[ロンドン 2日 ロイター] - 市場では、新興国の発行体によるユーロ債の起債が今月急増するとの見方が広がっている。新型コロナウイルス危機の緩和や、11月に米大統領選を控えていることを背景に、年内の起債額は2500億ドルを超える見通しだ。
例年、9月はユーロ債の発行が増加する傾向にあるが、今年は投資適格級の発行体に加え、新興国の政府・企業による高利回り債の発行も増える可能性がある。
直近ではドバイが2日、2本建てで6年ぶりの起債を開始した。
ムーディーズのシニア・バイスプレジデント、ラーフル・ゴーシュ氏は「新興国は9月から10月にかけて引き続き大量のユーロ債を発行するだろう。新興国政府は、市場の正常化を利用して景気対策の財源を調達しているほか、借り換えを通じて調達コストの引き下げと年限の長期化を図っている」と指摘。
「投資適格級・投機的等級の双方で新興国のソブリン債発行が今後数週間で増えると予想している」と述べた。
新興国のユーロ債発行は上半期に3430億ドルに達しており、アナリストの間では、今年の発行額が記録的な高水準になるとの見方が多い。
政府や企業は、資金繰りの悪化を受けて、借り入れや借り換えを急いでおり、特に企業は短期の銀行融資の借り換えで高利回り債の発行を増やすとみられている。
低金利環境を背景に起債条件は改善している。ムーディーズによると、国債の利率は長期の加重平均を下回っており、投資適格債の平均年限は14年と、過去最長となっている。
シティは9月の起債額が例年以上になると予想。クウェート、インドネシア、カタール、オマーンなどが最大300億ドルの国債を発行。社債の発行額も610億ドルに達している。年内の発行額は国債が810億ドル、社債が1790億ドルになる見通しという。
11月3日の米大統領選を控えた世論調査が、今後の市場心理を大きく左右するとみられている。
シティのアナリストはリポートで「世論調査で接戦が予想されていることもあり、政府・企業は米選挙前の起債に力を入れるだろう」と指摘。「接戦になれば、市場の不安心理が高まるとみられる。リスクオフムードが広がれば、新興国の起債が難しくなる可能性が高い」と述べた。
シティによると、2016年は米大統領選を控えて10月に起債が相次ぎ、11月と12月は起債が低迷した。