[ボストン 5日 ロイター] - 一部の米国株投資家は米大統領選が行われる週の混乱を恐れていた。しかし資産運用担当者や関係者によると、実際には株式に投資する多くのヘッジファンドが投票終了後に年初来リターンが改善し、1日としては過去最高を記録した例すら出ている。
資産運用担当者や投資家の話では、運用担当者は3日の大統領選を控えて法人税や経済対策、規制を巡って先行き不透明感がくすぶる中、比較的慎重なポジションを組んでいた。
だが上院選は共和党が過半数を確保する公算が大きく、大統領選は集計が完了した段階で民主党候補のバイデン前副大統領が辛うじて勝利しそうな状況下、投資家は政策面の動きが止まるとの期待感に伴う株式相場上昇の恩恵を享受している。
スカイブリッジ・キャピタルのトロイ・ガヤスキ共同最高投資責任者は「市場は当初、選挙の紛糾に神経質になっていたが、現時点では数週間前に値下がりしていた一部のテクノロジー株が持ち直し、まるで書き換えられた未来に戻ったかのような気分だ」と語った。「市場では(民主党が大統領選を制して議会の上下両院で過半数を確保する事態に備えた)『ブルーウェーブ取引』の巻き戻しが起きている」という。
投資家の話では、多くのヘッジファンドは大統領選前の数週間、状況の大幅な悪化を避けるため、リスクを取るのを控えていた。
ワラタ・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、ジェイソン・ランドー氏は「何もしないで傍観するのはつらかったが、それが正しかったのだ」と述べた。
多くの株式ロング・ショート戦略のヘッジファンドは既に、年初来で1桁台後半もしくは2桁台前半のリターンを計上していた。4日にS&P総合500種指数が2.2%、ナスダック総合指数が3.9%それぞれ上昇したことを受け、これらのヘッジファンドは軒並みリターンを伸ばした。
事情に詳しい関係者によると、10月末までの年初来リターンはフィリップ・ラフォン氏が率いるコートゥー・マネジメントが38%、スコット・ファーガソン氏のセイチェム・ヘッド・キャピタル・マネジメントが17%、グレン・カチャー氏のライト・ストリート・キャピタルは52%、デービッド・フィゼル氏のハニーコウム・アセット・マネジメントは45%となっている。
各ファンドの担当者からのコメントは得られていない。
小型ハイテク株に投資するロバート・ロメロ氏のヘッジファンド、コネクティブ・キャピタルは4日に基準価格が4%上昇して今年最大の伸びを記録、年初来のリターンは約45%となった。
ロメロ氏はロイターに「本日は今年最高水準、実際には過去最高水準のリターンを確保できた」と述べた。
同じく小型株投資を手掛けるヘッジファンドのレーガン・インベストメンツは株式戦略ファンドの4日までの年初来リターンが10%になったと明らかにした。
トロントを拠点とするバンテージ・アセット・マネジメントの「バンテージ・パフォーマンス・ファンド」は4日に基準価格が0.6%上昇、年初来のリターンは7%となった。
大統領選は依然として集計中であり、バイデン氏がトランプ大統領よりも優勢となっている。だが多くの株式投資家が最も重視している当局者は、選挙で選ばれるわけではない。その当局者は米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長だ。パウエル氏は長期にわたって低金利を続ける方針を表明し、投資家を安心させている。
エバンストン・キャピタルのアダム・ブリッツ最高投資責任者は「当面は選挙を巡って雑音が鳴り続くだろうが、FRBは流動性を供給し続けるだろう」と指摘。「ヘッジファンドにとっては既に過去数年で最高の年となっている」と語った。
こうした状況は、重機メーカーや太陽光関連企業といった景気循環的なバリュー株の買いをも誘発している。これらの銘柄は大型経済対策の見通しに連動する形で株価が上下していた。
高い手数料と低調なリターンで長い間、非難を浴びてきたヘッジファンドにとっては、新型コロナ危機や経済危機によって市場が動揺し続ける今年の局面下、今が投資家の信頼を回復する絶好の機会だ。
アバディーン・スタンダード・インベストメンツのヘッジファンド部門を率いるダレン・ウォルフ氏は「ヘッジファンドは運用する上で分散とボラティリティが必要であり、ポートフォリオの分散化が欠かせない局面で、ついにそれらの条件を手に入れた」と話した。
(Svea Herbst-Bayliss記者、Maiya Keidan記者)