターンだ。

ただでさえ経済が脆弱だったチュニジアが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)でさらに酷い打撃を受けたのが分かりやすい例だ。数カ月にわたる反政府抗議行動を受けて、カイス・サイード大統領が今月25日に首相を解任し議会を閉鎖したことで、チュニジアは2011年の革命以来、最大の政治危機を迎えている。

(3)きっかけと根本原因

通常、そうしたリスクが高まる前には、警戒すべき兆候が見られる。

食品・燃料への補助金が廃止されるなどの政策変更で生活コストが上昇、それが社会不安のリスクを高める、という例は珍しくない。リスクコンサルタント企業ベリスク・メープルクロフトのミハ・フリベルニク氏によれば、もう1つの要因としてよく見られるのが、司法の独立や、報道の自由、集会の自由といった前提が破壊されることだという。平和的な異議申立てを可能にする仕組みが失われてしまうからだ。

大人数のグループが政治的・宗教的な理由により非主流に追いやられている状況も、リスクの増大に拍車を掛ける。

その例は豊富に見られる。2019年にチリで発生した抗議行動のきっかけは、地下鉄料金のわずかな値上げをめぐる口論だったが、その底流では所得格差をめぐる根深い怒りがすでにくすぶっていたのである。

南アフリカでは、7月に始まった抗議行動で死亡者まで出ている。発端はジェイコブ・ズマ前大統領の逮捕だった。同時に、この抗議行動は、ロックダウン(都市封鎖)に伴う失業をめぐる対立がピークに達した現われである可能性が高い。

「抗議行動を爆発させた『火花』は、ことわざに言う『ラクダの背骨を折るのは最後に乗せた麦わら』であることが多く、予測することは不可能だ」とフリベルニク氏は言う。

(4)マクロ経済への影響

経済への影響は、社会不安の原因と各国固有の状況で決まる。政治や選挙に関連した抗議行動の場合、経済への影響は小さいことが多い。IMFの研究者によれば、2012年メキシコ大統領選挙でエンリケ・ペニャ・ニエト候補の勝利や2013年のチリ大統領選挙を受けて発生した抗議行動が国内総生産(GDP)に与えた影響は、6カ月後で0.2パーセンテージ・ポイントに留まったという。

だが、社会不安が社会経済的な懸念によって引き起こされた場合は、経済が急激に後退しかねないとIMFは考えており、2019年7月の香港における抗議行動、2018年のフランスにおける「黄色いベスト」運動を例に挙げる。

IMFでは、どちらの例もGDPを1パーセンテージ・ポイント引き下げたと試算している。

「社会経済的な要因、政治的な要因の組み合わせによって抗議行動が引き起こされた場合、今年前半のチュニジアやタイもこれに近いものがあるが、影響は最も大きくなる」とIMFのメトディジ・ハジ・バスコフ氏は言う。

体制が脆弱で政策の自由度が低いと、経済への影響も倍加する。つまり、パンデミック以前からファンダメンタルズが弱かった国は、不満の蓄積が社会不安へと転じた場合に最も大きな打撃を被ることになる。

(5)市場と政策策定に与える影響

IMFの試算によれば、抗議行動が株式市場に与える打撃は独裁主義的な国家の方が大きく、社会の混乱が生じてから3日以内に2%、その後1カ月で4%の株価下落が生じるという。

チュニジアのドル建て債は、最近の政治危機を受けて暴落している。南アでは抗議行動が国内を席巻した後、通貨ランドが下落した。南アの港湾における混乱は、広く他国にも影響を及ぼしている。

一部の国の政府は、国民への給付金を拡大することで抗議行動を沈静化する道を選んでいるが、そうなると財政赤字をどう手当てするかという問題に直面する。借入コストの上昇につながる可能性があり、たとえばコロンビアでは、税制改革の失敗と抗議行動を受けて、信用格付けが「投機的(ジャンク)」にまで引き下げられている。

資産運用大手アムンディで新興市場担当グローバルヘッドを務めるイェーラン・シズディコフ氏は、現行の政府が持ちこたえられるかどうかだけが問題となる場合もある、と指摘する。

「社会が一体感を失ってしまった国については、その政府がどのように局面を打開しようとしているのか、(略)あるいは、その政府にとって代わる別の政治勢力が登場して変革を遂行するのか、を私たちは理解しようと努めている」

(Karin Strohecker記者、翻訳:エァクレーレン)

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