[東京 21日 ロイター] - 日銀が21日に発表した7―9月期の資金循環統計によると、9月末時点で家計が保有する金融資産残高は前年比2.7%増加の1901兆円となり、過去最高を更新した。新型コロナウイルス感染症への懸念が残る中、消費スタンスは抑制的で「現金・預金」が大きく積み上がった。企業の「現金・預金」も過去最高だった。
家計の金融資産の内訳では、「現金・預金」が前年比4.9%増の1034兆円。残高、伸び率ともに過去最高となった。「株式等」は前年比1.8%減の181兆円。前年比マイナスではあるものの、株価の持ち直しを受けて減少率は6月末の4.3%減から縮小した。「投資信託」は前年比1.6%増にプラス転換。株価の回復などが寄与したという。
企業の金融資産は前年比6.1%増の1215兆円。このうち「現金・預金」は同14.3%増の309兆円と過去最高。コロナ下での資金繰りの備えとして、予防的に現金・預金を積み上げておきたいという心理が表れている。金融機関からの借り入れや社債などの発行を増やして現預金を確保する動きが出たとみられている。
企業の金融資産のうち「対外直接投資」も同11.0%増の153兆円となり、過去最高となった。日銀の担当者は「企業部門では収益が相当落ち込んでいる割に、設備投資、研究開発投資、ソフトウエア投資などがそれほど落ち込んでいない。企業の投資スタンスそのものが大きく落ち込んでいる姿になっていないことが、対外直接投資にも見られたのでは」と指摘している。
日銀の国債保有は542兆円で、残高に占める比率は45.1%。残高、保有比率ともに過去最高。海外の保有額は152兆円で残高に占める比率は12.6%となった。
(杉山健太郎 編集:山川薫)