[ニューヨーク 17日 ロイター] - 米株式市場で、堅調な銘柄の「裾野」が狭まるなど幾つかのリスク許容度低下につながる兆候が見られ、投資家が警戒している。
リフィニティブのデータからは、ハイテク株の比重が高いナスダック総合指数が年初来で18%上昇したにもかかわらず、200日移動平均を超えている銘柄が全体の31%と、少なくともこの1年で最低にとどまっていることが分かる。小型株で構成するラッセル2000の場合、この比率は36%だ。
年初来で約24%上がりし、足元で過去最高値圏にあるS&P総合500種の銘柄は、もう少し旗色が良く、200日移動平均超えは68%だった。それでもゴールドマン・サックスが公表した直近のデータによると、4月以降の値上がりのおよそ半分はアップル、マイクロソフト、エヌビディア、テスラ、グーグル親会社アルファベットの5銘柄が占める。
ゴールドマンのデータを見ると、こうした堅調銘柄の裾野の縮小は、不安定な値動きや全般的なリターン減少などの前兆ととらえられる。もっとも同社アナリストチームは、今回に関してはしっかりした企業業績や、市場が既に米連邦準備理事会(FRB)のタカ派加速を織り込んだもようといった要素のおかげで、株安は限定的になるかもしれないとの見方を示した。
ただそれほど楽観的でない市場関係者もいる。AEウエルス・マネジメントのトム・シオマデス最高投資責任者は、投資家としてはボラティリティーが拡大する局面を覚悟すべきだと警告。「そうした事態でやっていけないなら、リスク量をやや減らすのが正解なのは間違いない」と述べた。
投資家の間からは、堅調銘柄の数が減れば確かに株式市場にとってさまざまなリスクをもたらしかねないとの声が聞かれる。
アクソニック・キャピタルの調査ディレクター、ピーター・チェッキーニ氏は「このまま値上がりを続けているために頼りになる銘柄がどんどん少なくなっている。それらの株価が反落した場合、穴埋めしてくれる他の銘柄は存在しないだろう」と話す。
特定銘柄への保有集中は、リスク許容度が突然なくなって投資家が一斉にポジション解消に動いた際に、ボラティリティーが極端に跳ね上るという面もある。AEウエルス・マネジメントのシオマデス氏は「逃げ出したいと考える全員がそれを実行できるほど、十分な出口の広さはないかもしれない」と懸念を示した。
投資家の不安増大は、ボラティリティー・インデックス(VIX)からも見て取れる。現在の同指数は長期的な中央値よりおよそ5ポイント高い水準だ。また昨年ずっと好調だった高成長株は大きく下落し、今年初めに活況を呈したミーム株(個人投資家による集団的な買いが入る銘柄)もさえない。米個人投資家協会(AAII)の最新調査では、米国株に対する短期的な強気見通しの割合は過去3カ月で最低を記録した。
一方、このところ増大したボラティリティーが落ち着く気配もないことはない。オプションメトリクスの計量部門責任者ガレット・デシモーネ氏は、デリバティブ市場がクリスマスから新年にかけての予想ボラティリティー低下を示していると指摘した。実際、1945年以降の推移を見ると、S&P総合500種は12月の最後の5営業日と1月最初の2営業日の間に平均で1.2%上昇している。
バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチが集計した世界の機関投資家調査では、キャッシュ配分比率が昨年5月以降で最高水準となった。これまでキャッシュ比率の高さは株式にとって強気のサインとなってきたという。
さらに堅調銘柄数の減少自体、長期間持続し得る上に、必ずしも株価急落を意味とは言えない。キャピタル・エコノミクスのアナリストチームは、S&P総合500種の堅調銘柄はハイテクバブルがはじける前の1990年代後半のほとんどの期間と、過去5年間で縮小していたと記した。
ファイナンシャル・エンハンスメント・グループのポートフォリオマネジャー、アンドリュー・スラッシャー氏は、堅調銘柄が減って市場に歪みが生じても、その結果として相場が崩れないことは、過去1年の値動きが如実に物語っていると強調した。
(Saqib Iqbal Ahmed記者)