日本経済は1990年代のバブル崩壊後、崩壊前の水準に回復することなく伸び悩みに直面している。
他の先進国に先駆ける形で少子高齢化による労働人口の減少が進み、国内需要は縮小傾向にある。
このような状況下において今後の日本経済に大きな転換点となる可能性があるのは、きたるべき「第4次産業革命」だ。
この技術革新の波に国家としてどのように対処するかが、今後の日本経済の行く末を大きく左右することになろう。
本シリーズでは、日本経済が取り得る未来について考察し、導入とともに「ゆでがえる」「格差不況」「シェアリング」「黄金期」という4つのシナリオを紹介し、日本経済が取り得る未来と第4次産業革命が経済面に与えるインパクトを考察したい。
各シナリオはそれぞれ数回にわたってご説明してゆく。
本稿ではシナリオ4「黄金期」後編をご紹介する(※)。
黄金期シナリオは、計2回にわたってご説明する。
※導入と、シナリオ1「ゆでがえる」、シナリオ2「格差不況」、シナリオ3「シェアリング」は、別途「日本経済シナリオ:第4次産業革命の与えるインパクトとは【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」、「日本経済シナリオ1:「ゆでがえる」前編【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」、「日本経済シナリオ2:「格差不況」前編【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」、「日本経済シナリオ3:「シェアリング」前編【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」などを参照。
■社会課題解決型のビジネスが誕生
先にも述べたように、これが実現すればAIやロボットなどの出現で労働代替率が進む一方、産業構造の再編によるビジネスプロセスの変化が新たな雇用を創出する。
こうした就業構造の転換に対応した人材育成や流動性のある労働市場の整備が必要になるだろう。
また、日本は少子高齢化の先進国であることをチャンスと捉え、社会課題の解決に資するビジネスプラットフォームも誕生する。
「健康を維持する、生涯活躍する」分野では、3Dプリンタなどを駆使した健康寿命の延伸や、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)を最大化するナノテクロジーと融合した医療サービスも誕生する可能性はある。
また、「地方経済の疲弊」の課題解決に向けた「街づくりに関するデータ×AI」や、エネルギーの高効率化、安全・安心サービスの高度化の実現を目指すのも成長ポテンシャルはある。
これらには、海外から資金やヒト、モノを調達し、独自のビジネスモデルを海外に輸出して外貨を稼ぐというビジネスモデルへの転換が果たせる可能性がある。
■新たな外貨獲得モデルへの転換が鍵
日本は従来のモノを売って外貨を稼ぐモデルから、日本独自のプラットフォームを海外企業に提供して外貨を稼ぐというモデルへ転換をするべきだ。
さらなる技術の強化にむけ、海外からヒト、モノ、カネを調達していくことが、日本が生き残る唯一の道ではないか。
特に、民間レベルにおけるイノベーションは不可欠だ。
実際に、イノベーションによる市場創造が期待できる領域では、例えば、100年に一度の大転換と言われる電気自動車(EV)がある。
日本の自動車メーカーが中長期の視座に立ち、環境への変化に応じて、各社が有する世界最高水準の技術や知識、データの再構築や再配置、そして再利用をダイナミックにデザインすることは不可欠といえよう。
これに先立ち、トヨタ自動車〈7203〉は2017年9月28日、マツダ〈7261〉、デンソー〈6902〉と電気自動車(EV)開発のための新会社を設立することを明らかにした。
EVの基本構想に関する技術を共同で開発し、各社の強みを持ち寄ることで開発手法そのものを見直すという。
また、個人金融資産が潤沢にある日本の特徴を生かし、金融分野の規制緩和などを仕掛けることで、金融で稼ぐ国(金融立国)を目指せる余地がある。
例えば、仮想通貨領域。
DMM.comやGMOインターネット〈9449〉によるマイニング事業への参画や、テックビューロのICO(InitialCoinOffering)プラットフォームの「COMSA」などが発表されているが、仮想通貨ビジネスは日本が世界を牽引するチャンスがある数少ない領域である。
こうした新しい領域にチャレンジする企業が世界を目指すことで、海外の投資家より外貨を獲得することが可能になる。
さらに、先進国としてはいち早く少子高齢化に直面する日本の社会課題を生かし、未知の市場でビジネスチャンスを最大に活かすことも可能だ。
