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焦点:アフリカで深刻化する「生理の貧困」、学校諦める生徒も

発行済 2022-08-20 11:56
更新済 2022-08-20 12:00
© Reuters.  医療専門家や慈善団体は、インフレの加速というグローバル規模の問題により、多くのアフリカ諸国で生理用ナプキンのコストが上昇しており、多くの少女が学校を休むか、感染症や不妊

[アクラ 16日 トムソン・ロイター財団] - ガーナの学校に通うジュリエット・オポクさんは、制服に付いた血をからかわれたことを機に、毎月1週間ほど学校を休むようになった。農業に従事する両親には、生理用ナプキンを買い与える余裕がなくなってしまったからだ。

西アフリカに位置するガーナでは、インフレ率が約32%に達し、生理用ナプキンの価格は12ガーナセディ(約165円)と、昨年の5ガーナセディから2倍以上に上昇した。オポクさんのようなより貧しい世帯では、生理用品よりも食料の購入を優先せざるをえない。

ガーナ南部アシャンティ地方で暮らす15歳のオポクさんは、トムソン・ロイター財団の電話取材に対し、「制服が血で汚れて、男子たちにからかわれたので、学校をサボった。自尊心が傷つけられた」と語った。

「生理用ナプキンはとても高い。生理の時は、代わりにトイレットペーパーや幼児用オムツ、布を使うこともある」とオポクさんは言う。将来の夢は看護師だ。

医療専門家や慈善団体は、インフレの加速というグローバル規模の問題により、多くのアフリカ諸国で生理用ナプキンのコストが上昇しており、多くの少女が学校を休むか、感染症や不妊につながりかねない非衛生的な代替品に頼るようになっていると話している。

女性・少女の人権推進に取り組むアクションエイド・インターナショナルの調査によれば、今年4月時点での生理用ナプキン1パックの価格は、1月と比較して、ジンバブエでは117%、コンゴ民主共和国では50%上昇した。

複数の慈善団体は、この状況はアフリカで生活する数百万人の少女にとって辛い結果をもたらしかねないと指摘。彼女らの教育や健康、尊厳に影響し、年長の男性との取引による性行為につながり、最終的にはジェンダー格差の拡大に至るとしている。

「価格の上昇が続くなかで大きな懸念は、女性たちが医薬品や衛生用品など健康に関わる出費を控え、家族を養うための食料その他の購入を優先してしまうことだ」と語るのは、カトリック救援事業会のスガニャ・キンブロー氏。

東アフリカ地域のプログラム品質を担当するキンブロー氏は、「学校に通う少女や、生計を支えている女性にとって極めて大きな影響が生じかねない」と述べ、食事の回数を減らしたり、家畜を売って家計の足しにしている世帯もある、と説明する。

<教育、健康へのリスク>

生理に関する情報や製品、女子トイレへのアクセスが不十分な状態としてしばしば定義される「生理の貧困」は、サハラ砂漠以南(サブサハラ)のアフリカにおける多くの地域で広く見られる。スティグマ(不名誉)を味わうことで、少女たちは授業を欠席し、完全に退学してしまうこともある。

ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が支援する調査によれば、ケニアでは女性・少女の65%が生理用ナプキンを購入できず、村落地域の学校では、女子生徒らがナプキンを交換する際にプライバシーを保てるトイレなどの設備があるのは32%にとどまっている。

国連の推計では、サブサハラ・アフリカ地域の少女の1割が生理中は学校を休んでおり、累計では最大で授業日数の20%に達する場合があるとされる。

こうした少女たちが学校を無事に卒業するとしても、同年代の男子生徒に比べて成績面で後れを取る可能性が高く、進学実績における既存の格差が拡大しかねない、と活動家らは語る。

また医療専門家によれば、生理用品を入手できない少女たちが紙やボロ布、草の葉、下手をすれば乾燥した牛糞など間に合わせの代用品を使うと、生殖器官や尿路への感染を伴う病気にかかるリスクがあるという。

公衆衛生分野の啓発に取り組むアニタ・アサモア氏は、「布を使うと、一般的な細菌による感染症にかかる場合がある」と話す。

「適切に治療しなければ、そうした感染症が骨盤内炎症性疾患や不妊症につながっていく」

骨盤内炎症性疾患は、子宮、卵管、卵巣に生じる感染症で、妊娠が困難になったり、卵管における子宮外妊娠の確率が増大したりする場合がある。

生理用ナプキンの費用がないために、年長の男性との性行為に走り、依存と搾取のサイクルにはまってしまう少女もいる。望まない妊娠や、低年齢での出産に至るケースもある。

国連人口基金(UNFPA)と協力してガーナで青少年の性的健康問題に取り組むアジョア・ニャンテング・イェンイ氏は、「生理用ナプキンと引き替えに、男性が少女らを取引的な性的関係に誘っている」と述べた。

「多くの少女が若さゆえに犠牲となり、想定外の妊娠に至っている」

ケニア医学研究所と米疾病対策センター(CDC)がケニア西部の農村地域で行った共同調査では、調査対象となった15歳の少女のうち10%が、生理用品を入手するために男性と性的関係を持っていた。

<「タンポン税」と月経カップ>

活動家らはアフリカ諸国に対し、生理用品に対する税金(西側諸国では俗に「タンポン税」と呼ばれる例が多い)を廃止し、入手しやすくすることを呼びかけている。だが、そうした措置をとったのはケニアやルワンダ、南アフリカなど少数の国に限られる。

ガーナでは、生理用ナプキンに20%の輸入関税に加え、12.5%の付加価値税を課している。ガーナ歳入庁では、生理用ナプキンをぜいたく品に分類している。

活動家らは、ケニア、南アフリカ、ボツワナ、ザンビアの先例に倣い、もっと多くの国が、女子生徒に無料の生理用ナプキンや、洗濯可能な裏地を備えた下着や月経カップなど低価格で繰り返し利用できる製品を提供すべきだと主張している。

コフィ・カイレマテング・ニャンテング氏がガーナ担当ディレクターを務める「クッジュー?(CouldYou?)」では、グローバル規模で恵まれない境遇にある少女たちにシリコン製の月経カップを配布している。

「生理の貧困に対処するために、効率的で持続可能な方法を模索する必要がある」とニャンテング氏は述べた。有力な戦略の1つは、月経カップのように繰り返し利用可能な製品を選択肢として政策担当者に提示することだとし、シリコン製であれば最長10年は使えると説明した。

(Kent Mensah記者、翻訳:エァクレーレン)

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