■事業概要
1. 玩具事業を中心に4つの事業セグメント
ハピネット (T:7552)の主要事業は、玩具、映像音楽ソフト、ビデオゲーム(ハード、ソフト)、アミューズメント商品の卸売であるが、一部を自社で製造、企画、製作も行っている。
同社側ではこれらの商品・製品を「玩具」「映像音楽」「ビデオゲーム」「アミューズメント」の4つの事業セグメントに分けており、2017年3月期の事業別売上高は、玩具73,725百万円(売上高構成比42.4%)、映像音楽34,890百万円(同20.0%)、ビデオゲーム44,793百万円(同25.7%)、アミューズメント20,649百万円(同11.9%)であった。
以下は各事業の詳細内容である。
(1) 玩具事業
バンダイは言うに及ばず、タカラトミー (T:7867)、(株)セガトイズなどの多くの国内メーカーの商品を取り扱っており、中間流通業界では最大手(推定シェア30%強)である。
メーカー別の売上高構成比(2017年3月期)は、バンダイが51.0%、タカラトミーが9.6%、その他メーカーが37.0%となっているが、同社のオリジナル製品も2.4%を占めている。
売上総利益率は商品によってまちまちであるが、バンダイ商品と自社商品が比較的高い。
(2) 映像音楽事業
DVD・CDなどの映像・音楽作品を仕入れて販売する事業で、中間流通業界でのシェアは約14%と推定され、トップクラスである。
商品別の売上高構成比(2017年3月期)は、映像商品が76.6%(うち卸商品が63.8%、自社製品が12.8%)、音楽商品が23.4%となっている。
同事業では単に一般的な作品の流通だけでなく、自社での出資製作をする場合もあり、これらの自社製作作品は、劇場興行、DVD・ブルーレイ(パッケージ)、ネット配信等も行っている。
同事業は、自社製作や共同出資の作品がヒットすれば利益率が大きく向上するが、反対に損失を出す可能性もある。
将来の収益拡大のために、自社製作は続けていく方針である。
(3) ビデオゲーム事業
任天堂 (T:7974)、SIE((株)ソニー・インタラクティブ・エンタテインメント)、Xbox(日本マイクロソフト(株))に関するハード、ソフト等の卸売を行う事業。
2017年3月期の商品別の売上高構成比は、任天堂75.6%、SIEが22.1%、その他が2.3%となっている。
なお、任天堂の売上高比率が高くなっているのは、2013年7月に子会社化したトイズユニオン(株)(現(株)マックスゲームズ)の影響による。
市場シェアは、任天堂商材の取扱いは以前、業界第4位であったが、既述のトイズユニオンを子会社化したことで推定シェアが約25%となり業界2位となった。
ちなみに第1位の任天堂販売(株)のシェアは約55%となっているが、任天堂の販社であり、同社のように取扱商品が分散されていない。
また、Xboxについては国内で同社が国内総代理店、PlayStationについてはメーカーの直接販売を除いた玩具業界で同社が独占的な地位となる。
(4) アミューズメント事業
キッズカードやカプセル玩具を自社が設置した機械によって販売する事業。
以前は約8,600ヶ所の機械を全国に設置していたが、採算性の見直しによって一時期4,800ヶ所前後まで減らし、採算性の見直しも一巡し2014年3月期からは横ばいで推移している。
なお、同社の市場シェア(推定)は約60%で、残りはほとんどが中小業者となっている。
2. 特色と強み
同社は玩具や映像音楽ソフト、ビデオゲーム(ハード、ソフト)、アミューズメント商品の中間流通市場で高いシェアを誇る最大手クラスの企業であるが、その特色や強みは以下のような点に要約される。
(1) 豊富な仕入れ先と販売先
既述のように同社の仕入れ先は約700社、さらに販売先は約1,200社に上る。
同社がこれら企業の間に位置することで、メーカーと販売先へそれぞれの情報をフィードバックすることが可能になり、これが双方に対して新製品開発支援や販売支援につながっている。
このため、同社の存在は、メーカーと販売店の両サイドにとって欠かせないものとなっている。
数多くのメーカーや販売先との取引があるのは同社の強みである。
特に国内最大手の玩具メーカーであるバンダイと太いパイプを持っていることは、他社に比べて比較的高い利益率を得られるだけでなく、販売店側から見ても同社と取引することによって最大手メーカーであるバンダイ商品の動向などの情報を得られることになり、このメリットは大きいだろう。
これも同社の強みの1つである。
(2) 事業ポートフォリオ:安定した収益基盤
玩具やゲーム機器、さらに映像音楽作品などは、商品や作品によって当たりや外れが大きい。
そのため流通卸の企業でも特定の商品や特定メーカーの製品に偏っていると、収益が大きく伸びる場合もあるが、一方で落ち込むのも早く、経営基盤が大きく崩落するリスクもある。
