[シンガポール 24日 ロイター] - シンガポール貿易産業省は24日、2021年の成長率が約7%になるとの見通しを示した。従来予想は6─7%だった。ただ22年については業界間で回復がまちまちな状況が続くとし、3─5%への鈍化を見込んでいる。
同省のガブリエル・リム事務次官は「経済の各部門の回復は22年も引き続き、まだら模様になることが予想される」と述べた。
製造業や卸売業などが引き続き堅調に推移する一方で、航空・観光関連部門の活動は22年を通して新型コロナウイルス感染拡大前の水準を下回る見込みという。
同省がこの日発表した第3・四半期の国内総生産(GDP)改定値は前年比7.1%増加した。速報値の6.5%増から上方改定された。ロイター調査のアナリスト予想は6.5%増だった。
前期比(季節調整済み)では1.3%増加した。
シンガポールは人口545万人の約85%がワクチン接種を完了しており、今週に入りウイルス対策の規制を一部緩和。特定の国を対象に隔離なしの渡航も認めている。
メイバンク・キム・エンのエコノミスト、Lee Ju Ye氏は「回復は確実に始まっており、国境管理や移動制限の緩和は消費者向けセクターを支援するだろう。ただ、正常化のペースは緩やかになる」と述べた。
貿易産業省はまた、長期化する供給の制約に加え、需要の回復やエネルギー関連コモディティー(商品)価格の上昇が、より持続的なインフレにつながる可能性があると指摘した。
世界の政策当局者は、供給の制約や世界的な景気回復がもたらすインフレリスクに注目している。
シンガポール金融管理局(MAS、中央銀行)は前回10月の会合で、市場予想に反して金融政策の引き締めを決定した。
MASの副マネジングディレクター、エドワード・ロビンソン氏はメディアブリーフィングで、来年4月に予定される次回会合で政策判断を下す上で、インフレ動向を注意深く監視すると述べた。
今週発表されたシンガポールの10月インフレ率は、前年比3.2%で13年3月以来の高水準となった。中銀が注目するコアインフレ率は前年比1.5%と約3年ぶりの高水準だった。サービスと食品価格の上昇が主な要因。
OCBCのセレナ・リン氏は「来年の第1・四半期以降もインフレのオーバーシュートが続き、サプライチェーンの制約が改善されない場合、問題は(政策引き締めが)どれだけ積極的なものになるかだ」と指摘。4月に引き締めが実施される可能性が「非常に高い」との見方を示した。
昨年の成長率は新型コロナの影響でマイナス5.4%と過去最大の落ち込みを記録した。