[香港/シンガポール 23日 ロイター] - 中国の不動産開発大手、中国恒大集団 (HK:3333)の資金繰り問題は、社債の一部の利払い日である23日が過ぎたが会社側から新たな説明がなく、デフォルト(債務不履行)懸念が一段と高まった。
中国恒大集団は23日、20億ドルに及ぶオフショア社債の利息として8350万ドルを支払うことになっていた。また、来週には4750万ドルのドル建て債利払いが控えている。23日の人民元建て債については、利払いを実行すると今週発表し、市場の懸念が一部で和らいでいた。[nL4N2QO0KO]
現時点で中国恒大から何の情報もなく、広報担当者からのコメントも得られていない。利払い期限は過ぎたが30日の猶予期間があるため、即座にデフォルトとはならない。
プリンシパル・グローバル・インベスターズ(シンガポール)のアジア債券部門責任者、ハウ・チョン・ワン氏は「この段階では誰も大きなリスクを取りたがらないため不気味な沈黙が続いている」と述べ「中国恒大のような規模は前例がない。中国が連休に入るまでの今後10日ほどの間に事態がどのように展開するかを注視する必要がある」と指摘した。
ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズの新興市場アナリスト、ジェニファー・ジェームズ氏は「市場はドル建て社債を保有する投資家がほとんど資金を回収できないとの見方を織り込んでいる」と指摘。同社が債権者と協議して事業再編計画をまとめるというのが最も確率の高いシナリオだとした。
また、中国政府が恒大問題への対応を誤れば、信頼の喪失が他の金融市場にも波及する可能性があると予想した。
ブルームバーグ・ローは23日、中国当局が同社に対し、当面ドル建て社債のデフォルトを回避するよう指示したと報じた。
報道によると、当局は恒大集団の経営陣との会合で、デフォルト回避に向けて債権者と積極的にコミュニケーションを図るべきと述べた。ただ、具体的な指針は示さなかったという。
一方、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは23日、関係筋の話として、中国当局が地方自治体に対し恒大集団の破綻に備えるよう求めていると報じた。
また、これとは別にブルームバーグは、恒大集団の電気自動車(EV)部門が従業員への給与とサプライヤーへの支払いを停止していると報じている。
BNPパリバUSAのジャン・イブ・フィリオン最高経営責任者(CEO)は23日、CNBCに「中国恒大は深刻な状況にあるが、セクターという点では主に中国国内の不動産部門とその取引先に集約されている」とし、「歴史的に中国政府はこの種の状況に対処し、解決してきた。中国恒大の状況と堅調な米株市場との関連性はあまり大きくないと考えている」と述べた。
恒大の3050億ドルに上る負債のうち、オフショア債は約200億ドルにとどまる。同社の経営破綻は中国経済の4分の1を占める不動産部門の機能停止につながる恐れがあり、国内のリスクは大きい。
ソシエテ・ジェネラルは調査ノートで、住宅販売・投資の一段の減速は必至で、国内総生産(GDP)成長率を1%ポイント近く押し下げることになると分析。「政策当局が行動を先延ばしすればするほど、ハードランディングのリスクは高まる」とした。
しかし、これまでのところ当局が本格介入する兆しはあまりない。中国人民銀行は24日も含め、今週、計2700億元(420億ドル)を市場に供給、週間の合計としては1月以降で最大となり、株価を下支えした。
中国恒大の許家印主席は22日夜の社内会議で、同社の理財商品の投資家への償還が最優先事項だと述べたほか、確実な不動産の引き渡しを幹部に指示した。これを受け、株価は一時30%上昇した。[nL4N2QP1LY]
24日の取引で同社の株価は反落。EV部門の中国恒大新能源汽車集団 (HK:0708)は18%急落し、4年ぶりの安値を付けた。
オスカー・アンド・パートナーズ・キャピタル創業者で最高投資責任者のオスカー・チョイ氏は、中国恒大が警戒しているのは建設事業が進められず、作業員に給与を支払えず、個人投資家が損失を被ることで社会的緊張をあおることだと指摘。こうした優先事項が解決できれば、同社は他の債権者と協議を行うと予想し、「そうでないと、数十万人が政府と争うことになる」と述べた。
DBS銀行(シンガポール)のマクロストラテジスト、Wei-Liang Chang氏は「中国の慎重な政策決定ペースを踏まえると、当局は時間稼ぎを選ぶかもしれない」と指摘。中国恒大が22年3月までドル建て債償還がないことから、当局は利払い猶予期間を利用して流動性支援を延長することが可能だと説明した。
*アナリストのコメントなどを追加しました。