*12:11JST ファンペップ Research Memo(11):抗体誘導ペプチドのパイプライン拡充と合わせて非医薬品事業の拡大を目指す
■今後の成長戦略
ファンペップ (TYO:4881)は今後も独自技術である抗体誘導ペプチドの優位性を生かして、抗体医薬品が既に発売されている「炎症領域」を中心に幅広い慢性疾患のなかから開発意義の高い疾患を対象に開発パイプラインを拡充する方針だ。
標的タンパク質は既に上市されている抗体医薬品と同じため、リード化合物を特定する時間が通常よりも大幅に短縮でき、また有効性や安全性についても既に抗体医薬品で確認されているため、開発リスクも小さい。
さらには、第1相臨床試験の結果で開発成功確率がある程度読めることもメリットと言える。
抗体誘導ペプチドの投与により、体内で抗体価がどの程度で上昇するか、また産生した抗体が標的タンパク質の動きをどの程度阻害する能力があるかを調べることで、薬効についてもある程度推測できるためだ。
このため「FPP003」の第1/2a臨床試験において抗体価が上昇し、一定期間維持できたことが確認された意義は大きい。
今後の事業戦略としては、既存パイプラインの開発を進めると同時に新規パイプラインを2年に1本のペースで追加する予定である。
ここ数年で抗体誘導ペプチドの開発ノウハウが蓄積されたことから、標的ごとの開発の難易度がある程度予見できるようになり、開発効率が向上してきたこと、直近6年間で3本の抗体誘導ペプチドを開発パイプラインに加えた実績などから見ても、十分に実現可能なペースと言える。
人材投資については、基礎研究分野の人材だけでなく、今後は開発パイプラインの増加に伴ってCMC※関連や薬事関連の専門知識を持つ人材の採用も進める方針だ。
※CMC(Chemistry, Manufacturing and Control)…Chemistryは化学、Manufacturingは製造、Controlはそれらの品質管理を意味する。
医薬品製造の承認を申請する際には非臨床試験から臨床試験さらに市販後に向けて、評価される製造物を定義付けることが求められる。
製造物の処方や規格及びそれらの評価方法や設定根拠、包材を含めた原材料の管理、原料や製造物の製造プロセスを検討し、製造物の品質評価を統合して行う概念。
一方で、2022年10月に子会社化したAAPにおいて医薬品以外の事業を育成していくことで、創薬に係る開発費の一部を賄う方針を打ち出している。
従来から機能性ペプチドの特性を生かした化粧品や除菌スプレー等が発売されており、同社がこれらメーカーに対して原薬を販売してきたが、AAPを子会社化したのを機に非医薬品事業についてはAAPが展開することになった。
2022年12月にASメディカルサポート及びN3と幹細胞化粧品の共同開発契約を締結したほか、2023年2月にサンルイ・インターナショナルとフェムテック化粧品の共同開発契約を締結し、現在共同開発を進めている段階にある。
原薬の販売となるため当該商品がヒットしたとしても売上規模は年間数千万円~数億円が現実的な水準と考えられるが、ヒット商品が生まれれば機能性ペプチドの関心度も高まり新たな商談につながる可能性もある。
現在、共同開発中の製品では2022年2月に共同開発契約を締結したサイエンスとの次世代創傷用洗浄器が期待される。
サイエンスのファインバブル技術を用いた創傷用洗浄器に同社の抗菌作用を持つ機能性ペプチドを組み合わせることで、洗浄力の高い新規創傷用洗浄器の開発を進めており、褥瘡等の皮膚潰瘍の治療への貢献を目指している。
幹細胞化粧品については、共同契約先で開発している幹細胞化粧品に、同社グループのヒアルロン酸産生増加用や幹細胞誘導作用を持つ機能性ペプチドを配合することで、皮膚再生効果の高い化粧品の開発を進めている。
フェムテック化粧品では、同社グループの抗菌作用を持つ機能性ペプチドを配合した新規化粧品の開発を進めている。
APPでは今後も化粧品分野を中心に、抗菌作用やアンチエイジング機能などの特性を生かした機能性商品の開発を進める企業との提携を積極的に進めることで、同事業の拡大と収益化を目指す。
連結業績については、創薬事業において研究開発ステージが数年間は続きそうなことから、大型契約の締結がない限りは営業損失がしばらく続く見込みだ。
ただ、抗体誘導ペプチドの開発対象となる領域での抗体医薬品の世界市場規模は主要製品だけでも522億米ドルを超えており、中長期的な成長ポテンシャルは極めて大きい。
当面は「FPP003」の開発オプション契約を締結している住友ファーマの動向が注目される。
オプション契約から本契約への移行が決まれば、抗体誘導ペプチドに対する注目度も一気に上昇するはずだ。
第1/2a相臨床試験での薬効のデータが開示されないことや、2023年2月に速報結果を発表してから住友ファーマからのリアクションがないことからその効果を疑問視する向きもあるが、今後の開発方針を決定するには一定の期間が必要なことから、現時点で悲観的に見る必要はないと弊社では考えている。
なお、同社は今後も抗体誘導ペプチドの自社開発に注力する方針だが、将来的には抗体誘導ペプチドの創薬プラットフォーム技術である「STEP UP」を他社に提供して収益を獲得することも、選択肢の1つとして視野に入れている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
