[シドニー 9日 ロイター] - 会計事務所KPMGとシドニー大学がまとめたリポートによると、中国によるオーストラリアへの海外直接投資(FDI)は2019年に50%超減少した。新型コロナウイルスの流行や、政府の投資審査を巡る否定的な認識が足かせとなって20年も減少は続く見通しという。
19年のFDI件数は43%減の42件、投資額は62%減の24億ドルだった。
シドニー大学の教授でリポートの著者、ハンス・ヘンドリスク氏は「19年のオーストラリアへの中国のFDIは、米国など他のいずれの西側諸国への投資よりも速いペースで落ち込んだ」と指摘した。
オーストラリアへの中国からの投資は民間企業が金額ベースで84%、件数ベースで76%を占める。
オーストラリア政府は5日、約50年ぶりとなる大幅な外国投資法の改定を発表した。審査の対象をこれまでの国有企業から民間企業にも拡大し、慎重に扱うべき資産に対する海外からの投資について国家安全保障の観点から厳しい審査を行う。
リポートは、海外からの投資に対する審査の厳格化は世界的に、中国に対する認識の悪化などに伴って見られてきたとし、こうした認識は「新型コロナのパンデミック(世界的大流行)を受けて一層悪化する可能性がある」と分析。「中国の投資家は、オーストラリアが中国からの投資を以前よりも歓迎しなくなったサインと受け止めている」と指摘した。
オーストラリアへの中国FDIでは食品・農業分野が44%と最大で、中国の乳製品大手、中国蒙牛乳業による15億豪ドル(10億5000万米ドル)での豪乳児用食品会社ベラミーズ・オーストラリア買収が主導した。
商業用不動産投資は43%を占めた。一方、鉱業セクターの投資件数は半減した。
KPMGオーストラリアのアジア・国際市場責任者でリポートの共同著者、ダグ・ファーガソン氏は「オーストラリアへの中国FDIは今後1年間も引き続き全般的に低迷する見込みだ」と述べた。