野口悠紀雄氏著書『1500万人の働き手が消える2040年問題、労働力減少と財政破綻で日本は崩壊する』によると、2040年の日本は少子高齢化に伴い、4人に1人が医療従事者になるという。
このため、労働力確保のために介護従事者に外国人の参入や、介護産業を成り立たせるためには、財源を確保する必要があると警告している。
このような課題解決に向けた介護や福祉分野のイノベーションを積極的に推進し、そこに日本の強みであるハードウェア分野のロボットを介護分野向けに開発および導入することで、新たなビジネスモデルの先駆者を目指すのは野心的で興味深い。
ただ現状、紹介できる新興ビジネスの実例が少ないことに日本企業の危機感のなさが表れている。
私たちフィスコが考えた日本の将来シナリオは4つだ。
ベースシナリオは「ゆでガエル」。
ついで「格差社会」「シェアリング」「黄金期」である。
第4次産業革命の波にのり、日本が成長路線へ回帰するには、「起きるか起きないかわからない」未来を複数描き、まさに今、想定される未来に向けて着実に一手を打ちつつ、不確実な時代に対応できる「戦略」を磨き、挑戦することが鍵になるのではないか。
■フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
フィスコ取締役中村孝也
フィスコIR取締役COO中川博貴
シークエッジグループ代表白井一成
【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。
主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部からの多くの専門家も招聘している。
それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、フィスコIRの取締役COOである中川博貴が内容を取りまとめている。
2016年6月より開催しており、これまで、この日本経済シナリオの他にも今後の中国経済、朝鮮半島危機を4つのシナリオに分けて分析し、日本経済にもたらす影響なども考察している。
今回の日本経済に関するレポートは、フィスコ監修・実業之日本社刊の雑誌「JマネーFISCO株・企業報」の2017年冬号の大特集「日本経済シナリオ」に掲載されているものを一部抜粋した。
他の先進国に先駆ける形で少子高齢化による労働人口の減少が進み、国内需要は縮小傾向にある。
このような状況下において今後の日本経済に大きな転換点となる可能性があるのは、きたるべき「第4次産業革命」だ。
この技術革新の波に国家としてどのように対処するかが、今後の日本経済の行く末を大きく左右することになろう。
本シリーズでは、日本経済が取り得る未来について考察し、導入とともに「ゆでがえる」「格差不況」「シェアリング」「黄金期」という4つのシナリオを紹介し、日本経済が取り得る未来と第4次産業革命が経済面に与えるインパクトを考察したい。
各シナリオはそれぞれ数回にわたってご説明してゆく。
本稿ではシナリオ4「黄金期」後編をご紹介する(※)。
黄金期シナリオは、計2回にわたってご説明する。
※導入と、シナリオ1「ゆでがえる」、シナリオ2「格差不況」、シナリオ3「シェアリング」は、別途「日本経済シナリオ:第4次産業革命の与えるインパクトとは【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」、「日本経済シナリオ1:「ゆでがえる」前編【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」、「日本経済シナリオ2:「格差不況」前編【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」、「日本経済シナリオ3:「シェアリング」前編【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」などを参照。
■社会課題解決型のビジネスが誕生
先にも述べたように、これが実現すればAIやロボットなどの出現で労働代替率が進む一方、産業構造の再編によるビジネスプロセスの変化が新たな雇用を創出する。
こうした就業構造の転換に対応した人材育成や流動性のある労働市場の整備が必要になるだろう。
また、日本は少子高齢化の先進国であることをチャンスと捉え、社会課題の解決に資するビジネスプラットフォームも誕生する。
「健康を維持する、生涯活躍する」分野では、3Dプリンタなどを駆使した健康寿命の延伸や、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)を最大化するナノテクロジーと融合した医療サービスも誕生する可能性はある。
