[東京 27日 ロイター] - 「青森です」「愛知です」「兵庫です」──五輪会場で手荷物検査に当たる陸上自衛隊員に所属を聞くと、全国から動員されていた。
手際が良く、迅速にさばいていく。大量の人を流す必要がある大規模イベントにはぴったりだ。だが、今大会はほぼ無観客。新型コロナ対応に加え、自然災害がいつ起きてもおかしくないこの時期に自衛隊をこの任務に当てるのは正しいのか、民間の警備会社にはできないことなのかと、荷物を調べられながら考えてしまった。
実際、土石流が発生した静岡県熱海市、堤防が決壊した広島県三原市など、この夏はすでに複数の災害派遣命令が出ている。
開会式当日に空自のブルーインパルスが東京上空を飛行したことは大きく報じられたが、いまも競技会場に航空機などが近づかないよう戦闘機を飛ばしていることや、海自が近海の警備を強化していることは知られてない。
海外でも軍隊がオリンピックなど国の大イベントに協力することはよくある。自衛隊法は運動競技会に自衛隊が協力することを認めており、細則の「会場内外の整理に関すること」に手荷物検査は当てはまる。しかし、もっとふさわしい協力の仕方があるのではないか。
「便利屋ではない」。知己の自衛官が口にした言葉を思い出した。
(久保信博)