■今後の見通し
1. 2017年5月期の業績見通し
インテリックス (T:8940)の2017年5月期の連結業績は売上高が前期比16.4%増の45,351百万円、営業利益が同4.3%減の1,683百万円、経常利益が同21.8%減の1,150百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同18.7%減の795百万円と期初計画を据え置いている。
上期は計画をやや下回ったものの、下期はリノヴェックスマンション事業において、地方店で一段の販売増が見込まれるほか、アセットシェアリングの販売を計画していること、その他不動産物件の販売増により計画の達成を目指していく。
ただ、首都圏でのリノヴェックスマンション販売が、仕入物件の減少により下期も低迷が予想されることから、売上高は若干下振れする可能性が高いと見られる。
利益面ではアセットシェアリング物件やその他不動産物件の販売状況がカギを握ると見られる。
販管費は地方店の増床移転や人員増強により、前期比15.4%増を想定している。
また、営業外収支の悪化を見込んでいるが、これは前期に計上した違約金収入や補助金収入など一時的な収益が減少することが主因となっている。
2. 主要事業の見通し
(1) リノヴェックスマンション事業
主力のリノヴェックスマンションは販売件数が前期比19.9%増の1,670件、売上高が同16.0%増の37,856百万円、平均販売価格は同3.2%減の22.6百万円を見込んでいる。
下期も地方店での販売増がけん引役となる。
粗利益率は前期とほぼ同水準となる12.2%を見込んでいる。
ただ、首都圏の販売低迷により販売件数や粗利益率は、会社計画をやや下回るものと弊社では見ている。
2013年以降、同社は地方展開を積極的に進めており、中期目標として月間仕入件数で首都圏100件、地方店100件を掲げている。
上期実績としては、首都圏61件に対して地方店は54件であった。
首都圏については、参入企業の増加に加えて中古マンション市況の先行きについて不透明感が出ていることもあり、当面は仕入件数を増やすことよりも収益性を重視していく方針となっている。
販売件数は落ち込むものの、同業他社や個人からのリノベーション内装請負を伸ばしていくことでマイナスの影響を最小限に食い止めていく考えだ。
一方、地方店については今後も人員増員による営業体制の強化並びに、施工協力会社のネットワークを拡充していくことで、仕入件数の更なる拡大を目指していく。
(2) アセットシェアリング事業
アセットシェアリング事業は期初段階で3件、2,500百万円の販売を計画していた。
このうち、「アセットシェアリング横濱元町」については、2016年10月より販売を開始、2017年1月時点で9割が販売済みで、第3四半期中にも完売が見込まれており、売上高は10.5億円となる。
また、横浜関内にある中古の商業ビル物件の販売を2017年に計画している。
2016年にリノベーションを完了し、現在はテナントが入居し、賃貸状況を確認している段階であり、今後販売を開始する予定だ。
NOIで5%を超えそうなことから、早期の完売が予想される(「アセットシェアリング横濱元町」はNOIで3.6%)。
一方、博多の中古マンション物件については、当初予定していたワンルームマンションからシェアハウス&ホテルに形態を変更したため、着工開始の先送りにより販売開始は2018年5月期にずれ込む見通しとなった。
ワンルームマンション100室分のうち約7割をホテル部分に充てる予定にしている。
このため、アセットシェアリング事業は通期計画を下回る可能性があるが、同社では2月よりアセットシェアリングの認知度向上を目的としたテレビCMを放映する予定にしている。
その反響次第では、短期間で販売開始が可能な手持ちの中古不動産物件をアセットシェアリング物件として販売する可能性がある。
その他のプロジェクトとしては、東京の北千住でビジネスホテルの建設を開始しており、2018年春のオープン予定となっている。
6階建てで収容能力は100室程度のホテルとなり、2018年5月期の業績に寄与する見通しとなっている。
同社では、今後も新築から中古物件、レジデンスやホテル、商業施設など様々な物件を手掛けていくことで、同事業を一段と拡大していく方針だ。
アセットシェアリングは購入者層が相続税対策を考えている富裕層が中心のため景気変動の影響を受けにくく、利便性の高い商品となっていることから、認知度の向上が進めば5年内に100億円規模の事業に成長する可能性もあると同社では見ている。
(3) リノベーション内装事業
その他収入に含まれるリノベーション内装事業の売上高は、前期比約30%増の1,200百万円を見込んでいる。
首都圏でのリノヴェックスマンションの販売件数が競争激化により減少する一方で、同業他社からの内装工事の依頼は増加傾向にある。
マンションの内装工事を、高品質かつアフター保証サービス付きで行っている施工業者が少ないためだ。
このため、今後もリノベーションマンション市場の拡大に伴い、同事業は成長することが予想される。
同社では職人不足が深刻化するリノベーションマンション業界において、将来的には自社で施工能力を持つことが差別化のための重要なポイントになると考えている。
このため、社内で現在10人程度いる施工チームを拡充していく方針だ。