ファンペップ (TYO:4881)は今後も独自技術である抗体誘導ペプチドの優位性を生かして、抗体医薬品が既に発売されている「炎症領域」を中心に幅広い慢性疾患のなかから開発意義の高い疾患を対象に開発パイプラインを拡充する方針だ。
標的タンパク質は既に上市されている抗体医薬品と同じため、リード化合物を特定する時間が通常よりも大幅に短縮でき、また有効性や安全性についても既に抗体医薬品で確認されているため、開発リスクも小さい。
さらには、第1相臨床試験の結果で開発成功確率がある程度読めることもメリットと言える。
抗体誘導ペプチドの投与により、体内で抗体価がどの程度で上昇するか、また産生した抗体が標的タンパク質の動きをどの程度阻害する能力があるかを調べることで、薬効についてもある程度推測できるためだ。
このため「FPP003」の第1/2a臨床試験において抗体価が上昇し、一定期間維持できたことが確認された意義は大きい。
今後の事業戦略としては、既存パイプラインの開発を進めると同時に新規パイプラインを2年に1本のペースで追加する予定である。
ここ数年で抗体誘導ペプチドの開発ノウハウが蓄積されたことから、標的ごとの開発の難易度がある程度予見できるようになり、開発効率が向上してきたこと、直近6年間で3本の抗体誘導ペプチドを開発パイプラインに加えた実績などから見ても、十分に実現可能なペースと言える。
人材投資については、基礎研究分野の人材だけでなく、今後は開発パイプラインの増加に伴ってCMC※関連や薬事関連の専門知識を持つ人材の採用も進める方針だ。
※CMC(Chemistry, Manufacturing and Control)…Chemistryは化学、Manufacturingは製造、Controlはそれらの品質管理を意味する。
医薬品製造の承認を申請する際には非臨床試験から臨床試験さらに市販後に向けて、評価される製造物を定義付けることが求められる。
製造物の処方や規格及びそれらの評価方法や設定根拠、包材を含めた原材料の管理、原料や製造物の製造プロセスを検討し、製造物の品質評価を統合して行う概念。
一方で、2022年10月に子会社化したAAPにおいて医薬品以外の事業を育成していくことで、創薬に係る開発費の一部を賄う方針を打ち出している。
従来から機能性ペプチドの特性を生かした化粧品や除菌スプレー等が発売されており、同社がこれらメーカーに対して原薬を販売してきたが、AAPを子会社化したのを機に非医薬品事業についてはAAPが展開することになった。
2022年12月にASメディカルサポート及びN3と幹細胞化粧品の共同開発契約を締結したほか、2023年2月にサンルイ・インターナショナルとフェムテック化粧品の共同開発契約を締結し、現在共同開発を進めている段階にある。
原薬の販売となるため当該商品がヒットしたとしても売上規模は年間数千万円~数億円が現実的な水準と考えられるが、ヒット商品が生まれれば機能性ペプチドの関心度も高まり新たな商談につながる可能性もある。
現在、共同開発中の製品では2022年2月に共同開発契約を締結したサイエンスとの次世代創傷用洗浄器が期待される。
サイエンスのファインバブル技術を用いた創傷用洗浄器に同社の抗菌作用を持つ機能性ペプチドを組み合わせることで、洗浄力の高い新規創傷用洗浄器の開発を進めており、褥瘡等の皮膚潰瘍の治療への貢献を目指している。
幹細胞化粧品については、共同契約先で開発している幹細胞化粧品に、同社グループのヒアルロン酸産生増加用や幹細胞誘導作用を持つ機能性ペプチドを配合することで、皮膚再生効果の高い化粧品の開発を進めている。
フェムテック化粧品では、同社グループの抗菌作用を持つ機能性ペプチドを配合した新規化粧品の開発を進めている。
APPでは今後も化粧品分野を中心に、抗菌作用やアンチエイジング機能などの特性を生かした機能性商品の開発を進める企業との提携を積極的に進めることで、同事業の拡大と収益化を目指す。
連結業績については、創薬事業において研究開発ステージが数年間は続きそうなことから、大型契約の締結がない限りは営業損失がしばらく続く見込みだ。
ただ、抗体誘導ペプチドの開発対象となる領域での抗体医薬品の世界市場規模は主要製品だけでも522億米ドルを超えており、中長期的な成長ポテンシャルは極めて大きい。
当面は「FPP003」の開発オプション契約を締結している住友ファーマの動向が注目される。
オプション契約から本契約への移行が決まれば、抗体誘導ペプチドに対する注目度も一気に上昇するはずだ。
第1/2a相臨床試験での薬効のデータが開示されないことや、2023年2月に速報結果を発表してから住友ファーマからのリアクションがないことからその効果を疑問視する向きもあるが、今後の開発方針を決定するには一定の期間が必要なことから、現時点で悲観的に見る必要はないと弊社では考えている。
なお、同社は今後も抗体誘導ペプチドの自社開発に注力する方針だが、将来的には抗体誘導ペプチドの創薬プラットフォーム技術である「STEP UP」を他社に提供して収益を獲得することも、選択肢の1つとして視野に入れている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)