[東京 2日 ロイター] - 日銀の鈴木人司審議委員は2日、兵庫県金融経済懇談会でのあいさつで、新型コロナウイルスの変異株流行もあって内外経済の不透明感が強く、当面は感染症の影響への対応が引き続き重要だとの認識を示した。来年3月まで延長したコロナ特別プログラムのもとで企業の資金繰りを支え、必要と判断すれば躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和を講じると語った。
鈴木委員は、感染症の影響で経済が大きく下押しされる中、各国で行われている大規模な財政政策は景気の底割れを防ぎ、成長軌道に戻していくために必要不可欠なものだと述べた。その上で、財源は将来にわたって確保していく必要があり、財政健全化を巡る今後の議論を注視していく必要があると語った。
鈴木委員は、政府・日銀による積極的な政策対応もあり企業倒産件数や失業率の上昇は限定的なものにとどまっているが、感染拡大前からあった非効率な事業の存続を可能にした面もあると述べた。経済構造の変革を進めていく重要性はより高まっており、金融政策策面からも、企業がより生産性の高い分野に資金や労働者を振り向けていく動きを支援していきたいと語った。
今後の金融政策運営については、感染収束後も2%の物価安定目標の実現に向けて、3月の点検を踏まえた「より効果的で持続的な金融緩和」を粘り強く続けていくことが想定されると述べた。今後もその時々における経済・物価情勢などを踏まえて効果と副作用の比較を行っていくが、その際、時間の経過とともに金融緩和の副作用が累積していくことに十分な注意を払っていくべきだと語った。
日本の景気については、国内外における感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、「基調としては持ち直している」と述べた。海外経済の回復や各種政策効果もあり、企業による収益から設備投資への前向きの循環は引き続き働いているとした。
(杉山健太郎、和田崇彦 編集:山川薫)
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