この点、同社の取扱商品は既述のように玩具、映像音楽ソフト、ビデオゲーム(ハード、ソフト)、アミューズメント商品と分散している。
この結果、特定の商品の当たり外れによって収益が大きく崩れるリスクは同業他社に比べて少なく、収益基盤は安定していると言える。
この事実は、収益のブレが大きい玩具やゲーム業界において強みとなっており、後に述べるような今後の拡大戦略にもつながってくる。
(3) 最適流通システム
さらに同社の情報力を支えているのが、EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)、POS、Webなどを活用し、メーカーから小売店までを結んだ「最適流通システム」である。
その拠点となるのが国内3ヶ所にあるロジスティクスセンターで、これらの合計面積は68,778平方メートルに達する。
このような大規模、高効率の物流センターを有することで、リアルタイム・高精度の在庫管理と迅速かつ適切な出荷業務が可能となり、サプライチェーンマネジメントによる生産数量の適正化支援や流通在庫のスリム化など流通の合理化に寄与している。
なお、ロジスティクスセンターは、連結子会社(株)ハピネット・ロジスティクスサービスが運営している。
(4) 信用力、資金力
今後の国内エンタテインメント市場、特に玩具市場を中長期的な視点から考察すると、人口構成の点から残念ながら必ずしも成長市場とは言えず、むしろ縮小していく可能性が高いと考えられる。
そうなると、市場の寡占化が進み、M&Aなども頻繁に起こる可能性が考えられる。
そのような環境下で成長を続けるために必要なのは、経営力に加えて信用力、資金力である。
この点で同社はバンダイナムコグループの一員であること、上場企業であること、業界最大手であることなどから、同業他社に比べて信用力や資金力が高いと言える。
これも同社の強みである。
また玩具、映像音楽ソフトやゲームソフトなどの商品は「鮮度」が重要であり、長期間の在庫保有はリスクが高い。
その一方で少量在庫しか持たないと商機を逸することになり、市場動向を予測しながら常に適正な在庫を保有することが収益性を高めるポイントとなる。
このような適正在庫を保有するには、資金力が必要であり、この点も同社の強みと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
1. 玩具事業を中心に4つの事業セグメント
ハピネット (T:7552)の主要事業は、玩具、映像音楽ソフト、ビデオゲーム(ハード、ソフト)、アミューズメント商品の卸売であるが、一部を自社で製造、企画、製作も行っている。
同社側ではこれらの商品・製品を「玩具」「映像音楽」「ビデオゲーム」「アミューズメント」の4つの事業セグメントに分けており、2017年3月期の事業別売上高は、玩具73,725百万円(売上高構成比42.4%)、映像音楽34,890百万円(同20.0%)、ビデオゲーム44,793百万円(同25.7%)、アミューズメント20,649百万円(同11.9%)であった。
以下は各事業の詳細内容である。
(1) 玩具事業
バンダイは言うに及ばず、タカラトミー (T:7867)、(株)セガトイズなどの多くの国内メーカーの商品を取り扱っており、中間流通業界では最大手(推定シェア30%強)である。
メーカー別の売上高構成比(2017年3月期)は、バンダイが51.0%、タカラトミーが9.6%、その他メーカーが37.0%となっているが、同社のオリジナル製品も2.4%を占めている。
売上総利益率は商品によってまちまちであるが、バンダイ商品と自社商品が比較的高い。
(2) 映像音楽事業
DVD・CDなどの映像・音楽作品を仕入れて販売する事業で、中間流通業界でのシェアは約14%と推定され、トップクラスである。
商品別の売上高構成比(2017年3月期)は、映像商品が76.6%(うち卸商品が63.8%、自社製品が12.8%)、音楽商品が23.4%となっている。
同事業では単に一般的な作品の流通だけでなく、自社での出資製作をする場合もあり、これらの自社製作作品は、劇場興行、DVD・ブルーレイ(パッケージ)、ネット配信等も行っている。
同事業は、自社製作や共同出資の作品がヒットすれば利益率が大きく向上するが、反対に損失を出す可能性もある。
将来の収益拡大のために、自社製作は続けていく方針である。
(3) ビデオゲーム事業
任天堂 (T:7974)、SIE((株)ソニー・インタラクティブ・エンタテインメント)、Xbox(日本マイクロソフト(株))に関するハード、ソフト等の卸売を行う事業。
2017年3月期の商品別の売上高構成比は、任天堂75.6%、SIEが22.1%、その他が2.3%となっている。