特に、複数の専門技術(大工、水道・電気工事等)をこなすマルチリノベーター(多能工)の育成を進めている。
戸別のリノベーション内装施工という特性上、マルチリノベーターのほうが生産性も格段に高くなるためだ。
研修プログラム「リノベーションカレッジ」を2017年春から新規開校し、新卒及び中途社員の養成機関とするほか、社外からの一般募集も開始する。
同カレッジでは基礎コースとして3ヶ月の講義&実習プログラムを行い、その後、協力会社などで現場研修を行う。
社内、社外研修含めて数年かけて一人前のマルチリノベーターを育成していくことになる。
同社では、施工チームの規模が大きくなれば、他社物件や個人からのリノベーション内装の受注をさらに拡大していく考えで、将来的には仕入から設計、施工、販売、アフターサービスまでワンストップで提供するリノベーションマンション業界のゼネコンを目指していく。
(4) 戸建リノベーション再販事業への参入
同社は、2017年5月期より戸建リノベーション再販事業にも新たに参入した。
中古マンション市場におけるリノベーションの業界パイオニアとして培ってきたノウハウと実績に加えて、地方への営業展開により、仕入ネットワークが構築されてきたこと、戸建市場におけるインスペクション(建物検査)、瑕疵保険等の整備が進むなど、新規参入するに当たっての環境が整ったことが背景にある。
2016年8月より仕入活動をスタートし、12月までに首都圏を中心に11~12件の戸建物件を仕入れ、今後、リノベーションを行い販売していく予定となっている。
ただ、当面は手探り状態で体制作りを徐々に固めていく方針とし、業績予想には織り込んでいない。
マンションと戸建ではリノベーションの内容も大きく異なるためだ。
マンションの場合は、屋内での内装施工だけのため、施工マニュアルの標準化がある程度可能で、工期やコストも見積りやすいが、戸建の場合は外装工事が加わるため天候等にも影響され、工期やコストが見積もりにくくなる。
こうしたことから、同社では戸建リノベーション事業については慎重に進めていく方針となっている。
戸建の中古販売市場については正確な統計がないものの、年間販売戸数は中古マンションとほぼ同水準で約6万戸と見られており、同社にとって開拓余地は大きい。
戸建再販市場の最大手は(株)カチタスで年間3,000戸弱の戸建販売を行っている。
ただ、それでも全国シェアでは5%程度であり、大半は各地域の不動産会社が地元の工務店を使って再販している。
同社では戸建リノベーション業界においても、リノヴェックスマンションで培ってきたノウハウを生かすことで市場を開拓していく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
1. 2017年5月期の業績見通し
インテリックス (T:8940)の2017年5月期の連結業績は売上高が前期比16.4%増の45,351百万円、営業利益が同4.3%減の1,683百万円、経常利益が同21.8%減の1,150百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同18.7%減の795百万円と期初計画を据え置いている。
上期は計画をやや下回ったものの、下期はリノヴェックスマンション事業において、地方店で一段の販売増が見込まれるほか、アセットシェアリングの販売を計画していること、その他不動産物件の販売増により計画の達成を目指していく。
ただ、首都圏でのリノヴェックスマンション販売が、仕入物件の減少により下期も低迷が予想されることから、売上高は若干下振れする可能性が高いと見られる。
利益面ではアセットシェアリング物件やその他不動産物件の販売状況がカギを握ると見られる。
販管費は地方店の増床移転や人員増強により、前期比15.4%増を想定している。
また、営業外収支の悪化を見込んでいるが、これは前期に計上した違約金収入や補助金収入など一時的な収益が減少することが主因となっている。
2. 主要事業の見通し
(1) リノヴェックスマンション事業
主力のリノヴェックスマンションは販売件数が前期比19.9%増の1,670件、売上高が同16.0%増の37,856百万円、平均販売価格は同3.2%減の22.6百万円を見込んでいる。
下期も地方店での販売増がけん引役となる。
粗利益率は前期とほぼ同水準となる12.2%を見込んでいる。
ただ、首都圏の販売低迷により販売件数や粗利益率は、会社計画をやや下回るものと弊社では見ている。
2013年以降、同社は地方展開を積極的に進めており、中期目標として月間仕入件数で首都圏100件、地方店100件を掲げている。
上期実績としては、首都圏61件に対して地方店は54件であった。
首都圏については、参入企業の増加に加えて中古マンション市況の先行きについて不透明感が出ていることもあり、当面は仕入件数を増やすことよりも収益性を重視していく方針となっている。
販売件数は落ち込むものの、同業他社や個人からのリノベーション内装請負を伸ばしていくことでマイナスの影響を最小限に食い止めていく考えだ。
一方、地方店については今後も人員増員による営業体制の強化並びに、施工協力会社のネットワークを拡充していくことで、仕入件数の更なる拡大を目指していく。
(2) アセットシェアリング事業
アセットシェアリング事業は期初段階で3件、2,500百万円の販売を計画していた。
