[ワシントン 21日 ロイター] - イエレン米財務長官は、米国の銀行システムは、規制当局の強力な措置により安定しつつあるものの、中小金融機関が「取り付け」と呼ばれる預金の大量流出に見舞われた場合は、預金者保護に向けた一段の措置が正当化されるとの認識を示した。
21日に全米銀行協会の会合で行う講演原稿(抜粋)で明らかになった。
イエレン氏は、破綻した2銀行の保証対象外の預金の保護、連邦準備制度の下での新たな流動性供給など、最近政府が取った措置は「預金者が預け入れたお金や銀行システムの安全確保に必要な措置を講じるという断固たるコミットメントを示している」と説明。「決定的かつ力強い」行動が米国の金融システムに対する国民の信頼を高め、米経済を保護しているとした。
また「われわれの措置は、特定の銀行、銀行のクラスの支援に注力したものでない。われわれの介入は、より広範な米国の銀行システムを保護するために必要だった」とした上で 「中小金融機関で預金の流出が発生し、他に波及する恐れがある場合、同様の措置が正当化される可能性がある」と述べた。ただ、どのような追加措置が正当化されるのかについては詳細に語らなかった。
米連邦預金保険公社(FDIC)、FRB、財務省の措置により、さらなる銀行破綻のリスクが低減したと表明。新設された「銀行タームファンディングプログラム(BTFP)」、および連銀窓口貸出(ディスカウント・ウインドウ)は銀行システムに流動性を供給するために意図した通りに機能しており、銀行からの預金流出は安定したと述べた。
米大手銀11行が先週、株価急落に見舞われた中堅銀行ファースト・リパブリック・バンクの資金繰りを支えるために合計300億ドルの預金を預け入れることは「銀行システムに対する信任投票だった」との認識を表明。米経済を支えるために「ダイナミックで多様な銀行システム」の維持が重要で大手銀行、中堅銀行、小規模銀行の全てが家計や中小企業を支え、金融サービスにおける競争を高める役割を担っているとし、銀行を巡る状況について銀行関係者のほか、州・連邦規制当局や国際的なカウンターパートと緊密に連絡を取り合っていると語った。
このほか、サブプライムローン問題で多くの銀行がストレスにさらされた2008─09年の世界金融危機と現在の状況は「全く異なる」と指摘。「現在の金融システムは15年前と比べて格段に強固になっている」と述べた。
経営破綻したシリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー・バンクについては「現在の規制・監督体制を見直し、銀行が直面しているリスクに対し適切かどうか検討する必要がある」とし、規制当局が両行の破綻について検証すると表明。今回のような金融危機に対処するために調整が必要か判断するために銀行規制を評価すると述べた。
具体的にどのような調整が行われるかは明らかにしなかったものの、小規模な銀行が破綻したシリコンバレー銀やシグネチャーバンクのような困難に見舞われた場合に一段の介入を実施する措置が含まれる可能性があると語った。