[フランクフルト 3日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は3日、主要政策金利を予想通り据え置いた。インフレ率が過去最高に達する中でも当面は大規模な刺激策を維持する。同時にインフレリスクが増大していることを認め、年内に利上げに動く可能性を排除せず、ハト派スタンスからの転換が鮮明となった。
ラガルドECB総裁は理事会後の記者会見で「インフレは高止まりし、予想以上に長期化する公算が大きいが、今年を通じ鈍化する」と予想。その上で「昨年12月時点のECBの予測と比較すると、とりわけ短期的にはインフレ見通しに対するリスクは上向きに傾いている」という認識を示し、「明らかに状況は変化した」と述べた。
ECBが政策行動を急がないと述べながらも、これまでに示してきた年内利上げの「公算は極めて小さい」という発言を繰り返すことも避けた。
関係筋によると、今回の理事会で金融政策の現状維持の決定に至るまでに、一定の少数派からは債券買い入れ規模縮小の加速を発表するなど、何らかの行動を取るべきという声も上がっていた。また、金融当局者らは、インフレリスクおよび見通しを巡る不確実性を踏まえ、年内の利上げを排除すべきでないという考えを明確にした。
ラガルド総裁の会見後、金融市場では年内に計約40─45ベーシスポイント(bp)の利上げが実施されるいう予想が織り込まれた。理事会前は計28bpと予想されていた。
ユーロは対ドルで上昇。独10年債利回りは10bp上昇した。
INGのエコノミスト、カーステン・ブレゼスキ氏は「今回の理事会はECBのタカ派への主要な転換を明示した」と述べた。
<3月理事会>
ラガルド総裁は、ECBの今後の政策の道筋の順序に変化はないとも強調。総裁は、ECB理事会内ではインフレを巡り「全会一致の懸念」が存在するものの、一段の情報が入手されるまでは結論を急がず、状況を注視しながら「段階的に決定を下していく」とした。
さらに、ECBの政策に関する確約は状況次第で、利上げの実施や時期を巡る決定は入手される指標によって決定されると強調。「ECBは3月にその作業に着手する。それによって短期的なインフレ要因を分析し、中期的な見通しを見極める」と述べた。
3月の理事会は、新たに入手される経済指標が政策行動を正当化する可能性があるため、重要になってくるという認識も示した。
1月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値が前年比5.1%上昇したことについては、主にエネルギー価格急騰に伴う直接および間接的な影響に加え、輸送コスト拡大などによる食品価格の上昇が要因という認識を示した上で、ECBが不意を付かれたことを認めた。
ラガルド総裁は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)について、感染の波ごとに経済への影響は縮小しているとしつつも、各国の制限措置が経済活動の足かせとなる可能性を指摘した。
また、緊迫化するウクライナ情勢については、直接的な言及は避けたが、経済成長に打撃を及ぼす恐れのある「地政学的な暗雲が欧州を覆っている」という見解を示した。
アナリストの間では、年内の利上げが確実となったわけではないが、可能性は高まっているという見方が大勢。ピクテ・ウェルス・マネジメントのストラテジスト、フレデリック・デュクロゼット氏は「早ければ3月、遅くても6月に利上げの条件が満たされる可能性がある」と述べた。