このうち、「アセットシェアリング横濱元町」については、2016年10月より販売を開始、2017年1月時点で9割が販売済みで、第3四半期中にも完売が見込まれており、売上高は10.5億円となる。
また、横浜関内にある中古の商業ビル物件の販売を2017年に計画している。
2016年にリノベーションを完了し、現在はテナントが入居し、賃貸状況を確認している段階であり、今後販売を開始する予定だ。
NOIで5%を超えそうなことから、早期の完売が予想される(「アセットシェアリング横濱元町」はNOIで3.6%)。
一方、博多の中古マンション物件については、当初予定していたワンルームマンションからシェアハウス&ホテルに形態を変更したため、着工開始の先送りにより販売開始は2018年5月期にずれ込む見通しとなった。
ワンルームマンション100室分のうち約7割をホテル部分に充てる予定にしている。
このため、アセットシェアリング事業は通期計画を下回る可能性があるが、同社では2月よりアセットシェアリングの認知度向上を目的としたテレビCMを放映する予定にしている。
その反響次第では、短期間で販売開始が可能な手持ちの中古不動産物件をアセットシェアリング物件として販売する可能性がある。
その他のプロジェクトとしては、東京の北千住でビジネスホテルの建設を開始しており、2018年春のオープン予定となっている。
6階建てで収容能力は100室程度のホテルとなり、2018年5月期の業績に寄与する見通しとなっている。
同社では、今後も新築から中古物件、レジデンスやホテル、商業施設など様々な物件を手掛けていくことで、同事業を一段と拡大していく方針だ。
アセットシェアリングは購入者層が相続税対策を考えている富裕層が中心のため景気変動の影響を受けにくく、利便性の高い商品となっていることから、認知度の向上が進めば5年内に100億円規模の事業に成長する可能性もあると同社では見ている。
(3) リノベーション内装事業
その他収入に含まれるリノベーション内装事業の売上高は、前期比約30%増の1,200百万円を見込んでいる。
首都圏でのリノヴェックスマンションの販売件数が競争激化により減少する一方で、同業他社からの内装工事の依頼は増加傾向にある。
マンションの内装工事を、高品質かつアフター保証サービス付きで行っている施工業者が少ないためだ。
このため、今後もリノベーションマンション市場の拡大に伴い、同事業は成長することが予想される。
同社では職人不足が深刻化するリノベーションマンション業界において、将来的には自社で施工能力を持つことが差別化のための重要なポイントになると考えている。
このため、社内で現在10人程度いる施工チームを拡充していく方針だ。
特に、複数の専門技術(大工、水道・電気工事等)をこなすマルチリノベーター(多能工)の育成を進めている。
戸別のリノベーション内装施工という特性上、マルチリノベーターのほうが生産性も格段に高くなるためだ。
研修プログラム「リノベーションカレッジ」を2017年春から新規開校し、新卒及び中途社員の養成機関とするほか、社外からの一般募集も開始する。
同カレッジでは基礎コースとして3ヶ月の講義&実習プログラムを行い、その後、協力会社などで現場研修を行う。
社内、社外研修含めて数年かけて一人前のマルチリノベーターを育成していくことになる。
同社では、施工チームの規模が大きくなれば、他社物件や個人からのリノベーション内装の受注をさらに拡大していく考えで、将来的には仕入から設計、施工、販売、アフターサービスまでワンストップで提供するリノベーションマンション業界のゼネコンを目指していく。
(4) 戸建リノベーション再販事業への参入
同社は、2017年5月期より戸建リノベーション再販事業にも新たに参入した。
中古マンション市場におけるリノベーションの業界パイオニアとして培ってきたノウハウと実績に加えて、地方への営業展開により、仕入ネットワークが構築されてきたこと、戸建市場におけるインスペクション(建物検査)、瑕疵保険等の整備が進むなど、新規参入するに当たっての環境が整ったことが背景にある。
2016年8月より仕入活動をスタートし、12月までに首都圏を中心に11~12件の戸建物件を仕入れ、今後、リノベーションを行い販売していく予定となっている。
ただ、当面は手探り状態で体制作りを徐々に固めていく方針とし、業績予想には織り込んでいない。
マンションと戸建ではリノベーションの内容も大きく異なるためだ。
マンションの場合は、屋内での内装施工だけのため、施工マニュアルの標準化がある程度可能で、工期やコストも見積りやすいが、戸建の場合は外装工事が加わるため天候等にも影響され、工期やコストが見積もりにくくなる。
こうしたことから、同社では戸建リノベーション事業については慎重に進めていく方針となっている。
戸建の中古販売市場については正確な統計がないものの、年間販売戸数は中古マンションとほぼ同水準で約6万戸と見られており、同社にとって開拓余地は大きい。
戸建再販市場の最大手は(株)カチタスで年間3,000戸弱の戸建販売を行っている。
ただ、それでも全国シェアでは5%程度であり、大半は各地域の不動産会社が地元の工務店を使って再販している。
同社では戸建リノベーション業界においても、リノヴェックスマンションで培ってきたノウハウを生かすことで市場を開拓していく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)