また、「地方経済の疲弊」の課題解決に向けた「街づくりに関するデータ×AI」や、エネルギーの高効率化、安全・安心サービスの高度化の実現を目指すのも成長ポテンシャルはある。
これらには、海外から資金やヒト、モノを調達し、独自のビジネスモデルを海外に輸出して外貨を稼ぐというビジネスモデルへの転換が果たせる可能性がある。
■新たな外貨獲得モデルへの転換が鍵
日本は従来のモノを売って外貨を稼ぐモデルから、日本独自のプラットフォームを海外企業に提供して外貨を稼ぐというモデルへ転換をするべきだ。
さらなる技術の強化にむけ、海外からヒト、モノ、カネを調達していくことが、日本が生き残る唯一の道ではないか。
特に、民間レベルにおけるイノベーションは不可欠だ。
実際に、イノベーションによる市場創造が期待できる領域では、例えば、100年に一度の大転換と言われる電気自動車(EV)がある。
日本の自動車メーカーが中長期の視座に立ち、環境への変化に応じて、各社が有する世界最高水準の技術や知識、データの再構築や再配置、そして再利用をダイナミックにデザインすることは不可欠といえよう。
これに先立ち、トヨタ自動車〈7203〉は2017年9月28日、マツダ〈7261〉、デンソー〈6902〉と電気自動車(EV)開発のための新会社を設立することを明らかにした。
EVの基本構想に関する技術を共同で開発し、各社の強みを持ち寄ることで開発手法そのものを見直すという。
また、個人金融資産が潤沢にある日本の特徴を生かし、金融分野の規制緩和などを仕掛けることで、金融で稼ぐ国(金融立国)を目指せる余地がある。
例えば、仮想通貨領域。
DMM.comやGMOインターネット〈9449〉によるマイニング事業への参画や、テックビューロのICO(InitialCoinOffering)プラットフォームの「COMSA」などが発表されているが、仮想通貨ビジネスは日本が世界を牽引するチャンスがある数少ない領域である。
こうした新しい領域にチャレンジする企業が世界を目指すことで、海外の投資家より外貨を獲得することが可能になる。
さらに、先進国としてはいち早く少子高齢化に直面する日本の社会課題を生かし、未知の市場でビジネスチャンスを最大に活かすことも可能だ。
野口悠紀雄氏著書『1500万人の働き手が消える2040年問題、労働力減少と財政破綻で日本は崩壊する』によると、2040年の日本は少子高齢化に伴い、4人に1人が医療従事者になるという。
このため、労働力確保のために介護従事者に外国人の参入や、介護産業を成り立たせるためには、財源を確保する必要があると警告している。
このような課題解決に向けた介護や福祉分野のイノベーションを積極的に推進し、そこに日本の強みであるハードウェア分野のロボットを介護分野向けに開発および導入することで、新たなビジネスモデルの先駆者を目指すのは野心的で興味深い。
ただ現状、紹介できる新興ビジネスの実例が少ないことに日本企業の危機感のなさが表れている。
私たちフィスコが考えた日本の将来シナリオは4つだ。
ベースシナリオは「ゆでガエル」。
ついで「格差社会」「シェアリング」「黄金期」である。
第4次産業革命の波にのり、日本が成長路線へ回帰するには、「起きるか起きないかわからない」未来を複数描き、まさに今、想定される未来に向けて着実に一手を打ちつつ、不確実な時代に対応できる「戦略」を磨き、挑戦することが鍵になるのではないか。
■フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
フィスコ取締役中村孝也
フィスコIR取締役COO中川博貴
シークエッジグループ代表白井一成
【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。
主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部からの多くの専門家も招聘している。
それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、フィスコIRの取締役COOである中川博貴が内容を取りまとめている。
2016年6月より開催しており、これまで、この日本経済シナリオの他にも今後の中国経済、朝鮮半島危機を4つのシナリオに分けて分析し、日本経済にもたらす影響なども考察している。
今回の日本経済に関するレポートは、フィスコ監修・実業之日本社刊の雑誌「JマネーFISCO株・企業報」の2017年冬号の大特集「日本経済シナリオ」に掲載されているものを一部抜粋した。