[フランクフルト 24日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は24日の定例理事会で政策金利を据え置いた。また前回9月の決定通り、11月から月200億ユーロのペースで資産買い入れを再開し、「必要な限り」継続することを確認した。
今月末に退任するドラギ総裁にとって今回が最後の理事会。会議には次期総裁のラガルド氏も出席した。
ドラギ総裁の理事会後の記者会見での発言は以下の通り。
<成長の勢いは弱め>
労働市場の逼迫に伴い労働コスト圧力は上昇したものの、成長の勢いが弱まっているため物価への波及が遅れている。
<長引く脆弱性>
前回9月の理事会以降に入手したデータは、ユーロ圏成長の長引く脆弱性や顕著で根強い下振れリスク、抑制された物価圧力といった以前から見られる兆候を裏付けている。
<包括緩和政策の効果>
前回の理事会で決定した包括金融緩和政策は多大な刺激効果をもたらし、企業や家計の借り入れ状況は一段と緩和されるだろう。
<あらゆる政策手段を調整>
理事会は物価を目標水準に確実に押し上げるため、必要に応じて引き続きあらゆる政策手段を調整する用意がある。
<極めて緩和的な政策>
中期的に基調的なインフレ圧力、および総合インフレの展開を支援するために、理事会は長期間にわたる極めて緩和的な金融政策スタンスの必要性を強調した。
<マイナス金利政策>
マイナス金利に関する全般的なアセスメントは、おおむねポジティブだ。われわれにとって極めてポジティブな経験だった。
マイナス金利で景気が刺激され、雇用にプラスの効果がもたらされた。全般的にまさに意図した方向に向かっている。
<財政政策>
ユーロ加盟国による緩やかに拡張的な財政スタンスで、経済活動は幾分支援されている。
景気見通しの鈍化、および下方リスクが根強く存在していることを踏まえると、財政的な余裕のある国は効果的、かつ時宜を得た方法で対応する必要がある。
<抑制されたインフレ>
基調的なインフレは全般的に抑制され続けており、インフレ期待は低水準にある。
<下半期の成長は緩やか>
入手される経済データと調査情報から、今年下半期の経済成長は緩やかだがプラスになることが引き続き示されている。
<成長に対する下方リスク>
ユーロ圏と成長見通しを巡るリスクは引き続き下向きだ。地政学的要因、保護主義の台頭、新興国市場の脆弱性を巡る不確実性が根強いことがこうしたリスクの背景にある。
<職責を全う>
私個人としては、できる限り最善の方法で職責を全うしようとしてきたつもりだ。
<主要リスク>
特に金融安定の観点など、あらゆる面から判断される主要リスクとは、世界経済もしくはユーロ圏経済の落ち込みだ。
<ラガルド氏も出席>
(次期総裁の)クリスティーヌ・ラガルド氏が、議論には参加しなかったものの(オブザーバーとして)今会合に出席した。
<明かされた政策巡る不一致>
金融政策を巡る議論に不一致は付き物だ。そうした不一致は時として白日の下にさらされるが、今に始まったわけではない。私個人としては継続する議論の本質的部分であると捉えている。
<市場はECBの政策を読み間違ったか>
9月理事会における金融政策決定の主要目標は、期待に織り込まれた緩和的な政策スタンスを確かなものにすることだった。期待は定期的かつ継続的に弱含む中期的見通しの影響にさらされているからだ。
この日の理事会での討議ではこうした目標がおおむね達成されたと感じられた。われわれはイールドカーブのフラット化や預金金利低下による短期金利への効果波及を確認している。
市場が政策を読み間違ったとは考えていない。むしろ、ECBの反応機能を十分に理解していることが示された。
<英EU離脱(ブレグジット)>
ある意味、英国がEUと合意なく離脱する「ハードブレグジット」の確率は低下し、瀬戸際の状況は改善したと言えるだろう。一方、不透明感は残っている。現時点で、短期的には状況は改善したが、中期的には不透明感は懸念要因と見なされる。
<債券購入>
債券購入が実際に問題を引き起こすにはかなりの時間がかかるだろう。
<後任のクリスティーヌ・ラガルド氏について>
アドバイスは必要ない。ラガルド氏は何を行い、何を言うべきか、誰よりもよく知っている。
<自分自身について>
自分で変えられないものではなく、自分ができることに常に注力している。歴史家でない限り、過去は変えられない。
<決して諦めない>
誇りに思うことを1つ挙げるとすれば、理事会、そして私自身が常に責務を追求してきた姿勢を挙げたい。これは、われわれが全体として極めて誇りに思うべきことだ。
決して諦めない。ある意味で、これはわれわれの財産の一部だ。
<シュナーベル理事候補>
(ラウテンシュレーガーECB専務理事の後任に指名された)イザベル・シュナーベル氏は優れたエコノミストで、あらゆる才能を備え、大変良い仕事をする。われわれは彼女の指名を本当に快く受け入れたい。
<ピッケルハウベ>
2012年3月に頂戴したピッケルハウベ(プロイセン式軍帽)については、ドイツに古い格言がある。それは「贈り物は贈り物」(一度与えた物を返せと要求してはいけない)というものだ。だから私は引き続き手元に置いておくつもりだ。(独ビルト紙はドラギ氏の就任祝いにこの軍帽を贈呈したが、その後ドラギ氏の政策に不満を表明し、軍帽の返還を要求した経緯がある)