「インターネット」の登場時期と同様に、現在の「フィンテック」も未来の成長性の度合いが明確には見出しにくい状況となっている。
ただ、インターネットの市場は着実に成長し、ITバブル以降においても、株価が10倍~20倍に上昇する銘柄は相次いでいる。
ネット初期で成功した銘柄は結局そう多くはなかったが、成功を勝ち取った企業はその後さらに大きな業態のメガ企業へと成長した。
またITバブル崩壊後には市場は細分化され、その中で勝ち残った企業はユニークなサービスで成功を収めている。
フィンテック分野においても、今後企業の明暗は分かれながらも、確実に業績・株価が上昇する銘柄は多くなると考えられよう。
ITバブルの際がそうであったように、現時点でフィンテックの勝者を見つけることは難しいと考えられる。
ただ、パソコンやインターネットなどといったIT革命の状況から判断すると、以下のような指摘は行えるものとみられる。
◆利便性、低コスト、横への広がり
ITバブル以降の成功銘柄の共通点を見てみると、既存のサービスでは手が届いていなかったサービスを提供していることがあげられる。
そしてそのサービスの特徴は利用者の利便性を高め、コストを低減するものであること、さらに情報や商品が上から下へと流れてくるようなものから、消費者や利用者を巻き込んで、CtoCもしくはピア・トゥ・ピア(P2P)的な、横への広がりを見せていることだ。
そもそも、こうした特徴はIT革命の第1のフェーズから一貫したテーマでもある。
フィンテックにおいても、これら「利便性」「低コスト化」「横への広がり」といったキーワードが当てはまるような企業には注目しておくべきだろう。
◆経営資源の集中
また、ヤフーや楽天に見られるように、フィンテック事業に経営資源を集中している銘柄が注目される。
とりわけ、フィンテックのスタートアップ企業が有望であり、今後のフィンテック関連企業のIPOには関心が高まっていく可能性は高い。
また、現在上場しているフィンテック関連銘柄では、事業の選択と集中を進めて、フィンテック分野を強化していくような銘柄が注目される。
事業ノウハウなどを獲得するために海外企業のM&Aなどを積極化していく銘柄なども期待できると考える。
◆先行者メリット
さらに、パソコンのIBMやアップル、国内インターネット検索のヤフーなど先行者メリットは大きく意識されるところである。
現在は未上場のものが多いが、フィンテック各分野における現在の中心企業などはストレートに期待が持てるところであろう。
とりわけ、米国市場などをみても、融資分野の離陸がまずは想定されるため、関連企業の動向は注目されるところだ。
また、フィンテックでは、既存事業の応用にとどまらない分野として、ビットコイン、ブロックチェーンが挙げられ、この分野におけるリード役企業も期待は大きいと見られる。
◆確かなリーダーシップ
さらに、パソコン創成期のコモドールの凋落に見られるように、また、最近のクックパッドの株価下落に見られるように、企業のマネジメント体制次第では、トップランナーが急減速することもあり得る。
産業革命とされる分野での競争には、確かなリーダーシップが必要であるとも言えよう。
(佐藤勝己/フィスコ株式チーフアナリスト)
※本稿は実業之日本社より刊行されているムック「Jマネー FISCO 株・企業報 2016年秋冬号」の記事からの抜粋(一部修正)です。
当該書籍にはフィスコが選ぶフィンテック関連注目銘柄46社が紹介されています。