〇NY株急落、トランプ政権信頼度低下〇
21日のNYダウは前日比237.85ドル安の2万668ドル。
トランプ相場最大の下落となった。
外電で理由を見ると、「減税策実施遅れるとの懸念で」、「成長重視政策が議会を通過しないとの懸念が広がり」、NHKは「共和党内で医療保険制度改革を巡る意見の対立が鮮明になり、大幅な減税など市場が期待しているほかの政策にも影響が及ぶという見方が広がった」。
もっともらしい説明をNHKが上手くまとめた印象だが、実際は「ロックフェラー・ショック」であろう。
市場はトランプ政権に有力な後ろ盾がいると見ていた可能性があり、それがトランプ政策の先取り、信認に繋がっていたと見られる。
前日に、FBIのコミ—長官は、トランプ陣営とロシアの「連携」を捜査していると、議会公聴会で証言した。
詳細は明らかにしなかったが、1月にロシア政府が米民主党陣営にサイバー攻撃を仕掛けたと断定する報告書が発表され、直後にフリン氏がロシア関係者との接触を理由に辞任していた。
水面下では、トランプ大統領の弾劾にまで発展するリスクがあるとの見方が燻り、トランプ陣営がそれを押さえ込む力を、後ろ盾を失うことで、削がれるとの警戒感が背景と思われる。
長女イバンカさんのホワイトハウス西館入りが伝えられ、大統領が狼狽え、身内に頼る姿に映る。
元々、ロシアとの関係は実態は不明で、ムードに流され易い話だが、NYダウ2万1000ドルの壁が重く感じられ、目先筋の手仕舞いを誘ったと考えられる。
広い意味で、次の展開待ちの局面にある。
20日、ドイツ連銀が発表した月報で、「リスクに対する投資家の警戒姿勢を背景に、ECBの資産買い入れで供給された資金が再投資されず、ドイツ国内で積み上がっている」とされた。
ユーロ圏の中央銀行間決済システム「ターゲット2」では、ドイツの純債権が2月に過去最高の8140億ユーロに増加、逆にイタリアの純債務は過去最高の3861億ユーロに達した。
投資への消極姿勢が利回り格差などへの反応力を著しく低下させている。
イタリア等への不信感だけでなく、2月にブリュッセルのシンクタンクがブレグジットでロンドンから1兆8000億ユーロ相当の銀行資産が欧州大陸に移転するとの報告書を発表し、不透明感に身構える姿勢も影響していると考えられる。
資金の性格、リスク要因は異なるが、日本では家計が保有する個人金融資産は1800兆円(16年12月末)、企業の内部留保は375兆円に膨らんでいる。
それらを活性化させる必要性が指摘されながら、政策的には道半ばの状況だ。
トランプ相場はバブル化する可能性が指摘される一方、先行き不透明感から大量の滞留資金も発生させてきたと考えられる。
これらの資金が逆張り的に動くのか、一段と滞留感を強めるのか、世界の市場動向にとって大きなポイントの一つとなろう。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/3/22号)