[上海 14日 ロイター] - 中国では新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策から解放された消費者らがホテルやレストラン、店舗に戻り始めた。しかし消費対象はじっくり選び抜く態度で、V字型回復への期待は裏切られている。
消費者を慎重にしているのは、不動産市場の低迷、雇用不安、そして公務員給与や年金、医療補助を抑制する政府の姿勢などだ。
アナリストによると、消費者の慎重姿勢は、内需てこ入れを掲げる政策当局者に景気刺激策の拡大を迫っている。しかし関係筋らは先月ロイターに、消費者に対する直接的な補助金が実施される可能性は小さいと語った。
追加的な支援策が実施されなければ、個人消費の回復はスピードが緩く、まだら模様になりそうだとアナリストらは予想している。
中国政府が昨年末にゼロコロナ政策を終了した時、中国の消費関連株は直ちに旺盛な消費が始まるとの期待から上昇した。
野村の首席中国エコノミスト、ティン・ルー氏は「『リベンジ』消費や待機需要の始動についての市場の強気観は行き過ぎかもしれないと、われわれは警鐘を鳴らしてきた」と言う。
中国の新築住宅価格は16カ月連続で下落し、ようやく1月に下げ止まった。
人材会社、智聯招聘が先月発表したホワイトカラー労働者対象の調査結果によると、今年失業する可能性を恐れていると答えた人の割合は47.3%に達した。
一方、資金が逼迫している地方政府は公務員給与をカットし、高齢者は生計費をぎりぎり賄える程度の年金で日々をしのいでいる。
昨年は新規家計貯蓄が17兆8000億元(2兆5900億ドル)と、2021年から7兆9000億ドル増えたため、政策支援が無くても待機需要によって消費は回復するとみるエコノミストもいる。
しかし先週のデータによると、1─2月の乗用車販売台数は前年同期比20%減少。輸入は予想以上のペースで減少し、2月の消費者物価指数の前年比上昇率は1年ぶりの低さとなった。
マッキンゼーのシニアパートナー、ダニエル・ジプサー氏は、大半の消費者はまだ様子見姿勢を続けており、次に潮目を見極める時期は5月の大型連休になると述べた。
1月の消費者信頼感は、昨年記録した過去最低値からは上向いたが、過去20年間の水準に比べると大幅に低いままだ。
北京や上海では、ピーク時間帯にレストランやカフェで空席を見つけるのは難しくなり、多くのホテルや旅行代理店は採用攻勢をかけている。
ただ業界団体の予想では、今年の国内観光収入は前年比95%増の約4兆元に達する見通しとはいえ、それでも2019年水準の71%程度だ。
電子商取引大手JDドットコム(京東商城)のシュー・レイ最高経営責任者(CEO)は9日の決算発表時、「消費者は以前より吟味して支出するようになっている」と述べた。
ゲストハウスのオーナーは「中国の観光客は今、超金持ちか超貧乏かの二つに一つ」になっており、「選ぶのは最高級ホテルか格安ホテルだ」と二極化の様相を語った。
キャピタル・エコノミクスのアナリスト、ジリアン・エバンスプリチャード氏は顧客向けノートで、昨年は株価と住宅価格の下落により家計資産が少なくとも過去20年間で初めて減少したため、消費者は財布のひもを引き締めていると分析。「従って経済再開直後の回復が終わった後、消費支出がさらに盛り上がると期待すべきではない」と述べた。
(Casey Hall記者、Sophie Yu記者)