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焦点:アベノミクス路線、格差是正で修正も 衆院選で争点化狙う立民

発行済 2021-09-15 15:09
更新済 2021-09-15 15:18
© Reuters. 自民党総裁選では菅義偉政権まで引き継がれたアベノミクス路線がどう継承、修正されるかも焦点となる。写真は2011年1月、都内で撮影(2021年 ロイター/Yuriko Nakao)

© Reuters. 自民党総裁選では菅義偉政権まで引き継がれたアベノミクス路線がどう継承、修正されるかも焦点となる。写真は2011年1月、都内で撮影(2021年 ロイター/Yuriko Nakao)

[東京 15日 ロイター] - 自民党総裁選では菅義偉政権まで引き継がれたアベノミクス路線がどう継承、修正されるかも焦点となる。出馬表明した岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、河野太郎行革担当相のうち継承を明言したのは高市氏のみで、岸田、河野両氏は所得格差の是正を訴える。コロナ禍では根幹政策を見直せないとの見方も多い中で、立憲民主党は次期衆院選で争点化する構え。新総裁の姿勢は国政選挙で改めて問われそうだ。

高市氏はアベノミクスを継承し、日本経済強靭化計画「サナエノミクス」を進めると明言した。耐震化対策や送電網、通信網の強靭化で10年間で100兆円を投じる構想も表明。物価安定2%目標を達成するまでは、基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を黒字化させる財政再建目標を凍結する考えも明らかにした。

アベノミクス3本の矢のうち、金融・財政政策では岸田、河野両氏を含めた3氏とも濃淡があるとは言え、表向きは金融緩和政策の維持や経済対策を急ぐ考えに変わりない。

異なるのは成長の果実をどう分配するかで「アベノミクスを継承する高市氏に対し、岸田、河野両氏は分配を重視している点で姿勢が異なる」と、SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは言う。

アベノミクスは富が低所得者に「滴り落ちる」とされるトリクルダウンが前提だった。河野氏は10日の出馬会見で、アベノミクスで企業収益は改善したが、「賃金まで波及していない」と指摘し、軌道修正に含みを持たせた。労働分配率を高めた企業を念頭に、法人税の特例措置を設ける選択肢も示した。

岸田氏も「より分配を意識する必要がある」との立場だ。今回の総裁選では「令和版所得倍増」を掲げ、新総裁の座を狙う。

もっともコロナが収まらない現状では「向こう半年か1年程度は、誰が首相になっても今までの政策の延長線だろう」(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト)との見方も少なくない。

アベノミクスは安倍晋三前首相が掲げ、菅義偉首相が継承した。大胆な金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略の3本柱を推進し、600兆円経済の実現を目指したが、未だ達成には至っていない。

立憲民主党は14日、アベノミクス政策を検証する委員会の初会合を開き、枝野幸男代表が「アベノミクスをどう評価し、これに対してどう対応するのかということが、この国の政治、経済、社会のあり方に大変大きい」と述べた。

近く検討結果を公表し、次期衆院選で争点の1つに据える構えだ。

<拭えない短命政権リスク>

コロナ対応への不満からカナダやドイツでも政局が流動化し、今月20日に予定されているカナダの総選挙では、トルドー首相が率いる与党・自由党が苦戦を強いられている。

26日に連邦議会選挙(総選挙)を控えるドイツでは、中道左派の社会民主党(SPD)がメルケル首相の保守系与党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)を支持率で上回っているとされ、カナダと同様に戦況は厳しい。

© Reuters. 自民党総裁選では菅義偉政権まで引き継がれたアベノミクス路線がどう継承、修正されるかも焦点となる。写真は2011年1月、都内で撮影(2021年 ロイター/Yuriko Nakao)

「菅政権が退陣に追い込まれた最大の理由はコロナ対応。何よりも医療提供体制の強化を急がなければ菅政権の失敗を繰り返しかねない」と、ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは指摘する。

仮に衆院選を乗り切っても2022年夏には参院選が控える。19年夏の参院選では自公で過半数を維持したものの、単独過半数は維持できておらず、参院選次第で「短命政権を繰り返すリスクが拭えない」(UBS証券の足立正道チーフエコノミスト)との見方も出ている。

(山口貴也、金子かおり 編集:石田仁志)

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