[フランクフルト 11日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのクノット・オランダ中銀総裁は11日、ユーロ圏各国政府の積極的な財政出動でインフレがようやく上向いたとしながらも、金融政策の対応余力が限られる中、各国が今後数年、積極的な財政出動を続けられるよう新たな財政規律が必要と指摘した。
新型コロナウイルス危機を受け、欧州は財政規律を一時停止し、各国政府は景気支援のため大規模な財政支出を実施してきた。しかし景気の回復に伴い財政規律をいつ、どのように復活させるか議論されている。
クノット総裁は講演で「現在は、インフレ圧力が持続的に増大するより良好な環境にある。ただ、労働市場に大幅なスラック(需給の緩み)がなお存在しているため、いましばらく時間がかかる」と指摘。今年の消費者物価の上昇は一時的なものとの見方を変えていないとしながらも、各国政府の景気支援策が一部要因となり、一部の上向きリスクが見通しに反映されつつあるとの考えを示した。
ただ「現行の低金利環境は長引くとみられ、予見可能な将来にわたってマクロ経済が安定するためには構造的に財政政策がより大きな役割を果たす必要がある」とし、「その枠組みで財政の柔軟性は不可欠な要素で、非常時に発動するかどうかというものではない」と述べた。
新たな枠組みは、欧州連合(EU)の復興基金のようにユーロ圏諸国の財政政策の連携を向上させる必要があり、自動的な安定化機能や緊急措置よりも踏み込んだ柔軟性をもたせなければならないと指摘。ただ、各国政府に財政支出で自由裁量を与えてはならず、債務を持続可能な水準に保ち、支出が生産性を向上させ、最終的に成果が得られるように「強固で信頼できる」ルールが必要になると述べた。