[東京 22日 ロイター] - 国土交通省が22日に発表した今年1月1日時点の「地価公示」によると、全用途の全国平均は前年比1.6%上昇し2008年以来の伸び率となった。新型コロナウイルス感染症と経済活動の両立が進むもとで緩やかに景気が持ち直し都市部を中心に上昇が継続、地方でも上昇範囲が広がった。国交省は地価の「コロナ前への回復傾向が顕著になった」としている。
<低金利も支援、住宅地32年ぶり上昇率>
全国の全用途平均の地価は2年連続の上昇。住宅地、商業地も2年連続で上昇し、上昇幅も拡大した。
住宅地の全国平均は同1.4%上昇と、1991年以来の伸び。国交省によると、低金利環境が続いていることや住宅取得支援策などが支えとなっている。また、生活スタイルの変化で需要が多様化し、郊外にも地価の上昇範囲が拡大した。
商業地の平均は同1.8%上昇で、コロナの感染拡大が始まった20年以来の伸び。都市部を中心に店舗需要が回復傾向にあり、オフィスやマンション用地需要も堅調。国内からの客足や人出が戻りつつある観光地や繁華街では店舗などの需要が見られ、多くの地域で地価が回復傾向となった。
工業地の平均は同3.1%上昇し、こちらも91年以来の伸び。ネット販売拡大で交通利便性の良い大型物流施設用地への需要が強かった。沖縄県糸満市や千葉県市川市などの工業地では地価の上昇が続いた。
<地価の上昇、地方にも波及>
全国的にコロナ禍からの人流や景気の回復が進む中で、地方での地価上昇も目立った。
住宅地の全国上昇率のトップ10は全て北海道の3市で、いずれも隣接する札幌市への人口集中で住宅需要が広がった。このうち北広島市は、プロ野球日本ハムの新球場を核とする「北海道ボールパークFビレッジ」事業への期待感も上昇を後押しした。
東京、大阪、名古屋の3大都市圏は全用途平均で同2.1%上昇し20年以来、住宅地は1.7%上昇で08年以来、商業地は2.9%上昇で20年以来の上昇率となった。住宅地は3大都市圏全てで前年より伸びが拡大。商業地は前年横ばいだった大阪圏が2.3%上昇となったほか、東京圏や名古屋圏は伸び率を拡大した。
札幌市、仙台市、広島市、福岡市の地方4市の全用途平均は同8.5%上昇し、91年以来の上昇率。地方圏の「その他の地域」にも上昇が波及し、全用途平均・商業地は3年ぶり、住宅地は95年以来28年ぶりに上昇に転じた。
(和田崇彦 編集:田中志保)