[ワシントン 10日 ロイター] - 高金利と世界的な景気減速の組み合わせにより、多額の債務を抱える多くの新興国が、来年は返済に苦慮する恐れがある。こうした国の多くは多国籍機関からの支援や二国間融資によって新型コロナウイルスのパンデミックやウクライナ戦争の影響を乗り切ってきた。
来年には新興国が国際市場で発行した高利回りの債券、総額300億ドル相当が償還を迎える。これは、今年末までの84億ドルを大幅に超える額だ。早急に借り換えられなければ、途上国の債務問題は一層深刻化するだろう。
INGの新興国市場ソブリンストラテジスト、ジェームズ・ウィルソン氏は「市場にアクセスできない期間が長引けば、低格付けの新興国ソブリン債を巡る懸念は強まるだろう」と述べた。
今週の世銀・国際通貨基金(IMF)春季会合では、厳しい状況にある途上国の債務負担をどう和らげるかが主要議題となる。
新興経済国全体が国際市場での資金調達に苦慮しているわけではなく、年初からのソブリン債発行は過去最高を記録している。ただ、起債しているのは主に高格付けの国々だ。
一方で、チュニジア、ケニア、パキスタンといった国々は「市場が自分たちに向けて再開してくれなければ、代替的な資金調達先を探す必要が生じる」とナインティー・ワン(ロンドン)のポートフォリオマネジャー(新興市場の外貨建債務ストラテジー担当)、サイス・ルー氏は言う。
BofAの東欧中東アフリカ(EEMEA)ソブリン・クレジット・ストラテジスト、メルビル・パジャ氏によると、投資家は来年6月に償還期限を迎えるケニアの債券20億ドルについて、借り換えリスクを懸念している。
「IMFのレジリエンス・サステナビリティー・トラスト(RST)にせよ、10億ドルの対外債券発行もしくはシンジケートローンにせよ、市場は新たな解決策の実行を期待している」と述べた。
RSTは、低所得国と一部の中所得国が気候変動とパンデミックに備えられるようにするための基金で、1年前に承認された。
チュニジアの状況はケニアよりも切迫しており、今年10月に5億ユーロ、来年2月には8億5000万ユーロの対外債券が償還を迎える。同国の格付けは「CCC」で、格付け会社フィッチはデフォルト(債務不履行)の可能性が高いと警告している。
チュニジアは昨年10月、IMFによる19億ドルの支援に事務方レベルで合意したが、実施は留保されている。サイード大統領は最近、融資実行の条件をきっぱりと拒絶した。
エチオピアは来年に10億ドルのユーロボンド償還を迎えるため、借り換えのための融資をIMFと交渉中。また、投資家は既に返済期限の延長を提案している。
スリランカ、ザンビア、ガーナの3カ国は、既に対外債務のデフォルトを起こし、債権者と債務再編の交渉中だが、進ちょくは遅い。
バーレーンは外貨準備が乏しく、多額の借り換えが必要だが「サウジアラビアなど友好国からの強い支援によって、リスクは一部緩和されている」(ING)という。
<世界経済のリスク>
ナインティー・ワンのルー氏は「チュニジアとパキスタンにとっては、IMF支援プログラムの最終合意がデフォルト回避に向けた重要な一歩になる。二国間や多国籍間の融資に道が開けるからだ」と述べた。
パキスタンの来年の借り換え所要額は、同国の外貨準備の12%に相当する。
JPモルガンの新興国市場債券指数(EMBI)を見ると、新興国の高利回り債は米国債との利回りスプレッドが900ベーシスポイント(bp)に達しており、昨年初めからおおむね800bpを超えた状態が続いている。
M&Gインベストメントの新興国市場ファンドマネジャー、グレゴリー・スミス氏は、パンデミック期のスプレッド拡大はすぐに収まったが「ロシアによる紛争と米連邦準備理事会(FRB)の利上げサイクルによって、高スプレッドがずっと長期化した」と説明した。
中期的に米ドルが下がれば、低所得国は国際市場で起債しやすくなるかもしれない。しかし、最近は世界経済のリセッション(景気後退)入りが懸念されている。
BofAのパジャ氏は「投資家は銀行セクター(危機)の波及と、FRBによる拙速な利上げ休止もしくは過度な引き締めのリスクを心配している」と述べた。
(Jorgelina do Rosario記者)