[東京 25日 ロイター] - 日銀が16日に開催した金融政策決定会合で、「80兆円のめどまでは長期国債を買い入れることが可能であるほか、経済・物価情勢によっては臨時会合開催も含めた機動的な対応が可能だ」との意見が出ていたことが、25日公表の「主な意見」で明らかになった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響が「甚大になる可能性を意識する必要がある」など、景気の先行きに悲観的な意見が目立った。
新型感染症の世界的流行で金融市場が不安定化する中、日銀は定例会合を前倒しして政策決定会合を開催。上場株式投信(ETF)の買い入れ目標を年6兆円から12兆円に倍増することなどを柱とする追加緩和を決めた。企業の資金繰り支援のため、新たなオペも創設した。[nL4N2B9245]
会合では「企業金融の円滑確保に万全を期すとともに、金融市場の安定を維持し、企業や家計のコンフィデンス悪化を防止する観点から、金融緩和を強化することが適当」との意見が出た。ある委員は、新型コロナの感染拡大の影響で資金繰りが悪化し「破綻する企業も出ている」と述べ、「十分な金融仲介機能を維持するために必要な措置を講じるべきだ」と主張した。
機動的な対応が可能と主張した委員は「景気後退懸念がある今こそ、政府の経済政策などと緊密な連携を取るべき」と指摘した。「日銀と政府、および主要中央銀行間で緊密に情報共有しつつ、強固な協力体制を維持することが肝要だ」と述べた委員もいた。
<「緩やかな拡大基調」に懐疑的な見方>
16日の声明では、経済は当面は弱い動きが続くものの、各国の対応などで感染症拡大の影響が和らいでいけば、先行きは「所得から支出への前向きの循環メカニズムに支えられて、緩やかな拡大基調に復していく」と指摘した。
しかし、委員からは、今回のショックはリーマン・ショックや東日本大震災とは性質は異なるものの、不確実性が高く「影響は一時的なものにとどまらず、甚大なものになる可能性を意識しておく必要がある」との指摘があった。ある委員は「新型感染症の影響を除いても経済の基調は弱い。終息後に経済が力強く回復するとのシナリオには懐疑的だ」と述べた。
日銀は16日の決定会合で、物価安定目標へのモメンタムが損なわれる恐れに注意が必要な間、政策金利は「現在の長短金利水準またはそれを下回る水準で推移する」とするフォワードガイダンスを維持した。
だが、会合では、物価目標へのモメンタムを巡り委員の間で見解が割れた。ある委員が「物価安定目標へのモメンタムは損なわれる恐れが高まっているものの、現時点ではプラスの需給ギャップと完全雇用に近い労働環境の下で維持されている」と主張する一方、「経済・物価に対する下方リスクは高まっており、物価目標へのモメンタムが損なわれる恐れが高まっている」との意見も出た。
<前向きな循環メカニズム、維持されるか>
所得から支出への「前向きな循環メカニズム」に対しても、懐疑的な声が出ていた。ある委員は「経済が正常に回復しても、所得から支出ではなく、所得から預金に向かってしまう可能性がある」との見方を示した。
雇用・所得については、ある委員が「政府が適切かつ大規模な措置を講じることが期待される」と指摘。この委員は「日銀としては、所得・収益が回復するまでの資金を十二分に供給することが必要だ」とも述べた。
*内容を追加しました。
(和田崇彦 編集:田中志保) OLJPBUS Reuters Japan Online Report Business News 20200325T004817+0000