[ベルリン 5日 ロイター] - ドイツが今年第1・四半期に景気後退(リセッション)に陥った主因の1つは、インフレに直撃された消費者による支出が落ち込んだことだ。欧州連合(EU)域内の他国はリセッションを何とか回避したにもかかわらず、である。
しかも、欧州全域でインフレが減速し始めているのに、倹約で有名なドイツ人消費者は、リセッションから抜け出すための消費行動を見せようとしていない。つまり、欧州随一の経済大国ドイツが成長に転じるには、別の手段を見つけなければならない。
「ドイツ人は用心深い気質だ」と語るのは、KPMGでドイツ消費財部門責任者を務めるシュテファン・フェッチ氏。「将来への安心感を持てない限り、消費には消極的なままだ」
今年第1・四半期にドイツの国内総生産(GDP)は前期比0.3%減と、2期連続のマイナス成長となった。特に押し下げ要因となったのは家計消費の1.2%減少である。フランスとイタリアで小幅ながら増加が見られたのとは対照的だ。
センティックスが5日に発表した調査報告で「ユーロ圏最大の問題児」とされたドイツ経済は、岐路に立たされている。
ロイターがエコノミストを対象に行った調査では、ドイツの第2・四半期のGDP予想を巡る見解が割れた。マイナス0.3%からプラス0.5%まで幅が見られ、中央値はプラス0.2%となった。
鍵となるのは、他国と同様、ドイツでもGDPの約半分を占める家計消費だ。
だがドイツの消費者心理は依然として、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に見舞われた2020年春の低水準をさらに下回っており、ドイツ小売業連盟(HDE)が発表した消費者指数も同様の状況を示している。
HDEは5日、「今後数カ月は個人消費における大幅な増加は見込めない」との見解を示した。
停滞ムードの背景には多くの要因がある。
ドイツの消費者にとって特に痛いのは、ロシア産天然ガスへの依存度が他国より高かったことによるエネルギー価格の高騰だ。ベレンベルクのチーフエコノミスト、ホルガー・シュミーディング氏は、それにもかかわらず、ドイツ政府による救済策は他国ほど手厚いものではなかったと述べた。
さらにINGのマクロ担当グローバルヘッド、カールステン・ブルゼスキ氏は、ドイツ政府はエネルギー価格上昇に上限を設ける政策を導入したが、フランスとイタリアが導入した対策に比べれば出遅れたと指摘し、年内は個人消費の停滞が続くと予測する。
インフレが緩和しているとはいえ、ドイツ消費者の警戒感は極めて高いままで、長年にわたりディスカウントストアで低価格で購入することに慣れていることもあり、多くの人にとってひどく高く感じられる価格では支出をためらってしまう。
KPMGのフェッチ氏は「ドイツは小売り大国で、ディスカウント業態が生まれたのもこの国だ」と語る。「最もお買い得な商品を探して回るのが、非常にドイツ人的な気質だ」
そして今、もう1つの要因が顕在化しつつある。2022年7月以降、欧州中央銀行(ECB)による利上げは375ベーシスポイントに達しており、借入コストを上昇させる一方で、貯蓄は有利になっている。
コメルツ銀行でチーフエコノミストを務めるイエルク・クレーマー氏の試算では、最初の利上げから経済への打撃が生じるまでに平均して5四半期を要するため、今年下半期には経済がさらに縮小する可能性があるという。
「ドイツの消費者が警戒するのももっともだ。経済的な不確実性は全て、予防的な貯蓄の増加を招くのが普通だ」と、ベルリン・フンボルト大学のマイケル・バーダ教授(経済学)は語る。
ドイツ政府は依然として、年内に経済情勢が好転することを期待している。
INGのブルゼスキ氏は、ドイツの輸出業績が決定的な要因となるとの見方を示した。輸出はドイツ長年の強みとはいえ、急激な変動に見舞われることも珍しくない。
5日に発表された最新の貿易統計によれば、4月のドイツの輸出は前月比1.2%増加。中国経済再開で予想外の増加となった。ただ、前月に6%と急落した分を取り返すにはまったく足りなかった。
(Maria Martinez記者、翻訳:エァクレーレン)