なお、任天堂の売上高比率が高くなっているのは、2013年7月に子会社化したトイズユニオン(株)(現(株)マックスゲームズ)の影響による。
市場シェアは、任天堂商材の取扱いは以前、業界第4位であったが、既述のトイズユニオンを子会社化したことで推定シェアが約25%となり業界2位となった。
ちなみに第1位の任天堂販売(株)のシェアは約55%となっているが、任天堂の販社であり、同社のように取扱商品が分散されていない。
また、Xboxについては国内で同社が国内総代理店、PlayStationについてはメーカーの直接販売を除いた玩具業界で同社が独占的な地位となる。
(4) アミューズメント事業
キッズカードやカプセル玩具を自社が設置した機械によって販売する事業。
以前は約8,600ヶ所の機械を全国に設置していたが、採算性の見直しによって一時期4,800ヶ所前後まで減らし、採算性の見直しも一巡し2014年3月期からは横ばいで推移している。
なお、同社の市場シェア(推定)は約60%で、残りはほとんどが中小業者となっている。
2. 特色と強み
同社は玩具や映像音楽ソフト、ビデオゲーム(ハード、ソフト)、アミューズメント商品の中間流通市場で高いシェアを誇る最大手クラスの企業であるが、その特色や強みは以下のような点に要約される。
(1) 豊富な仕入れ先と販売先
既述のように同社の仕入れ先は約700社、さらに販売先は約1,200社に上る。
同社がこれら企業の間に位置することで、メーカーと販売先へそれぞれの情報をフィードバックすることが可能になり、これが双方に対して新製品開発支援や販売支援につながっている。
このため、同社の存在は、メーカーと販売店の両サイドにとって欠かせないものとなっている。
数多くのメーカーや販売先との取引があるのは同社の強みである。
特に国内最大手の玩具メーカーであるバンダイと太いパイプを持っていることは、他社に比べて比較的高い利益率を得られるだけでなく、販売店側から見ても同社と取引することによって最大手メーカーであるバンダイ商品の動向などの情報を得られることになり、このメリットは大きいだろう。
これも同社の強みの1つである。
(2) 事業ポートフォリオ:安定した収益基盤
玩具やゲーム機器、さらに映像音楽作品などは、商品や作品によって当たりや外れが大きい。
そのため流通卸の企業でも特定の商品や特定メーカーの製品に偏っていると、収益が大きく伸びる場合もあるが、一方で落ち込むのも早く、経営基盤が大きく崩落するリスクもある。
この点、同社の取扱商品は既述のように玩具、映像音楽ソフト、ビデオゲーム(ハード、ソフト)、アミューズメント商品と分散している。
この結果、特定の商品の当たり外れによって収益が大きく崩れるリスクは同業他社に比べて少なく、収益基盤は安定していると言える。
この事実は、収益のブレが大きい玩具やゲーム業界において強みとなっており、後に述べるような今後の拡大戦略にもつながってくる。
(3) 最適流通システム
さらに同社の情報力を支えているのが、EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)、POS、Webなどを活用し、メーカーから小売店までを結んだ「最適流通システム」である。
その拠点となるのが国内3ヶ所にあるロジスティクスセンターで、これらの合計面積は68,778平方メートルに達する。
このような大規模、高効率の物流センターを有することで、リアルタイム・高精度の在庫管理と迅速かつ適切な出荷業務が可能となり、サプライチェーンマネジメントによる生産数量の適正化支援や流通在庫のスリム化など流通の合理化に寄与している。
なお、ロジスティクスセンターは、連結子会社(株)ハピネット・ロジスティクスサービスが運営している。
(4) 信用力、資金力
今後の国内エンタテインメント市場、特に玩具市場を中長期的な視点から考察すると、人口構成の点から残念ながら必ずしも成長市場とは言えず、むしろ縮小していく可能性が高いと考えられる。
そうなると、市場の寡占化が進み、M&Aなども頻繁に起こる可能性が考えられる。
そのような環境下で成長を続けるために必要なのは、経営力に加えて信用力、資金力である。
この点で同社はバンダイナムコグループの一員であること、上場企業であること、業界最大手であることなどから、同業他社に比べて信用力や資金力が高いと言える。
これも同社の強みである。
また玩具、映像音楽ソフトやゲームソフトなどの商品は「鮮度」が重要であり、長期間の在庫保有はリスクが高い。
その一方で少量在庫しか持たないと商機を逸することになり、市場動向を予測しながら常に適正な在庫を保有することが収益性を高めるポイントとなる。
このような適正在庫を保有するには、資金力が必要であり、この点も同社の強みと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)