[サンノゼ(米カリフォルニア州)/ワシントン 8 9日 ロイター] - 米連邦取引委員会(FTC)が米IT大手メタ・プラットフォームズによる米仮想現実(VR)アプリ開発企業買収の差し止めを求めカリフォルニア州連邦地裁で起こした訴訟で、8日に口頭弁論が始まった。FTC側は買収について、仮想空間「メタバース」で独占的地位を得る狙いで、独占禁止法(反トラスト法)に違反していると改めて主張した。
VRアプリ企業は「Within(ウィジン)」。メタは昨年10月、フェイスブックから社名を変更した翌日に買収を発表。FTCは今年7月に提訴していた。FTCはメタが競合相手に育つと見なした小規模企業を買収し、正当な競争努力でなく資金力で市場の優位性を握る手法を繰り返しているとし、この阻止を目指すとしている。
FTC側は弁論で、ウィジンの提供する人気フィットネスアプリの顧客獲得が買収の狙いだとし、VRユーザーの新規獲得やユーザー層多様化を手っ取り早く図る計画の一環だと主張。メタのVRユーザーが現状では男性若者層のゲーム愛好者に偏りがちな点に言及し、ウィジン買収はこれを補完する意味合いがあるとした。
その上で、メタが買収に頼らなくても自社の大規模な金銭的、人的資源を使うことで、独自のVR運動アプリを構築することができたはずだと主張。ウィジン買収前にはメタが実際にそうした動きを計画していたと指摘した。同社が在宅フィットネス機器の米新興企業ペロトンに提携を提案しており、その証拠にザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)もこの提携を通じた自社開発に乗り気だった電子メール記録があるとした。
これに対しメタやウィジン側は、関連する市場についてFTCが誤解しているとし、この市場では企業同士がさまざまなコンテンツで競争していると指摘。メタの弁護士はFTCの市場の定義では、行われている競争の動きが過小評価されていると主張した。
今回の審理は20日まで続き、メタのザッカーバーグ氏が証人に立つ予定。ウィジンのクリス・ミルクCEOやメタのメタバース事業を統括するアンドリュー・ボスワース最高技術責任者も法廷に立つ可能性がある。