[東京 21日 ロイター] - 米金利上昇にもかかわらずドル/円の上値が重い場面が目立ってきた。景気圧迫や株安など金利上昇がリスクオフの円買い要因として意識され始めてきたためだ。当面は利上げ期待を背景にドル高基調が続いたとしても、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、いったんの材料出尽くしとなればピークを打つ可能性もあるとみられている。
<感応度が鈍化>
米10年債利回りは19日に2年ぶりの高水準となる1.902%を付けたが、年初からのドル/円の下落傾向に歯止めはかからず113円台までレベルを落としている。米5年債利回りとの関係も同様だ。
ニッセイ基礎研究所の上席エコノミスト、上野剛志氏はリスクオフの円買いが強まっていると指摘する。「米金利の急上昇は株価や米国経済への悪影響、新興国からの資金流出やドル高に伴う債務返済負担への懸念などが意識されやすい」という。
フェデラル・ファンド(FF)金利先物市場は、3月の利上げと年内の3回の利上げを完全に織り込んだ。3月の利上げ幅が50bpsとなる可能性も警戒され始めた。インフレ抑制のために利上げスピードが速まり、景気を冷やすリスクを市場は警戒している。
ドルの実質実効レートやドル円の購買力平価はすでに割高な水準に位置している。「金利上昇に対する(ドル/円の)感応度が鈍くなっている」と、三菱UFJ銀行のチーフアナリスト、内田稔氏は指摘する。
世界の中銀も中国などを除いて総じてタカ派方向に傾斜している。モルガン・スタンレーMUFG証券のエクゼクティブディレクター、杉崎弘一氏は「米国との金融政策の乖離が想定より進まず、ドルの上昇は鈍くなりやすい」と見方を示す。
<QT計画浮上すれば転機にも>
ドル高予想が市場から消えたわけではない。足元の下落は過熱感を冷やすための単なる調整の可能性もある。
あおぞら銀行のチーフマーケットストラテジスト、諸我晃氏は、ターミナルレート(利上げサイクルの最終到達点)が上振れる可能性から、年前半についてはドルは上昇方向にあるとし、「118円は目指せるトレンドにはある」と指摘する。
モルガン・スタンレーMUFGの杉崎氏も日米実質金利差の拡大を背景としたドル/円の上昇は続くとみている。市場の日銀の金融引き締め観測は後退しており、日米金利差は再び開きやすくなっている。
しかし、杉崎氏は3月15─16日のFOMCで、今後の利上げパスやQT(量的引き締め)の具体的な計画が明確になった場合は「市場は達成感からドル安へ転じるリスクがある」と予想する。
過去をみると、最初の利上げが行われた時点でドル高のピークを迎えることが多い。QTも2018年末のように大幅な株安をもたらすリスクオフ要因になる可能性もある。
市場は米利上げを相当程度織り込んでいる。来週1月25―26日のFOMCでも、タカ派化が想定内にとどまれば、ドルの上昇は見込みにくいとの声が多い。
(坂口 茉莉子 編集:伊賀大記)